2015年6月8日月曜日

肺MAC症の画像所見



既往に肺MAC症がある患者さんによく出会うのですが
大抵呼吸器症状で受診ということが多いきがするので
そもそもの肺MAC症の画像所見を勉強してみようとおもいます。

Kekkaku Vol. 84, No. 8: 569_575, 2009によれば、肺MAC症は

気管支拡張型(小結節・気管支拡張型:nodular bronchiectatic disease)
結核類似型(空洞形成型:fibrocavitary disease)
Hot tub lung(hypersensitivity like disease)
全身播種型(disseminated disease)

の4つに大別できます。

そのうち、臨床で良くみるのは気管支拡張型です。
基本的には、気管支拡張+末梢の結節影で説明がつきます。

あとは画像をたくさん見るだけ!




(Case courtesy of Dr Frank Gaillard, Radiopaedia.org. From the case Tree in bud)





(Case courtesy of Dr Natalie Yang, Radiopaedia.org. From the case Right middle lobe bronchiectasis - MAC)



どうでもいいのですが、
hot-tub lungと似た病名で緑膿菌が原因の疾患があったなと思ってしらべたら
hot-tub folliculitisのことでした。
せっかくなのでWikipediaでみつけた画像を載せておきます。





biomedical model以外のアプローチ方法



biomedical modelだけでは問題を解決できないなと思うケースに遭遇しているので
家庭医療の教科書(藤沼康樹先生の「赤本」)を使って
どんなアプローチがあるのか復習しようとおもいます。
BPS modelがもっとも有名かつ理解しやすいです。一応その他の方法も簡単にまとめてみました。
以下、ほぼすべて赤本の部分引用です。


・生物心理社会的アプローチ(BPS model; Bio-Psycho-Social model)

主訴=受診理由ではない。
そこにどのような患者の「決断」があったか、
その決断をした理由(不安、受診基準、抑うつ、ライフイベント、指示など)は何か。
そして、今後の「心配」について、見通しを伝える。
実際の生活や労働の中で支援を行っていく。

つまり、どの階層で問題を捉えるか、が問われる。

行うべきチェックポイントは以下の6つ。

1.患者の病いの物語(ナラティブ)と生活を取り巻く状況を明らかにする
 積極的に病い体験とその意味を探る、そのために家族状況や心理社会的なデータを集める
2.生物心理社会的要因を統合する
 病いにもラべリングをして、要素間の関連性を分かりやすくする
3.ケアを行う際に各種関係の重要性を確認する
 患者の自律性を尊重しつつ、援助者にケアに参加してもらう。施設や制度のシステムも考慮する
4.医師が自分自身を知ること
5.どの領域に焦点を当ててとりむくかを決める
6.多次元的なケアを行う


・患者中心の医療
6つのコンポーネントよりなる
(最新版では4つになってたと記憶しているけど、旧来版のほうが自分にとってなじみが深いので)

1.疾患と病いの経験を明らかにする
2.患者を全人的にとらえる
3.共通基盤を形成する
4.予防と健康増進を行う
5.患者‐医師関係を強化する
6.現実的になる


・The Clinical Hand
Millerが2004年にFamily Medicine誌で発表したもの



・身体心理社会記号論的モデル(Somato-Psycho-Socio-Semiotic model)
BPS modelにSemiotic(記号論)、つまり考えや理解、受診理由、価値観などを加えたモデル
末期患者や神経変性疾患などに適応できるのではと個人的には考えている。


・家族志向性アプローチ
松下先生が翻訳された「家族志向のプライマリケア」を読んで非常に感銘しました。
患者は「家族という背景」をもっている、というメッセージが「家族の木」です。



・Narrative-Based Primary Care
6つのCでまとめられる対話の方法
Conversation, Curiosity, Circularity, Contexts, Co-creation, Caution


詳しいことは赤本を読みましょう。






drug-induced hemophagocytic lymphohistiocytosis



drug-induced hemophagocytic lymphohistiocytosis(薬剤誘発性血球貪食性リンパ組織球症)を疑う機会があったのでまとめます。

hemophagocytic lymphohistiocytosis(HLH)について
hemophagocytosis/hemophagocytic syndrome(血球貪食症候群)ともいいます。

原発性(家族性)と二次性に大別できます。
二次性はEBVやその他ウイルス感染によるものが多いです。
UpToDateの記事によると、他には若年性特発性関節炎などの自己免疫疾患やリンパ腫などの悪性腫瘍に続発します。

UpToDateに診断基準も載っていました。
遺伝子的な異常が証明できるか、以下のうち5つ以上当てはまれば診断するそうです。
38.5℃以上の発熱
脾腫
末梢血にて2系統以上の血球減少(Hb<9, Plt<10万, Neu<1000)
空腹時TG>265mg/dlまたはFibrinogen<150mg/dl
骨髄、脾臓、リンパ節、肝臓のいずれかで血球貪食像あり
NK細胞活性が低い
フェリチン500以上(3000以上ならより疑わしい)
sIL-2Rαが2SD以上


やはり大事なのは、HLHを疑うことだと思います。
臨床所見は以下の表がわかりやすかったので載せます(このサイトより引用)
どうも、皮疹は癒合傾向を伴う麻疹様発疹が多い印象です。



Lancetで2014年にレビューが出ています。
こちらのブログにて日本語でまとまってあります。

「血球貪食像=HPSと過剰診断しないことが重要である。
例えば輸血、感染症、自己免疫性疾患、各種骨髄障害、赤血球破壊などの病態でも血球貪食像は生じる。」

「血球貪食像は重症患者の剖検で実に64%にも認められる。」

あたりが大事だとおもいます。


さて、抗生剤や抗てんかん薬によりHLHが起こることがあります。
日内会誌 99:2832~2834,2010が詳しくてわかりやすいです。
以下の表はこの論文からの引用です。
DIHS(Drug-induced hypersensitivity syndrome)に似ていたり、併存していたりすることもあるそうです。両者の区別は困難なのかもしれません。



抗てんかん薬は重篤な過敏症状を起こすことで有名です。
総称してanticonvulsant hypersensitivity syndromeといいます。

3徴は皮疹、発熱、全身の臓器障害です。
芳香族の抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギンなど)で起きやすく、
また一度おこると他の芳香族抗てんかん薬でも起きやすくなってしまいます。
非芳香族(バルブロ酸、ベンゾジアゼピンなど)は比較的安全です。



2015年6月5日金曜日

うーむ、なかなか記事を書く余裕がない



NEJMのCase recordやReview, Clinical Practice, Clinical Problem Solving

BMJのEducation関連の記事は

毎週目を通して勉強してはいるのですが

なかなかブログで記事にする時間が取れないです。


医学書も積読状態になっているので

しばらく、インプット期間に入るかもです。


日々の研修で調べたこととかは

今まで通りアップしていく予定です。



2015年6月3日水曜日

大腸菌以外での尿路感染症



大腸菌による尿路感染症はよく遭遇するので
なんとなく全体像を描くことができます。
膀胱炎なら、熱が出ず頻尿、排尿時違和感・疼痛あり。
腎盂腎炎なら菌血症→エンドトキシンショックで頻脈、血圧低下、呼吸数増加。

しかし、大腸菌以外の菌による尿路感染症の病態を把握していないので
青木先生の成書(聖書)を参考にまとめてみました。


95%の尿路感染症は単一の起因菌により生じる


複雑性尿路感染症では、大腸菌以外の菌の可能性が比較的高い
具体的には、プロテウス, 緑膿菌、クレブシエラ、腸球菌

ここで、複雑性とは「合併症のない女性の尿路感染症」のことなので、
つまり、男性であればすべて複雑性、結石などあっても複雑性です。


Staphylococcus saprophyticus
性的に活発な女性で

Corynebacterium urealyticum
解剖学的異常が存在、抗菌薬使用の既往、尿アルカリ性(珊瑚状結石など)

カンジダ
膀胱カテーテル使用例で時にある。無症候性なら定着菌と判断
症候性膀胱炎、腎盂腎炎、好中球減少などあれば治療する

腸球菌
おおくは院内感染である
腸球菌の菌血症でショック・DICになることは稀
その場合は同時に感染している大腸菌・緑膿菌などによるものを考える



腎盂腎炎だと思って、けど治療がうまくいかないときは
起因菌や耐性菌について考えるのももちろんですが
前立腺炎、腎(周囲)膿瘍なども考慮する必要があります。

無菌性膿尿なら、最も多いのは(しばし不十分に)抗菌薬治療が始まった尿路感染ですが
虫垂炎など腸管感染症や後腹膜膿瘍、前立腺炎で無菌性膿尿をきたすこともあります。
結核や膠原病系なども鑑別に上がりますが実際は稀だと思います。
(NEJMのレビュー Sterile Pyuriaを参照)


2015年6月1日月曜日

高ナトリウム血症の補正



高ナトリウム血症の補正についてまとめてみました。
本当にざくっと調べただけです。間違い、不十分な点はご教授いただければ幸いです。


※症状のある場合、1時間で1mEq/L、24時間で12mEq/Lまでにおさめる。
※無症状の慢性高Na血症は、24時間で5-8mEq/L程度におさめる
※経口摂取可能ならなるべく口から水を飲むようにしましょう。


1Lの輸液で補正されるNa濃度は以下の式で計算できる。

∆[Na] = (輸液のNa濃度+輸液のK濃度-血清Na値)/(TBW+1)
(TBWは《男性》体重×0.5、《女性》体重×0.4で求める)


例えば、体重50kgの男性の血清Na値が160だとする。
ブドウ糖1L輸液すると

∆[Na] = (0+0-160)/(50×0.5+1) = -6.2
と計算でき、Naは160から154に下がると考えられる。


高ナトリウム血症すなわち自由水の欠乏であり、細胞内液の減少である。
ゆえに、細胞外液=循環血液量が減少している高ナトリウム血症では、
細胞外液=生食と、細胞内液=自由水の両方を補充する必要がある(ソルデム1輸液など)。

ソルデム1輸液はNa 90mEq/L, K 0mEq/Lなので、1L輸液すると
∆[Na] = (90+0-160)/(50×0.5+1) = -2.7
と計算でき、Naは160から157に下がると考えられる。
これで細胞外液も細胞内液も補充できる。


ただし、この計算式は便や不感蒸泄による水喪失を考えていない。
頻繁に値をチェックしながら調節していくことになる。

他にも、フロセミドを併用するなどの方法もある。成書参照。


参考文献:Washington Manual 34th edition


今日のRCT論文:フェブリクvsザイロリック



プチ抄読会にてRCT論文を読む練習をしております。

今日読んだRCT論文はこれ。


Febuxostat Compared with Allopurinol in Patients with Hyperuricemia and Gout
N Engl J Med 2005; 353:2450-2461

P: 痛風発作のある尿酸値8.0mg/dl以上の患者762人
除外:Cre>1.5, CCre<50, 妊娠、授乳、尿酸降下剤服用、BMI>50, キサンチン尿症・肝障害の既往、プレドニン10mg/day以上、HRTまたはピル服用、アルコール多飲
E: フェブキソスタット(フェブリク)80mg/dayまたは120mg/dayを52週継続
C: アロプリノール(ザイロリック)300mg/dayを52週継続
O: 最後の3か月で尿酸値6.0mg/dl以下を達成した患者の割合
T: double-blind RCT

ランダム化OK
群間は均一
二重盲検OK
サンプルサイズ計算OK
ITT解析OK
追跡率非常に良い

プライマリエンドポイントは、尿酸値6.0以下になった人の割合です。
フェブリク80mgで53%、120mgで62%
ザイロリック300mgで21%
と、フェブリクの尿酸を下げる効果が高いことが分かります。

ただし、セカンダリアウトカムである痛風発作を起こした患者の割合では以下の図の通り。
フェブリクのほうが発作は多い可能性があります。
ちなみに副作用はどの群も同じくらいです。




個人的には、発作のありなしをプライマリアウトカムに設定すべきなのではと思っています。