2015年8月3日月曜日

遊走腎



「気持ちの問題」といわれる可能性の高い器質性の下腹部痛の原因として
慢性膵炎や間質性腎炎と並んで、遊走腎があります。

あまり良く知らない疾患なのでまとめてみました。


定義:臥位とくらべ立位で腎臓の高さが5cm以上あるいは2椎体以上下がる

典型例:痩せた若い女性。立位で悪化し臥位で寛解する腹部・側腹部の引っ張られる痛み

痛みの特徴:痛みは尿路結石の疝痛に似ることがある。右側で多い。開腹術を受けたことのある患者もいる。「気のせい」といわれると痛みが悪化することが多い。

他の症状
・嘔気・嘔吐:臓側自律神経の刺激による
・立位で腹部腫瘤をふれる:用手的に本来ある位置に戻すと症状良くなる
・一過性の血尿:腎静脈の機械的な進展による
・繰り返す尿路感染
・腎結石
・高血圧:RAA系の亢進による。腎動脈線維筋異形成の合併率も高い。

合併症:Dietl's crisis
尿管が閉塞して急性水腎症となる。
側腹部の激しい疝痛、嘔気、悪寒、頻脈、乏尿、一過性の血尿/蛋白尿、圧痛ある肥大した腎臓をふれる。
用手的に還納するor膝胸位になってもらう

保存的に見て改善乏しければ手術も考える。


引用文献:BJU Int. 103:296-300.