2015年4月12日日曜日
ワーファリンが効きすぎたら(BMJ Practice)
BMJのPracticeで、ワーファリンでINRが高いときの対処法について載っていました。
箇条書きでまとめます。本文はこちら。
High INR on warfarin BMJ 2015;350:h1282
・まずは出血がないか評価
消化管出血、頭蓋内出血に特に注意。
・どの量のワーファリンを何回のんでいるか確認。
・ワーファリンが効きすぎる状況がないか確認。
肝疾患、悪性腫瘍、ポリファーマシー、低栄養など
とくにCYP450阻害薬との併用に注意。代表的なのはクラリスロマイシン、エリスロマイシン、アミオダロンなど。
・アルコールについて尋ねる
大量のアルコールはワーファリンの代謝を阻害する
・食事が変わったかについて尋ねる
VitKについてはもちろん。フルーツジュースはワーファリンの代謝を阻害する可能性あり。
・出血してない場合は以下のようにしましょう
INR 3-5のとき:ワーファリンの分量を減らす、48時間後にINR再検
INR 5-8のとき:INRが5以下になるまで中止、その後低用量で再開、48時間後にINR再検
INR 8以上のとき:ワーファリン中止、VitKを1-5mg p.o.、24時間後にINR再検
2015年4月10日金曜日
慢性下痢と腰痛(NEJM interactive medical case)
NEJM interactive medical caseをまとめてみます。
選択肢をぽちぽち押しながら読み進めていくので楽しいです。本文はこちら。
A Man with Diarrhea and Back Pain
患者は43歳男性。6週前より腹痛と下痢がある。
初めは食事時に上腹部が痛むだけだったが、次第に、いつも腹部全体が痛いようになった。
切迫感(+)、しぶり腹(+)。
便は黒く、鮮血はまじっていない。油っぽくはない。悪臭なし。トイレで流れにくくもない。
ここ1カ月で14kg減少だが食欲低下はない。
発熱、胸痛、咳嗽、息切れ、嘔気嘔吐、尿量減少、口腔内潰瘍、皮疹いずれもなし。
下痢は4週間以上続くと慢性と定義されます。
機能性、炎症性、浸透圧性、分泌性、脂肪性という区分を覚えましょう。
機能性ではないと考えるポイントは、5kg以上の体重減少、夜間就寝中の下痢、消化管出血、貧血、低アルブミン、炎症マーカー上昇です。
それぞれの特徴は以下の通り
炎症性:下血+全身症状(腹痛、発熱など)
分泌性:空腹時でも起こる、夜にも起こる
浸透圧性:空腹時は下痢が止まる
脂肪性:油っぽい、悪臭、便器から流れにくい
下痢とは別に、20年前より腰痛があります。最近、毎朝一時間以上続く頸部の疼痛とこわばりがでてきました。また3年前にブドウ膜炎と尿路結石発作を起こしています。
ここまでで最も考えられるのは、炎症性腸疾患(IBD)とそれに合併した脊椎関節炎です。
IBD患者の20%で炎症性関節炎が合併します。
IBD関連の末梢の関節炎はタイプⅠとⅡがあるそうです。
タイプⅠ:5箇所以下、大関節、病勢と関連あり、
タイプⅡ:多関節炎、左右対称、主に上肢、病勢と関連薄い
現症はとばします。興味があれば本文を参照ください。
45歳以下、緩徐に発症、経過3か月以上、朝のこわばりあり、運動で改善などは、炎症性腰痛を示唆する所見です。やはり脊椎関節炎がこの患者では疑わしいです。
最大の鑑別は、びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)です。
靭帯の骨への付着部が石灰化して、ときに背部痛を生じる疾患です。
なぜか糖尿病や肥満の人に多く発症します。
脊椎の可動域が狭く、かつ付着部に圧痛があると、本症が疑わしくなります。
発症が高齢、炎症所見がない、仙腸関節炎がない、などが鑑別のポイントでしょうか。
結局、画像検査その他で潰瘍性大腸炎の診断となりました。
IBD患者はシュウ酸カルシウム結石になりやすいです。シュウ酸の摂取は控え、カルシウムをたくさん摂取しましょう。カルシウム制限は逆に結石を引き起こすので注意です。
IBDは腸外病変が多いです。同じ号のNEJMに、IBDに合併するがんについてのレビューがありました。
軽度-中等度の潰瘍性大腸炎の寛解には、ステロイドとASAを用います。
3-5日以内に症状が改善しなければ、TNFα阻害薬を使うことになりますが、その前に結核とHBVの検査をして、インフルエンザと肺炎球菌のワクチンを打ちましょう。
~Clinical Pearls~
・4週間以上続く下痢は慢性である
・機能性ではないかも:5kg以上の体重減少、夜間就寝中の下痢、消化管出血、貧血、低アルブミン、炎症マーカー上昇
・IBDは腸外病変が多い。全身くまなく診察するべき。尿路結石の既往も大事
・TNFα阻害薬を使う前に、結核とHBVの検査をして、インフルエンザと肺炎球菌のワクチンを打つ
2015年4月9日木曜日
NEJM Case11-2015
NEJM Case Recordです。
今週は簡単ですね。本文はこちら。
Case 11-2015
A 28-Year-Old Woman with Headache, Fever, and a Rash
患者は28歳女性。
当日朝起きたら、頭全体がとても痛い。体動で増悪し嘔気嘔吐も。
いったん寝て数時間後起きたら全身の筋痛あり。体温37.7℃。体幹と右上肢に紫斑あり。
というわけで、髄膜炎を疑う徴候がありますね。
鑑別としては、TTP/HUSや血管炎でしょうか。
紫斑がでる髄膜炎は髄膜炎菌によるものが有名です。この後、急激に悪化していく可能性があります。実際にこの患者は髄膜炎菌性髄膜炎で、入院後急激に悪化していきます。
同様の経過をたどっている症例が、2014年12月のMayo Clinic Proceedings Residents' Clinicにあります。記事はこちら。
この患者は9歳の時にも髄膜炎にかかっています。
そして、髄膜炎菌の感染症になりやすい免疫不全といえば、補体欠損です。
補体欠損症だと感染した時の症状があまり激しくなく、またすぐ治るのだそうです。へぇー。
検査の結果、原発性C8欠損症が判明したそうです。
~Clinical Pearls~
髄膜炎+皮疹(紫斑)は超危険。いまは平気そうでも急激に悪化するかも。
髄膜炎菌曝露者へのリファンピン予防投与も忘れずに。
2015年4月3日金曜日
なかなか治らない咽頭痛(NEJM Clinical Problem-Solving)
今週のNEJMはClinical Problem-Solvingが載ってました。
タイトルはA History Lesson。本文はこちら。
ざくっとまとめます。簡単のため、病歴提示の順番は原文と違います。
患者は34歳男性。3日前からの咽頭痛、熱、咳その他、いかにも咽頭炎という症状で来院しました。バイタルは安定。右前頸部リンパ節腫大(1×3cm)。口腔内に異常所見なし。セファレキシン処方され帰宅。
開口障害や声のくぐもりはなく、3日前からでこの現症なら5 killer throat pain(急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、Lewdig's angina、Lemierre症候群)はまずないかな。
ウイルスかな~、細菌かな~。そういや最近若い人の咽頭炎でFusobacteriumが多いって前調べたな~(詳しくはこちら)。でもCentor scoreは1点なので、溶連菌やFusobacteriumを狙った抗菌薬治療はしないかな~。伝染性単核球症はどうだろう。でもとりあえず様子見で対症療法だろうなー
という印象でした。実はここで鑑別診断が抜けておりました。
6週間後、症状が良くならないと再診。WBC6500、異型リンパ球なし。
あら、おかしい!これは只者ではないですね。
6週間も続く慢性扁桃炎の鑑別ってなにがあるのだろう…。
本記事やUpToDateから引っ張ってくると以下の通りです。
伝染性単核球症
HIV
単純ヘルペス
淋病
クラミジア
梅毒
扁桃リンパ腫
炎症性疾患(PFAPA症候群など)
PFAPA症候群は最近知りました。
Periodic Fever with Aphthous stomatitis, Pharyngitis and Adenitisの略です。その名の通りの疾患です。5歳までに発症します。
突然発症の高熱が5日間程度続いたと思ったら下がり、それが1~2か月周期でみられます。
あとは口内炎、頸部リンパ節炎、咽頭炎、扁桃炎なども見られる疾患です。
じつは、この患者さん、覚醒剤使用歴がありました。
覚醒剤使用歴がある=性感染症のリスクということで、詳しく詳しく聞いたら、MSM(Men sexed with men)であることが判明。HIVは陰性でしたが、検査の結果、梅毒と判明しました。
二期梅毒の稀な症状の1つに咽頭炎があるそうです。
梅毒は以前、Case Recordで出てきましたね。(その時の記事はこちら。)
性活動について聴取するのって難しいですよね。
このケースでは、患者さんは最近の性行為を否定していましたが、実はオーラルセックスはしていた、というのが最大の問題点でした。
ヘテロセクシャルのカナダの大学生に聞いた調査では、実に60%がオーラルセックスを性行為とみなしていなかったそうです。
オーラルセックスで感染する病原体は、梅毒の他に淋菌、クラミジア、単純ヘルペス、ヒトパピローマウイルスがあります。最後以外は慢性扁桃炎を引き起こす疾患ですね。要記憶です。
~Clinical Pearls~
・慢性扁桃炎の鑑別診断は、伝染性単核球症、HIV、扁桃リンパ腫に加え、オーラルセックスで感染する各種病原菌。小児で周期性があればPFAPA症候群を疑う。
・オーラルセックスは性行為と認識されていないことが多い。
2015年3月30日月曜日
坐骨神経痛のレビュー
NEJMに坐骨神経痛のreviewが載っていました。
へーと思ったところだけをまとめてみました。
図がきれいです。これだけでも理解が深まります。
坐骨神経痛は40-50歳代で多い
坐骨神経痛の85%は椎間板障害による。次に多いのは脊椎変形
L4、L5、S1、S2が坐骨神経を構成する
L4-L5またはL5-S1の障害が多く、L3-L4障害は比較的少ない
神経支配は下図の通り(http://asahi.co.jp/hospital/archive/kaisyo/youtsu/point/images/point_img_01.jpgより改変)
L4障害では股関節疾患と間違えられることがある
多くは片側性だが、ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎すべり症では両側になることもある
ラセーグ徴候は、ヘルニアに対して感度90%だが特異度は低い
Fajersztajnテストは、ヘルニアに対して特異度90%だが感度は低い
(下図はhttp://images.slideplayer.es/3/1120870/slides/slide_31.jpgより一部改変)
原因としては圧倒的に脊髄関連が多いが、それ以外の原因を挙げる。
・梨状筋症候群 piriformis syndrome
特徴:局所的な臀部中部の疼痛、坐骨棘の圧痛、座位で疼痛増悪、股関節外旋など梨状筋にテンションをかけると疼痛誘発
ラセーグ徴候は半数のみで陽性
尻ポケットに財布その他を入れることによる坐骨神経痛が20世紀中ごろより見られだした。Credit-carditisというらしい。へぇー
・皮疹のない帯状疱疹 Zoster Sine Herpete
ヘルニアによる坐骨神経痛をさらに刺激する
・外傷
骨盤骨折、近位ハムストリング損傷後、神経の過度な伸展後など
筋内血腫や腱損傷は、重度の坐骨神経痛を引き起こすことがある
後方への股関節脱臼や大腿骨骨折で、神経が挟まれて痛みが起こることがある
臀部注射による障害もある
・産婦人科系問題
子宮内膜症で起こることがある。とくに右側に多い
卵巣嚢腫や妊娠後期の子宮による圧迫でおこることがある
分娩中の損傷でもおこる
無治療で、1/3の患者は2週間以内に、3/4の患者は3か月以内に症状改善
体を動かすことができるなら動かしたほうがいい
各種痛みどめで効果が確実なものはない
ヘルニアが原因の場合、手術をした方が早く痛みが良くなる
しかし、1年後の痛みや障害の程度は手術してもしなくても同じ
なので、手術を先延ばしにして痛みが良くなるかフォローするのは良いかも
もちろん、膀胱直腸障害があれば手術適応
2015年3月28日土曜日
NEJM Case10-2015
先ほど旅行から帰ってまいりました。
遅くなりましたがNEJM Case Recordです。
本文はこちら。
Case 10-2015
A 15-Year-Old Girl with Graves' Disease and Psychotic Symptoms
【患者】グレーブス病がある15歳女児
【主訴】精神病症状
3か月前、甲状腺機能亢進症状出現し、TSH低値とシンチによりグレーブス病と診断され、アテノロールとメチマゾールが開始となった。
5週前、身体の見た目についてイライラすることが増え、友達がいなくなった。
3週前、どこにいても声が追いかけてきて、悪魔に狙われていると妹に訴えた。自傷や自傷未遂を繰り返し腹部と手首に痕あり。毎朝3時には目が覚める。不安を訴え、食事をとらなくなった。
身長166cm、体重85.6kg、BMI 31.1
血圧137/81、心拍110整、呼吸数28、体温とSpO2は正常。見当識正常。
涙を流しさびしそうでそわそわしているが協力的。
血算、電解質、糖、腎機能正常。鉄、VitB12、フェリチン、甲状腺以外のホルモン正常。
毒物スクリーニング陰性。妊娠反応陰性。TSH<0.01。
メチマゾール増量。オランザピンとロラゼパム開始。6日目で精神病症状落ち着き、気分も明るくなった。
2週間前に退院。過度に信心深くなり、突然教会を変えたりした。
8日前、ネットで知り合った男性に会うために家を出て、翌日警察が保護、病院へ搬送。抑うつ気分とエネルギーのなさを感じているが、希死念慮と幻覚はなし。
3か月前から重症のグレーブス病に罹患している15歳女児に現れた精神病症状の原因は何でしょうか。
最初に答えを言ってしまうと、この症状はグレーブス病によって引き起こされたものであると考えられるそうです。
甲状腺機能亢進症は、イライラや心配などの精神症状は有名ですが、本症例のような躁症状や精神病症状は稀とのことです。どちらかというと甲状腺機能低下症で見られることが多いです(myxedema madness, myxedema psychosis)。
しかし、双極性障害や精神病の家族歴のある患者では特に、甲状腺機能亢進でも躁症状や精神病症状がみられることがあるそうです。治療開始後するに症状が出ることが多く、甲状腺の機能が亢進から正常に移行するときに起きやすいのではと考えられています。
私なら、このような患者さんに出会ったら、まず薬物と譫妄を除外したいと考えます。
いわゆるtreatable dementiaに内包する各種疾患やAIUEOTIPSが鑑別疾患に含まれるのではないでしょうか。
甲状腺機能亢進症の治療開始直後に発症した精神病症状の症例でした。
~Clinical Pearls~
甲状腺機能亢進症の治療開始直後に精神病症状が発症することがある
2015年3月21日土曜日
「皮膚でわかる内科疾患」(医学書)
久しぶりの医学書紹介です。
「新・総合診療医学 病院総合医学編 第2版」の中で、引用文献として紹介されていたので中古で購入しました。
前半は、皮膚症状からこんな疾患が考えられるという視点で、
後半は、この全身疾患ではこんな皮膚症状がみられるかも、という形で書かれています。
皮膚科のアトラスは見ていて飽きないですね。
日常診療でよく目にする湿疹や接触性皮膚炎などを除けば
皮膚科疾患は一見して診断が想起できるかが鍵となるため
マニアックな疾患も含めて目を肥やしていくのは有用なのかなと朧げながら思います。
snap diagnosisできたらカッコいいだろうなーと夢想しながら読むと非常に面白い本です。
(実臨床はそんなに簡単な話ではないことは了解しておりますが。)
・肝斑が眼周囲や側頸部に生じたら悪性腫瘍潜在を考えよ
・下肢のリベドに結節性病変を伴ったら、結節性多発動脈炎を考える。時に多発性の脳梗塞を伴うこともある(Sneddon syndrome)。
など、マニアックなClinical Pearlsをたくさん生成できます。
家庭医にとっては流石に無駄知識ですかね。無駄な努力が大好きな僕にとっては、娯楽としての楽しみがあります。
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