2015年9月14日月曜日

呼吸困難感を細分化して考える


労作時呼吸困難感で受診し、完全房室ブロックの診断となったケースを受け持ちました。
詳しく聞いたら「運動して数分で、どれだけ息を吸っても酸素が体に入っていかない感じになる」とのことでした。

心不全やCOPDの時の労作時呼吸困難感とはちがう訴えだなと思ったので、考察してみます。


そもそも、呼吸困難感とはなにか。
American thoracic societyでは、dyspneaをこのように定義しています。

“a subjective experience of breathing discomfort that consists of qualitatively distinct sensations that vary in intensity”(Am J Respir Crit Care Med 159:321–40)

大事なのは呼吸困難感は主観的な症状に過ぎない、
言い換えれば、呼吸困難感とは、末梢から呼吸感覚中枢に「もっと呼吸しなさい」という情報が異常に入力されることである、というところです。


というわけで、脳に情報を送る末梢の受容体毎に考えます。

①頸動脈小体や延髄に存在する化学受容体
動脈中の酸素・二酸化炭素・pHを感知する

低酸素血症や高二酸化炭素血症、アシドーシスで異常を感知
Air hunger(「もっと息がしたい」「酸素が足りない」)


②肺内に存在する迷走神経受容体
肺組織の膨張や収縮・肺血管のうっ血などを感知する

気管支狭窄、心不全などで異常を感知
Tightness(「息が詰まる」「胸が締め付けられる」)


③胸郭に存在する機械受容体
張力や振動を感知

COPDなど呼吸仕事量の増加で異常を感知
Work/Effort(「呼吸がつかれる」「息が切れる」)


以上のように、患者の訴える表現により呼吸困難感の原因をある程度追究できるみたいです(Chronic Respiratory Disease 3:117-22)。
もちろんそれだけに頼るのではなく、増悪因子や身体所見を総合的に判断するわけです。

「息が苦しい」→「じゃあSpO2を測ろう」→「正常値だね、気のせいだよ」というmalpracticeをしないためにも
しっかり患者さんの言葉を聞いて、SpO2に反映されない異常を感知していきたいです。


参考:JIM Vol.23 No.9 2013 「息苦しい」が主訴の時