2017年4月8日土曜日

PSAの評価と前立腺がんの検出



PSAまたは直腸診による前立腺がんスクリーニングは大規模RCTで有効性が否定されています(N Engl J Med 2009; 360:1310-19)ので,家族歴がある人以外では基本的に推奨しないようにしていますが,

前立腺肥大がある患者の評価でPSAはどう使えばよいのでしょうか.


トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート(第2版)に,NEJM 2007; 357:2696-705が紹介されています.

PSA>4で悪性を疑うというのが一般的かと思いますが,以下の指標が紹介されています.

・PSA density=PSA/前立腺容積[ml]<0.1は正常所見
・PSA velocity=⊿PSA density/⊿年>2は悪性所見

ちなみに,前立腺容積=横×前後×頭尾/2です.
正常値は4×1.5×2.5/2=7.5です.「良い子がにっこり」と覚えるようです.


でも,じゃあ前立腺肥大症全員にPSAを測定するのかという話になります.
もうちょっと対象者を絞りたいです.

もちろん一般的な病歴を聴取して,持続血尿や神経学的異常,体重減少があれば癌をうたがうことになります.意外なのは勃起不全.癌患者の30.9%は初診時に勃起不全の症状があるようです.(Br J Gen Pract 2006; 531: 756-62)

くわえて,直腸診の悪性所見は,弾性硬,辺縁不整,前立腺左右差,硬結などです.

忘れてはいけないのは,PSA低値でも癌を否定できない事です
癌患者の15%がPSA<4,9%がPSA<1です.(N Engl J Med. 2011; 365:2013-9)

以上より
risk factorを聴取して,直腸診をして,検査前確率を上げてから
エコーで容積を測って,PSA densityをだして,フォローを適切に行う
という流れがよいかなと考えました.
大事なのは,全ての前立腺がん≠致死性ではないことを患者さんとshareすることでしょうか.

なお,65歳以上なら全摘術の適応にはならないようです.TURPやホルモン,放射線などで様子を見ていきます.
⊿PSA>0.2で再発を疑います.PSAは術後フォローには素晴らしい検査です.


参考:ホスピタリストのための内科診療フローチャート