2014年12月13日土曜日

問題篇:NEJM Case38-2014

今週のNEJM Case Records of the Massachusetts General Hospitalです。

解説は次の記事を見てくださいね。

かいつまんでまとめてあります。全文を読みたい方はこちらへ。


Case 38-2014
An 87-Year-Old Man with Sore Throat, Hoarseness, Fatigue, and Dyspnea


【患者】慢性疾患を多く抱えている87歳男性

【主訴】のどの痛み、倦怠感

【現病歴】
数週間前に嗄声、のどの痛み、増悪する倦怠感出現。家族に勧められ当診療所受診。

受診時の所見
陽性:嗄声、顔面腫脹、眼窩周囲の浮腫
陰性:胸痛、呼吸困難、関節痛、筋痛

【既往歴】
高血圧、脂質異常症、慢性腎不全(2か月前Cre 2.22mg/dlでここ数年は安定)、甲状腺機能低下症(8か月前TSH 3.38uU/mlで基準範囲内)、GERD、食道運動障害、AAA、慢性腰痛、希死念慮を伴ううつ病(数年前に妻と死別してから)、繰り返す尿路感染
右腎動脈形成術(10年前)、胆嚢摘出、結節(おそらく良性)に対する右肺中葉切除、閉塞性前立腺肥大症に対する光選択式前立腺蒸散術(2か月前)、手首の手術

【内服薬】
atenolol, vitamin D3, fluticasone propionate and salmeterol inhaler, aspirin, citalopram, fluticasone nasal spray, atorvastatin, omeprazole, levothyroxine
Lisinopril で咳が、zolpidem tartrate で悪夢が出た。

【生活歴】
独居、ADL自立、3人の子は近くに住んでいるが、あまり顔を見せず、診療所にもついてこない。
内科、泌尿器科、循環器科に定期通院。何年も前に禁煙、アルコールは飲まない。

【家族歴】
父:肝がんで死亡 息子:サルコイドーシス

【身体所見】
General appearance 快活、嗄声あり。血圧130/72、脈拍59、SpO2 96%r/a、体重86.8kg(1か月で4.5kg増えた)、BMI 29.9
顔面腫脹、眼窩周囲の浮腫以外の所見なし。

【その後の経過】
2日後、血液検査の結果が出た。CK高値のためスタチンの内服中止を指示。
7日後、再度受診。腹部膨満も訴えた。
11日後、再度受診。倦怠感がひどくなり、特に労作後にひどい。息切れ、顔面腫脹、体重増加、湿性咳嗽、咽頭炎を訴えた。胸痛、関節痛なし。胸部レントゲンでは陳旧性の病変のみで肺水腫、リンパ節腫脹、縦隔腫瘍はない。

【血液所見】


さて、あなたの診断は?



2014年12月12日金曜日

「医学生・研修医のための神経内科学 」(医学書)


神経系は美しい論理に貫かれたシステムであり、ヒトがヒトであるためには神経系の代替物は存在しない。この美しいシステムを崩壊させる神経疾患の克服は、21世紀医療の最大の課題である。(第2版の序より引用)




神経内科の勉強の現段階でのまとめとして、教科書を読んでみました。

600頁ほどありましたが、すんなり通読することができました。

記述がシンプルで、重要な疾患、見落としてはいけないことに焦点を絞ってあり、

今の私のレベルにちょうどあった内容でした。


今まで知らなかった概念や疾患も

読んだ3冊で繰り返し登場したものは

しっかり覚えることもできました。


こんな教科書が各科ごとにあればいいのに。



2014年12月9日火曜日

「神経内科の外来診療」(医学書)



私は想像するのですが、

実は患者さんは病院やクリニックを訪れる前の日から、

「明日は病院に行って診てもらうんだ」と“決心して”、

ある種の決意をもって訪れてこられるのだと思います。 (本書「はじめに」より引用)





外来に訪れる患者さんの

非常にCommonな症状を

しっかり診断するまでの過程を

対話形式で描いています。


患者さんの話のどこに注目するのか

仮説を確かめるためにどのような話しかけをするのか

それぞれの疾患の特徴を分かりやすく学ぶことができます。


「患者さんの訴えは常に正しい」

帯に書いている言葉の意味するところに深く感じ入りました。


やっぱり神経内科は楽しいですね。

神経内科が楽しいと思える日が来たことに驚きです。


1.クロストーク(本書では「問診」「医療面接」のことをこう表現しています)が診断仮説生成に大きく寄与している

2.疾患の知識に基づいて身体所見を予想できる

3.頻度がそこそこ高いマニアックな疾患(表現が矛盾している?)に知的興味が湧く
  (しっかり診断することで患者さんの苦しみが少しでもなくなったら一石二鳥)


このあたりが楽しみを覚える理由かなと分析しております。


実際に現場にでたらこんなバラ色ではないでしょうが。



やはりもうちょっと神経内科の勉強をしてみよう。



2014年12月8日月曜日

「神経症状の診かた・考え方」(医学書)



本書は街中の交通渋滞に対処するものである。 (本書 序より引用)





日常診療で遭遇する症状と

緊急処置が必要なケースについて

実際の症例をふんだんに用いて解説しています。



神経内科っておもろいやん!

と初めて感じることができました。


こういう場合には

こことここに注意して

こういう風に考えようね

時たま、こういうこともあるよ、一応覚えといて

・・・という本です。


ごちゃごちゃだった知識を

分かりやすく整理してもらえて

さらに、ちょっとマニアックなことも教えてくれる

まさにお得感満載。


本当に面白かったので

もうちょっと神経内科の勉強続けてみます。



2014年12月7日日曜日

「ジェネラリスト診療が上手になる本」(医学書)



専門外だからと、全く見ないか、

きちんと勉強して、その場をしっかり対処するか、

どちらかではないのかね? (本書p.68より引用)




症候別に考えるべきことが纏めてある各論の本です。

非常に幅広い症候について、

考え方、ピットフォール、鑑別診断が

これでもかというほど凝縮してが書かれています。


羅列してあるだけではなく、しっかり読んで理解して覚えることができました。

ただ、私にとってあまりに情報量が多い項もあり、未消化のところも。


現場に出てから、ポケットリファレンス代わりに使えそうです。


2014年12月6日土曜日

ANCA関連腎炎の初発症状



先日、講師の先生が研修医時代に最も印象に残った患者さんについて話をしてくれました。


たしか60代の男性。BUN, Cre高値。
半月ほど前に感冒様症状があったため、薬剤性腎障害を疑い入院。
しかし、休薬して3日目、どんどんCreが高くなっていった。


ここまで聞いて、非常に驚きました。

以前に読んだ、急速進行性糸球体腎炎の症例と病歴がほとんど一致していました。


果たして、生検してANCA関連腎炎と判明。

その後は省きますが、波乱に富んだ経験だったそうです。



以前よんだ文献とはコレ。

鮫島謙一. 急速進行性糸球体腎炎(RPGN). Hospitalist 2014 ; 2 : 105-10.


典型的なRPGNとして、このような症例が紹介されています。

63歳男性、2カ月前から全身倦怠感。1か月前に37.5℃あり近医受診し感冒と診断。
セフェム系処方されたが2週間後でも改善せず。CRP4.5、Cre1.34で尿潜血と尿蛋白が陽性。
尿路感染症としてニューキノロン処方されたが症状改善せず他院受診。
Cre2.41で当科紹介。MPO-ANCA陽性。生検でMPAと診断された。


RPGNの初期症状は、微熱、倦怠感、食欲低下など非特異的だそうです。

この文献では、感染症を注意深く除外する必要性が強調されていました。


日本のガイドラインでは、

1. 尿所見異常(血尿、蛋白尿、円柱尿など)
2. eGFR<60
3. CRP高値や赤沈促進

があれば疑い症例で専門医受診をすすめるとあります。



朝倉内科学によると

ANCA関連の急速進行性糸球体腎炎では先行感染や何らかの刺激により、MPOやPR3が好中球や単球の表面に発現され、ANCAと反応して、好中球・単球の脱顆粒や活性酸素の放出をきたし、糸球体内皮細胞の壊死、毛細血管壁の破綻をきたす。(第九版 p.1202より引用)

急速進行性糸球体腎炎の初発症状としては、全身倦怠感(44.9%)、発熱(42.0%)、食欲不振(32.1%)、上気道炎症状(26.2%)、関節痛・筋肉痛(16.7%)、嘔吐・悪心(15.4%)、体重減少(11.8%)などの非特異的症状が大半で、自覚症状を完全に欠いて検尿異常、血清クレアチニン異常の精査で診断に至る例も少なくない。(第九版 p.1203より引用)

だそうです。



~Clinical Pearl~

感冒と診断された後の腎機能異常では、予後不良なRPGNを頭の片隅においておく。



Hospitalistのまだ読んでいない記事も早めに目を通さないといけませんね。




最新号の消化器疾患特集はどうしようかな。懐事情と相談です。



2014年12月3日水曜日

「漂白される社会」を読みました



私もすでに漂白済みなのでしょうか。





「漂白される社会」

著者の開沼博さんは、「フクシマ論」で一躍有名になりましたね。


そこに生活している個人の姿を真正面からとらえ、

もやもやしたものをもやもやしたまま描き

安直な流れに迎合しない姿がカッコいいです。



私たちが住む社会を

平和かつグレーのないものにしようと

必死に「漂白」してきたがために、

そこに厳然と存在するにもかかわらずそこにあってはならないとされた

猥雑なことがらが

どんどん見えなくなっていく。


偏見や思い込み、上から目線の画一化で

眼に入ると煩わしいものを綺麗に視界の外に片付けてしまう。



この通底するテーマのもと

日本社会の「スナップショット」が12枚提示されています。


ホームレスギャル

未成年売春

違法ギャンブル

偽装結婚 などなど…



特に印象深かったのは、ヤミ金と生活保護を扱った第四章。


貧困者=健気に頑張る素朴なひと

という図式も

貧困者=努力しない落伍者

という図式も

もちろんどっちも間違っていて

貧困状態にある人のなかに

聖人君主のような人もいれば

狡猾な人、怠惰な人、箸にも棒にもかからない人も

もちろんいるわけで、

しかし現在社会では

本書の表現を使うなら 「純粋な弱者」 のみが許容される

という指摘。


SNSをみていると

上記のどちらかの図式だけを盲信している意見が

非常に多いなとも思いますし、

自分もその一員であったと深く反省する次第です。



自分には関係ないこととして、猥雑なものを切り離す。

この末路がどのようなものかは、

先日ブログに書いた「女子高生の裏社会」でも扱われていますね。



「信じがたい」状況を目の当たりにしたときに

情報をどのように処理し

どのような方向性で取り扱うか

そのお手本を提示されたのだと思います。