2018年10月24日水曜日

肥大型心筋症に出会ったら:続き



(経験症例をもとに大幅な改変をしています)

近隣医療機関が閉院したため当院外来に転院した高齢患者.
診断名は「高血圧,心不全」だが,診察上Valsalva法で増強するsystolic murmurあり.
心尖拍動は前腋窩線上で触知する.CTRは60%を超えるが肺うっ血像はない.
心エコーでSAM,LVOT狭小あり.
他の所見も勘案し肥大型心筋症+軽度心不全と診断した.
自覚症状の乏しい高齢者.手術適応はおそらくないし,本人も希望なし.
さて,どのようにマネジメントすればよいだろうか.

前回はその場しのぎまで.
せっかくなのでもう少し詳しく勉強しておこうと思い,MKSAPのtextを開きます.

・HCMは500人に1人.しかし多くは無症候で経過する
・中には症状が出現し,突然死のリスクとなる場合がある
・心不全になる場合は,左室拡張障害やLVOT閉塞が関与しているかもしれない
・AFib合併はコモン.LVOT圧較差増悪を招く.
・VT→突然死の危険性あり
・ゆえにHCMを診断したらホルター心電図はしましょう.
・左室壁肥厚の主な鑑別は①高血圧②アスリート心③アミロイドーシス④Fabry病
・一親等での突然死の家族歴,最大左室壁厚30mm以上,最近の説明がつかない失神,VT3連発以上などあればICDの適応

・薬剤治療はLVOT閉塞,心不全,AFibに関連する症状に対する
・具体的には,息切れや(前)失神があれば治療考慮
・前負荷低下や血管拡張を起こすようなことは避ける(脱水,熱い風呂,アルコール過量摂取など)
・βブロッカーはα作用のないものを選ぶ(血管拡張させないため).ゆえにカルベジロール(アーチスト)は避けて,プロプラノロール(インデラル)やメトプロロール(セロケン),アテノロール(テノーミン)を使う.
・上述の理由のため,ニトロ製剤も避ける.
・薬剤治療をしても症状が強い時は手術検討を.
・心エコーは1-2年に1回しましょう.

いかにLVOTを保つか,というのが戦略になるのですね.