2016年11月9日水曜日

非糖尿病患者の低血糖


救急でであったので,考え方をまとめてみます.

CutlerのProblem solving in clinical medicineには,低血糖は3つに分類すると書いてあります.
「内科診断リファレンス」の記載も追加して分類を挙げます.

①反応性低血糖
食後2-4時間で起こる低血糖です.特に炭水化物の多い食事を食べた後です.

下位グループとしてさらに3つに分けます.

機能性:最も多い.症状はそこまで強くない.
OGTTで5時間経過観察し血糖の変移をみる.
アルコール多飲がリスク.

軽度糖尿病:つまりは低血糖をきたした患者には糖尿病の検査をする必要がある

消化管性:いわゆるダンピング症候群やその亜形


②空腹時低血糖
朝一番や食事を抜いた5時間以上経過後に起こる低血糖です.
糖原病など先天性のものを除けば,原因は以下の5つです.

内因性高インスリン血症:インスリノーマやインスリン自己免疫症候群など
インスリン自己免疫症候群は80%で自己免疫疾患が合併します.
SH基を持つ薬剤の先行投与がリスク因子です.
(メチマゾール,ペニシラミン,カプトプリル,イミペネムなど)

薬剤性:糖尿病の薬を間違えて飲んだなど.同居人全員の薬剤歴を聴取する.
非糖尿病薬で低血糖を起こすのは以下の通り.
Ⅰa・Ⅰc抗不整脈薬,抗うつ薬,ST合剤,キノロン,NSAIDs,アセトアミノフェン,βブロッカー,ACEI,フィブラートなど
また,クラリスロマイシンとSU薬の併用注意は有名ですね.

臓器不全:敗血症が有名.肝不全や腎不全でも.

ホルモン欠乏:副腎不全,下垂体不全など

nonislet cell tumor hypoglycemia(NICTH):稀ですが種々の腫瘍が低血糖を起こします
多いのは間質系腫瘍で.大きな腫瘤が後腹膜,腹腔内,胸腔内にみられます.
上皮系であれば肝細胞癌や副腎皮質腫瘍,カルチノイドが多いようです.
UpToDateからNICTHを起こす腫瘍のリストを引用します.



③虚偽性:ミュンヒハウゼン症候群が有名です.


低血糖発作=検査乱れ打ちではなく,糖尿病の有無の確認・反応性か空腹時かの区別,リスクファクターと薬剤に注目した病歴聴取で,なんとか迫っていきたいものです.


(Cutlerは邦訳も出ていますが,原著は平易な英語でかかれているのでお勧めです.)