2015年9月16日水曜日

甲状腺機能亢進症の症状


本日のPrimary Care Lecture Seriesのケースシェアリングカンファランスが
主訴が頻尿で、頸部痛があり亜急性甲状腺炎と診断したケースでした。

甲状腺機能亢進症で頻尿がでることを初めて知りました。
また、病棟でも甲状腺の問題が併存している方にたくさん出会います。
甲状腺結節を偶然発見→ホルモンは異常なし→エコーで結節が多発していると判明→euthyroid multinodular goiterだから安心だね(Washington Manual pp.895-896)、という流れはしばしば経験するところです。


総花的ですが、甲状腺機能亢進症のマイナーな症状についてまとめてみます。

・Plummer's nail
Plummerが記述した甲状腺機能亢進症患者の爪の変化です。
爪甲剥離、縦溝、扁平化がみられます(Ann Intern Med. 1958;49(1):102-8)。
画像はEndocrine Practice 2008;14(1):132 でみてください。

・血球異常
貧血が、女性で18%、男性で28%の割合であり、多くは正球性貧血ですが、悪性貧血が全体の1.9%でみられたという報告(Q J Med. 1978;47(185):35-47)があります。

・凝固能異常
凝固因子の異常をきたすことがあります(Eur J Endocrinol. 2001;145(4):391-6.)。
最近だと、甲状腺機能亢進症以外のリスク因子のないDVT発生の2例報告(Neth J Med. 2014;72(4):242-4.)や、甲状腺中毒症の脳静脈洞血栓症の報告(BMJ Case Rep. 2013;5:2013)があります。

・頻尿
UpToDateには、"Urinary frequency and nocturia are common in hyperthyroidism, although the mechanism is uncertain."とあります。また、小児の夜尿症については、"Enuresis is common in children."とあります。
女性尿失禁の罹患率が、甲状腺機能亢進症患者では1.60%、コントロールでは1.04%とHR1.30-1.83で有意に異なるという研究(Clin Endocrinol (Oxf). 2011;75(5):704-8.)があります。
尿意切迫、頻尿、夜尿は訴えづらい症状のため過小評価されており、甲状腺機能亢進症の治療で改善するとの論文(Postgrad Med. 1988;84(8):117-8.)もあります。


以前、亜急性発症の認知機能変動の原因として、甲状腺ホルモン正常だが各種抗体陽性で橋本脳症と診断されたケースを勉強しました。
rare presentations of common diseasesをしっかり把握しておきましょう。

参考:UpToDate Overview of the clinical manifestations of hyperthyroidism in adults