2016年3月23日水曜日

COPD急性増悪時の対応


以前、安定期COPDの治療についてまとめたので
教科書的な記載になりますが、急性増悪の治療もまとめてみます。
最近よく出会うのです。季節柄でしょうか。


COPDのある患者さんに、呼吸苦増悪、喀痰や咳嗽の増加、喘鳴などが出現し、
ほかの原因が考えにくいときに、急性増悪と判断します。
当たり前ですが、スパイロメトリーの結果で診断するわけではありません。あくまで臨床診断。

なので鑑別診断が重要です。
気胸、心不全、心筋虚血、肺塞栓といった鑑別が浮かんでくるかが大事そうですね。


第一選択はSABA吸入。SAMAを追加してもいいです。
多くの急性増悪患者は吸入手技がちゃんとできていないそうで。
言われてみれば、そりゃそうかもしれません。


全身ステロイド投与は入院日数短縮、肺機能、再発減少の効果があるそうで、入院患者では推奨されています。ただし死亡率低下まで強いエビデンスではないです。
コクランレビューはこちら

30mg/day程度を<7日間で投与するのがよさそうです。
コクランレビューはこちら

経口摂取ができれば第一選択はプレドニン錠です。


感染の関与が疑われるときは抗菌薬を用います。
当然ながら起因菌を同定する努力をしたうえで、エンピリックにはβラクタム+マクロライド(またはキノロン)でしょうか。
緑膿菌をカバーするかなどで変わってきますね。


SpO2は88-92%を目標に。

中等度以上の呼吸困難、急性呼吸性アシドーシス(pH<7.35またはPaCO2>45mmHg)、頻呼吸があり、気管確保の必要がなく患者さんが協力的なら、NPPVによるBi-level PAPの適応です。

はじめはIPAP 4cmH2O/ EPAP 8cmH2O程度から始めたのでよさそうです。
実際につけてみるとわかるのですが、結構大変です。圧を上げるのは慣れてから必要があればでよいと思います。
つけてみて本人の症状が改善すればOKです。
あとは、PaO2(モニターではSpO2)をみながらFiO2の値を変えます。
S/Tで設定する最低呼吸回数は10/min程度と低くします。呼吸数を早く設定してしまうと、呼気が終わる前に吸気が来てしまいます。
モニターの値はみますが、最も鋭敏かつ信頼できる指標は「本人の自覚症状」です。


挿管+人工呼吸管理に至った場合の設定について。
どうせモニター見ながら調整するので、思い切ってわかりやすい数字にしてみました。
キーワードはpermissive hypercapniaです。

まずはA/Cで。VCVなら一回換気量は6ml/kg(理想体重)程度が良いと思います。
身長170cmの男性で400ml程度ですね。

呼吸回数は10/min程度。
早すぎると呼気が終わる前に吸気がきて、肺が過膨張してしまいます。
ミストリガーの原因ともなるので、呼気で流量波形がしっかり基線まで戻っていることを確認です。
PaCO2の正常値は目指しません。pH>7.15ならばPaCO2高値は許容します。
これをpermissive hypercapniaといいます。肺損傷を防ぐためですね。

FiO2は40%程度から開始。COPD単独で重度苦の低酸素血症を招くことはありません。
PaO2をみながら、上げ下げするのが良いと思います。

吸気流量(VCV)は75L/min程度と多めに。吸気時間も短くなっていい感じです。

抜管できるかの評価は、SBTで行いますが、
COPDの場合は、抜管直後にNPPVにするのも良いとのことです。


以上、のべつまくなしに書き並べてみました。


~参考文献~
レジデントのための感染症診療マニュアル
Washington Manual
病態で考える人工呼吸管理
http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11369520272.html