2017年9月11日月曜日

プロバイオティクスについて


プロバイオティクスについての総説がAFPに掲載されていました.
臨床にじかに結びつく,AFPらしい総説です.
アブストラクトと,本文中のキーポイントを訳出しました.


Probiotics for Gastrointestinal Conditions: A Summary of the Evidence
Am Fam Physician. 2017 Aug 1;96(3):170-178.

要約
プロバイオティクスは微生物で構成され,ヒトの腸に常在する善玉菌に似た細菌が大半を占める.様々な消化器疾患で幅広くプロバイオティクスの効果が研究されている.最も研究が進んでいる菌種はLactobacillus, Bifidobacterium, Saccharomycesなどである.しかし,種々の消化器症状に対し,プロバイオティクスをいつ投与すべきか,最も効果的なプロバイオティクスはなにかについて,明確なガイドラインがないために,家庭医と患者は困惑する羽目になっている.プロバイオティクスは消化管の免疫平衡の維持に対し重要な役割を果たすが,それは免疫細胞に直接作用してなされる.プロバイオティクスの効果はおそらく菌種,用量,疾患に応じて定まり,治療期間は臨床上の指標で決まる.プロバイオティクスが効果的だという質の高いエビデンスが存在するものとして,急性の感染性下痢,抗菌薬関連下痢,クロストリジウム関連下痢,肝性脳症,潰瘍性大腸炎,過敏性腸症候群,機能性胃腸障害,壊死性腸炎がある.反対に,急性膵炎とクローン病は,プロバイオティクスの効果がないというエビデンスがある.プロバイオティクスは幼児,小児,成人,高齢者と幅広い世代で安全に使用できるが,免疫不全患者には注意が必要である.


KEY RECOMMENDATIONS FOR PRACTICE
小児,成人ともに抗菌薬関連下痢のリスクを減らす.(A)
C. difficile関連下痢の発生を減らすかもしれない.(B)
肝性脳症のリスクを劇的に下げるかもしれない.しかし,NAFLDとNASHに関するエビデンスは不十分である.(B)
成人UCの寛解率を上げる.(A)
小児,成人ともにIBSの腹痛と全身症状スコアを改善させる.(B)
早期産児の壊死性腸炎の発生と死亡率を減らす.(A)
急性膵炎とクローン病に対する効果はない(B)

他に…
細菌性の急性腸炎には効果あり.ウイルス性に関してはどっちつかず.
H.pylori除菌に追加すると,NNT10で効果ありというメタアナリシスもあれば,OD=0.87-2.39というメタアナリシスもある.
慢性の特発性便秘に効果あり.