2015年4月3日金曜日

なかなか治らない咽頭痛(NEJM Clinical Problem-Solving)



今週のNEJMはClinical Problem-Solvingが載ってました。
タイトルはA History Lesson。本文はこちら
ざくっとまとめます。簡単のため、病歴提示の順番は原文と違います。


患者は34歳男性。3日前からの咽頭痛、熱、咳その他、いかにも咽頭炎という症状で来院しました。バイタルは安定。右前頸部リンパ節腫大(1×3cm)。口腔内に異常所見なし。セファレキシン処方され帰宅。

開口障害や声のくぐもりはなく、3日前からでこの現症なら5 killer throat pain(急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、Lewdig's angina、Lemierre症候群)はまずないかな。

ウイルスかな~、細菌かな~。そういや最近若い人の咽頭炎でFusobacteriumが多いって前調べたな~(詳しくはこちら)。でもCentor scoreは1点なので、溶連菌やFusobacteriumを狙った抗菌薬治療はしないかな~。伝染性単核球症はどうだろう。でもとりあえず様子見で対症療法だろうなー

という印象でした。実はここで鑑別診断が抜けておりました。


6週間後、症状が良くならないと再診。WBC6500、異型リンパ球なし。

あら、おかしい!これは只者ではないですね。
6週間も続く慢性扁桃炎の鑑別ってなにがあるのだろう…。
本記事やUpToDateから引っ張ってくると以下の通りです。

伝染性単核球症
HIV
単純ヘルペス
淋病
クラミジア
梅毒
扁桃リンパ腫
炎症性疾患(PFAPA症候群など)

PFAPA症候群は最近知りました。
Periodic Fever with Aphthous stomatitis, Pharyngitis and Adenitisの略です。その名の通りの疾患です。5歳までに発症します。
突然発症の高熱が5日間程度続いたと思ったら下がり、それが1~2か月周期でみられます。
あとは口内炎、頸部リンパ節炎、咽頭炎、扁桃炎なども見られる疾患です。


じつは、この患者さん、覚醒剤使用歴がありました。
覚醒剤使用歴がある=性感染症のリスクということで、詳しく詳しく聞いたら、MSM(Men sexed with men)であることが判明。HIVは陰性でしたが、検査の結果、梅毒と判明しました。


二期梅毒の稀な症状の1つに咽頭炎があるそうです。
梅毒は以前、Case Recordで出てきましたね。(その時の記事はこちら。)


性活動について聴取するのって難しいですよね。
このケースでは、患者さんは最近の性行為を否定していましたが、実はオーラルセックスはしていた、というのが最大の問題点でした。
ヘテロセクシャルのカナダの大学生に聞いた調査では、実に60%がオーラルセックスを性行為とみなしていなかったそうです。
オーラルセックスで感染する病原体は、梅毒の他に淋菌、クラミジア、単純ヘルペス、ヒトパピローマウイルスがあります。最後以外は慢性扁桃炎を引き起こす疾患ですね。要記憶です。


~Clinical Pearls~

・慢性扁桃炎の鑑別診断は、伝染性単核球症、HIV、扁桃リンパ腫に加え、オーラルセックスで感染する各種病原菌。小児で周期性があればPFAPA症候群を疑う。

・オーラルセックスは性行為と認識されていないことが多い。