2019年4月5日金曜日
社会的排除と社会的包摂
健康の社会的決定要因について学習を進めると
貧困に関する理論の変遷の歴史の中に突如「社会的排除」あるいは「社会的包摂」という概念が登場してきたことが分かります.
いままで字面だけ見て何となく理解した気になっていたので,
ちゃんと勉強しようと思いこの本を読みました.
戦後フランスにおける政治的主張に端を発し,EC/EUに持ち込まれた概念なのですね.
道理で突然登場するわけです.
社会的排除は貧困の一形態ととらえるべきか否かなど,これまでの国際的な議論を基に,筆者がわかりやすく自分の立ち位置を提示しており,いちいち納得しました.
社会学の概念を知ることで,日常診療に奥行きがでる,という体感は確かにあり,
目の前の患者で起こっていることを少しでも理解するためには,このような人文科学に立脚した知識,社会で起こっていることを直視したうえでそれをどのように乗り越えるかという議論は大事だと思うのです.
というわけで,しばらくこの分野については集中的に勉強しようと思います.
日本語の文献があるのはいいですね.さすがに英語では読む気が起こらないです.
2015年1月15日木曜日
「最貧困女子」を読みました
世の中で、最も残酷なこととはなんだろうか?
それは、大きな痛みや苦しみを抱えた人間に対して、誰も振り返らず誰も助けないことだと思う。
(本書あとがきより引用)
「最貧困女子」
著者の鈴木大介さんは、いわゆる裏社会の少年少女を取材しているルポライターです。
本書は、最も劣悪な環境にいる女性を描いたルポルタージュです。
読んでいて本当に辛くなりました。
自分の周りで起こっているとは思えない、残酷で救いのない現実。
虐待や障害、本来ならもっとも救済されなければいけない少女が
徹底的に搾取され追い詰められ除け者にされてしまう。
なんで医者になるのだろう。
医者になってもこの方々に手を差し伸べることはできない。
医者になる意味ってあるのかな。
そう本気で考えました。
地獄のような現実に向き合わされ、途方もない無力感を抱きました。
いくら論文を読んでも
いくら手技がうまくなっても
そんなこと何の意味もない、そんな方々が現前しているのですから。
でも、圧倒されてはいけないのだと思います。
克服しなければいけないのだと思います。
徹底的に感受性を鋭くしなければいけない。
「医療」に閉じこもってはいけない。
とある小学校の先生の講演を聴いたことがあります。
虐待と貧困が子どもを如何に蝕んでいるのか
耳をふさぎたくなるような話を投げかけてくださいました。
そして最後、宮崎駿の引退会見の言葉を引用して、講演は締めくくられました。
「この世は生きるに値するんだ」
全ての子どもたちに、こう伝えるのが、私たちの役目です。
自分が腐っていてはだめです。
意地でも前を向いて、現実を変えていかなくては。
2014年12月16日火曜日
誰が包摂するのか
SNSで、このようなツイートが流れてきました。
刑務所出所者の帰住先(百分比)。身寄りのない人が少なくない。 pic.twitter.com/lifWrY1gLw
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2014, 12月 16
以前、社会学者の土井隆義先生の講演を拝聴したのですが
知的障害者の受け入れる施設が刑務所になってしまっている
という旨を氏が仰り、とても驚いた記憶があります。
というわけで、法務省「矯正統計」を基に私もグラフを作ってみました。
知能指数の基準は以下の通り。
実際は重度知的障害を測定するのは困難みたいです。
70以下:軽度知的障害
50以下:中等度知的障害
35以下:重度知的障害
教育程度のデータもあったのでこちらも作成しました。
念のため申し上げますが
この記事は差別や偏見を助長するものではありません。
このデータをどう解釈するか
…なんてこと、私の手には負えません。
ただ、私はこのグラフを見て
以前にこの記事で取り扱った
「路上生活者の3割に知的障害の疑い」
と同じ病巣を何となく感じました。
2014年12月12日金曜日
「医学生・研修医のための神経内科学 」(医学書)
神経系は美しい論理に貫かれたシステムであり、ヒトがヒトであるためには神経系の代替物は存在しない。この美しいシステムを崩壊させる神経疾患の克服は、21世紀医療の最大の課題である。(第2版の序より引用)
神経内科の勉強の現段階でのまとめとして、教科書を読んでみました。
600頁ほどありましたが、すんなり通読することができました。
記述がシンプルで、重要な疾患、見落としてはいけないことに焦点を絞ってあり、
今の私のレベルにちょうどあった内容でした。
今まで知らなかった概念や疾患も
読んだ3冊で繰り返し登場したものは
しっかり覚えることもできました。
こんな教科書が各科ごとにあればいいのに。
2014年12月9日火曜日
「神経内科の外来診療」(医学書)
私は想像するのですが、
実は患者さんは病院やクリニックを訪れる前の日から、
「明日は病院に行って診てもらうんだ」と“決心して”、
ある種の決意をもって訪れてこられるのだと思います。 (本書「はじめに」より引用)
外来に訪れる患者さんの
非常にCommonな症状を
しっかり診断するまでの過程を
対話形式で描いています。
患者さんの話のどこに注目するのか
仮説を確かめるためにどのような話しかけをするのか
それぞれの疾患の特徴を分かりやすく学ぶことができます。
「患者さんの訴えは常に正しい」
帯に書いている言葉の意味するところに深く感じ入りました。
やっぱり神経内科は楽しいですね。
神経内科が楽しいと思える日が来たことに驚きです。
1.クロストーク(本書では「問診」「医療面接」のことをこう表現しています)が診断仮説生成に大きく寄与している
2.疾患の知識に基づいて身体所見を予想できる
3.頻度がそこそこ高いマニアックな疾患(表現が矛盾している?)に知的興味が湧く
(しっかり診断することで患者さんの苦しみが少しでもなくなったら一石二鳥)
このあたりが楽しみを覚える理由かなと分析しております。
実際に現場にでたらこんなバラ色ではないでしょうが。
やはりもうちょっと神経内科の勉強をしてみよう。
2014年12月8日月曜日
「神経症状の診かた・考え方」(医学書)
本書は街中の交通渋滞に対処するものである。 (本書 序より引用)
日常診療で遭遇する症状と
緊急処置が必要なケースについて
実際の症例をふんだんに用いて解説しています。
神経内科っておもろいやん!
と初めて感じることができました。
こういう場合には
こことここに注意して
こういう風に考えようね
時たま、こういうこともあるよ、一応覚えといて
・・・という本です。
ごちゃごちゃだった知識を
分かりやすく整理してもらえて
さらに、ちょっとマニアックなことも教えてくれる
まさにお得感満載。
本当に面白かったので
もうちょっと神経内科の勉強続けてみます。
2014年12月7日日曜日
「ジェネラリスト診療が上手になる本」(医学書)
専門外だからと、全く見ないか、
きちんと勉強して、その場をしっかり対処するか、
どちらかではないのかね? (本書p.68より引用)
症候別に考えるべきことが纏めてある各論の本です。
非常に幅広い症候について、
考え方、ピットフォール、鑑別診断が
これでもかというほど凝縮してが書かれています。
羅列してあるだけではなく、しっかり読んで理解して覚えることができました。
ただ、私にとってあまりに情報量が多い項もあり、未消化のところも。
現場に出てから、ポケットリファレンス代わりに使えそうです。
2014年12月3日水曜日
「漂白される社会」を読みました
私もすでに漂白済みなのでしょうか。
「漂白される社会」
著者の開沼博さんは、「フクシマ論」で一躍有名になりましたね。
そこに生活している個人の姿を真正面からとらえ、
もやもやしたものをもやもやしたまま描き
安直な流れに迎合しない姿がカッコいいです。
私たちが住む社会を
平和かつグレーのないものにしようと
必死に「漂白」してきたがために、
そこに厳然と存在するにもかかわらずそこにあってはならないとされた
猥雑なことがらが
どんどん見えなくなっていく。
偏見や思い込み、上から目線の画一化で
眼に入ると煩わしいものを綺麗に視界の外に片付けてしまう。
この通底するテーマのもと
日本社会の「スナップショット」が12枚提示されています。
ホームレスギャル
未成年売春
違法ギャンブル
偽装結婚 などなど…
特に印象深かったのは、ヤミ金と生活保護を扱った第四章。
貧困者=健気に頑張る素朴なひと
という図式も
貧困者=努力しない落伍者
という図式も
もちろんどっちも間違っていて
貧困状態にある人のなかに
聖人君主のような人もいれば
狡猾な人、怠惰な人、箸にも棒にもかからない人も
もちろんいるわけで、
しかし現在社会では
本書の表現を使うなら 「純粋な弱者」 のみが許容される
という指摘。
SNSをみていると
上記のどちらかの図式だけを盲信している意見が
非常に多いなとも思いますし、
自分もその一員であったと深く反省する次第です。
自分には関係ないこととして、猥雑なものを切り離す。
この末路がどのようなものかは、
先日ブログに書いた「女子高生の裏社会」でも扱われていますね。
「信じがたい」状況を目の当たりにしたときに
情報をどのように処理し
どのような方向性で取り扱うか
そのお手本を提示されたのだと思います。
2014年11月24日月曜日
「内科で診る不定愁訴 診断マトリックスでよくわかる不定愁訴のミカタ」(医学書)
「患者が、不定愁訴を訴えて来院することはない。」 (本書「はじめに」より引用)
不定愁訴ってそもそもなに?
これって不定愁訴なの?
どんなときに不定愁訴になるの?
不定愁訴を不定愁訴にせず、
症状の全体像をマトリックスを用いて分類し
しっかり診断をつけていこう、という観点で書かれています。
また訳の分からないこと言ってるよ、とせず
しっかり除外診断を進めていくこと以外に
解決方法はないのでしょうね。
不定愁訴を生む原因についての考察が特に面白いです。
この部分だけでも購入した価値があります。
なお、本書で言う「本当の不定愁訴患者」については、
「不定愁訴のABC」がおススメです。
器質的に異常がないことを肯定的に捉え、
患者にどのように向き合っていけばよいかが書かれています。
機能的疾患をゴミ箱診断にしない。
積極的に所見を取って疑っていく。
器質的異常が見つからないイライラ、うしろめたさを患者のせいにしない。
書くだけは簡単、いざとなると難しいのでしょう。
2014年11月22日土曜日
「難民高校生」「女子高生の裏社会」を読みました
たまには医学書でない本も読みます。
「難民高校生 絶望社会を生き抜く『私たち』のリアル」
著者の仁藤夢乃さんは
すべての少女に「衣食住」と「関係性」を。
を掲げて、
女子高校生サポートセンターColabo(コラボ)を立ち上げ、活動している方です。
ご自身が、高校時代は渋谷で過ごす「難民高校生」だったとのこと。
街をさまよう高校生を
家族や学校、社会とのつながりが断たれていると述懐し、
「貧困」の連鎖にまさにおかれている状態であると分析しています。
本書のなかでも紹介されていますが、
ここでいう貧困とは、
湯浅誠さんのいう 「溜め」のない状態 を指します。
決して金銭的欠乏だけが貧困じゃないんですよ、ってことです。
詳しくは湯浅さんの「反貧困」を読んでください。
私は大学1年生の時に読んで非常に衝撃を受けました。
これほどまでに現実を深くとらえ、分析し、未来を構築することのできる人がいるのかと。
「難民高校生」をはじめとする、生きづらさを抱えた人たちを
自己責任で片付けてしまうのは、
個人的には全く好きではありません。
生きづらさの原因は、家庭や学校の環境に留まらず、
金銭的な問題にあったり、
なかには疾病によると思われる場合もあるでしょう。
本書にも様々なケースが出てきます。
さらなる「貧困」の連鎖に陥らせないために、
自分にとって目障りな存在を視界の外に追いやらないために、
ここら辺のさらに突っ込んだ分析は、「女子高生の裏社会」で広げられています。
いわゆる「JK産業」に取り込まれている高校生たちは
けっして特別な存在などではないということ。
問題の責任はつねに社会の側、大人の側にある、
搾取する側がつねに糾弾されるべきであるということ。
公的(つまり表社会)の支援は、使いづらくよそよそしく
なんちゃってセーフティネットが裏社会にしか存在していない。
生きづらさを抱えている人、悩みを抱えている人を
私たちが遠巻きにしてあっちいけとするたびに、
その人たちは「きれいな表社会」から隔絶されていき、
表からは見えない「闇」におちていく。
高校中退者数:年間約5万5千人
不登校者数:(中学)年間約9万5千人(高校)年間約5万6千人
10代の自殺者数:年間587人
10代の人口中絶件数:1日57件
子どもの貧困6人に1人、虐待、ネグレクト、いじめ、家族関係、友人関係、性被害・・・・・
(Colaboのホームページより引用)
健康を脅かすのは、なにも病気に限ってはいない、というお話でした。
2014年11月21日金曜日
「フェルソン 読める!胸部X線写真」(医学書)
今更ながら読んでみました。
まさに入門書。学部4年生くらいで読むのがちょうどいいと思います。
記載は非常にわかりやすいです。
理論に基づいて所見を説明しています。
ときどき出てくるジョークのほうが理解困難です。
英語圏の人はあれを見て笑うのでしょうか?
これを読んだからといってX線読影ができるようになるわけではないのでご注意を。
内容は素晴らしいですが、あくまで「入門書」です。
私のお気に入りX線読影の本はコレ!
最近、第2版がでて、表紙が黒くなりました。
第1版をポリクリ前に読みました。
「何を観たらいいのかさっぱりわからない」医学生を
「ある程度自信を持って病態を答えることができる」医学生にしてくれます。
フェルソンを読み終わった方はこちらをどうぞ!
私は順番が逆でしたね・・・。
2014年11月19日水曜日
「最速!聖路加診断術」(医学書)
診断学・臨床推論の本を読み漁っております。
40の症例をコンパクトにまとめてあります。
他書との違いは、チーフレジデントの頭の中を追っていけるようになっていることです。
この情報からこれを疑ってこんな検査をしました
という流れがわかりやすく記されています。
最初に提示される情報は、まさに現場で短時間で集めた病歴だけなので、
たとえば病歴を読む前に
「あ、フェリチン高値の情報が目に入っちゃったよ~」
とかいう事態にならないです。
症例もあまりマニアックなものがなく、ちょうど良いです。
最も印象深かったのは、大量の脂汗が主訴の症例。
「脂汗でみつかる貧血もある!」
(ネタバレになるため反転してあります)
甲状腺疾患がこんなに多彩な顔をしてやってくることにもびっくり。
浮腫、ミオパチー、心不全、腸閉塞…
非常に実践志向の本だと思います。
2014年11月16日日曜日
「ココまで読める! 実践腹部単純X線診断」(医学書)
読影は苦手です。
CTについては、急性腹症のCT演習のサイトを利用して、思い出したように勉強しています。
今まで、腹部X線は
free air と niveau くらいしかわからんやろ
という認識だったのですが、
見る人が見たらここまで読めるのかと目からうろこでした。
内容を咀嚼するには到底至らないですし、
この本を読んだからすぐに読めるようになるわけではもちろんないですが
(この本のせいではなくて、完全に自分の力不足です)
「あれ、なんかおかしいぞ」という感覚が、少しは分かるようになったかと思います。
この本を読むまでは
fluid ileus の所見があっても
「異常なし」と簡単に結論していたことでしょう。
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