2018年10月18日木曜日

肥大型心筋症に出会ったら


(経験症例をもとに大幅な改変をしています)

近隣医療機関が閉院したため当院外来に転院した高齢患者.
診断名は「高血圧,心不全」だが,診察上Valsalva法で増強するsystolic murmurあり.
心尖拍動は前腋窩線上で触知する.CTRは60%を超えるが肺うっ血像はない.
心エコーでSAM,LVOT狭小あり.
他の所見も勘案し肥大型心筋症+軽度心不全と診断した.
自覚症状の乏しい高齢者.手術適応はおそらくないし,本人も希望なし.
さて,どのようにマネジメントすればよいだろうか.


まずUpToDateでその場しのぎを図ります.

Hypertropic cardiomyopathy: Medical therapy
→SUMMARY & RECOMMENDATIONS
とすすみ,以下の記述を得ました.

・HFとLVOT閉塞があれば,陰性変力作用のある薬剤の単剤使用を推奨(Grade 1B)
・そのなかでもβ blockerが第一選択(Grade 2C)
・血管拡張薬や利尿薬は,LVOT増悪のリスクがあり,あまり使わないほうがよさそう.
・単剤でもHF,LVOT閉塞が解消されなければ,非ジヒドロピリジン系CCB(ベラパミル等)を追加する(Grade 2C).それでもだめならジソピラミド追加.
・無症候性のHCMは経過観察.
・左室心尖部に瘤があれば経口抗凝固薬を.(Grade 2C)

というわけで,薬物治療はβblocker主体で行うことにしました.