2016年5月17日火曜日

旅行者下痢症について


BMJ Clinical Reviewをまとめます。
僕自身が、ほぼ必ずと言っていいくらい罹患するので、興味深い勉強になりました。

BMJ 2016;353:i1937
Travellers’ diarrhoea


これだけは押さえておく
・最も多い原因はETEC
・14日以上続く慢性の下痢は、細菌性の可能性が低い
・人工肛門や免疫抑制のある場合のみ抗菌薬予防の適応
・下痢開始時に1-3日間抗菌薬服用すると、有症状期間が3日間→1.5日間に短縮
・慢性下痢で、体重減少などの付随症状があれば、専門家に紹介を。


・危険地域は以下の通り
    超高リスク:南・東南アジア、中央アメリカ、西・北アフリカ
    高リスク:南アメリカ、東アフリカ
    中リスク:ロシア、中国、カリブ海、南アフリカ

・バックパッカーはビジネス旅行者と比べて発症率2倍
・サラダ、貝、生焼けの肉は避ける
・野菜、果物の皮はしっかり剥きましょう
・石鹸での手洗いで発症を30-40%減らすことができる

・原因がはっきり見つかることは少ない
・細菌、ウイルスのほかにも、ランブル鞭毛虫は14日以上の慢性下痢を呈する
・Cyclospora catayenisは、メキシコ帰りの旅行者下痢症として最近注目されている。

・旅行開始一週間以内(特に到着してから2-3日後)に発症
・ETEC:水様、多量、腹部疝痛・嘔気・倦怠感後
・腹部膨満、吃逆など上部消化管症状があればランブル鞭毛虫をより疑う
・排便切迫、血便、クランプなど疝痛症状があればカンピロバクターやシゲラをより疑う

・症状はたいてい1週以内に収まるが、超える場合も10%ある

・上記の通り、適応ある場合のみ予防内服
・シプロフロキサシン500mg/dayで予防率80-100%

・自己内服は以下の通り
    軽症なら、ロペラミド4mg頓用+軟便出るたびに2mgずつ内服 計16mg/dayまで
    中等度なら、南米、中央アメリカ、アフリカならシプロフロキサシン500mg2回を3日間
        南アジア、東南アジアならアジスロマイシン1gまたは500mg/dayを3日間
    高熱、重度腹痛、血便があれば病院受診を
・ただし、治療のメインは経口補液。