2020年4月23日木曜日

胸膜炎で片麻痺?


以下、個人情報を大幅に変更して事例を描述しています。

この数か月で、不全片麻痺を主訴に救急受診→胸膜炎による疼痛が原因だった、というケースに複数であいました。

いずれも、なんらかの機能異常があり、疼痛の存在をはっきり自覚、伝達できないという状況がありました。

主訴は、箸を落とした(腕を動かすことで胸膜痛が発生し痛みのため動かせていなかった)、歩けない(足を動かすことで胸膜痛が発生していた)などでした。

いまいちどう調べていいかよくわかりませんが、同様の報告はあまりなされていないようです。
先行文献をもう少し調べてみます。


2020年4月20日月曜日

経験に基づく学習(ExBL)について part 1


昨年になりますが,Medical Teacher誌にAMEE guideとして,経験に基づく学習(ExBL)の解説論文が掲載されていました.

学生が臨床現場で卒前研修を行うにあたり,非常に重要な論点が解説されています.
昨今は市中病院や診療所でも学生が卒前研修を行うようになっているため,多くの方にとって必要な文献になると思います.

というわけで,いつものごとく何回かにわけて全訳します.
リンク先から全文フリーで読めますので,気になった方はどうぞ.

Tim Dornan, Richard Conn, Helen Monaghan, Grainne Kearney, Hannah Gillespie & Deirdre Bennett (2019) Experience Based Learning (ExBL): Clinical teaching for the twenty-first century, Medical Teacher, 41:10, 1098-1105


経験に基づく学習(ExBL):21世紀の臨床教育

要約

問題について:臨床の現場では,新人の医者が自分では安全にマネジメントできない状況に遭遇してしまうことはよくあることだ.この事態は,患者の危険と,新人の医者や他の臨床家へのストレスを招く.現場にたつ準備ができていないということがこれまでずっと問題となっており,カリキュラムが徒弟制からアウトカム基盤型デザインに移行してもなお残存している.支持的な学習環境で臨床経験を積み学びを得ることで能力が培われるのであるから,驚くべきことではない.患者の治療内容を担保し,研修医の健康を保証するために,医学生への臨床現場に基づく教育の方略を,直ちに徹底的に点検する必要がある.

このガイドについて:経験に基づく学習(ExBL)は,臨床現場に基づく学びを育む21世紀の教育方略であり,現時点で最良の理論とエビデンスから導出されたものである.ExBLは,医学生が現場での経験から学びを得るために必要な能力を明確に示すものである.どのように医師が振舞えば学生が経験を得る助けとなるのかを例示するものである.省察により本物の患者からの学びが能力やアイデンティティの獲得にどのように変換されるのかを説明するものである.望ましい学習環境の特徴を同定するものである.このガイドは、医師,学生,placement lead,教育責任者やその他ステークホルダーに,新人医師の能力をできるだけ高める方法を指南するものである。ExBLは医学生の臨床現場に基づく学びの包括的なモデルであり、コンピテンシーに基づく教育に足りない点を補い、安全かつ効率的で思いやりのあるケアを行う準備を新人医師に提供する.


2020年4月16日木曜日

滴状乾癬 知ってました?


ゆるく投稿する木曜日です。

MKSAPで知った、私にとって初見の知識。
滴状乾癬gutatte psoriasisについて、名前しか知らなくてillness scriptを把握していませんでした。

小児~青年期で好発。
小さくて痂皮を伴う(乾癬っぽいですね)皮疹が体幹優位に出現するが、短期間で消退することが多い。
そして、多くは先行感染、とくに溶連菌感染により惹起される。


溶連菌はいろいろ起こすのですね。
腹痛や下痢などの消化器症状を呈することが多い、という特徴もあわせて覚えておくのもよいかもしれません。


2020年4月13日月曜日

高齢者の転倒予防(NEJM Clinical Practice)


少し前のNEJM Clinical Practiceで高齢者の転倒予防が扱われていました.

Prevention of Falls in Community-Dwelling Older Adults
N Engl J Med 2020; 382:734-743

家庭医療専攻医レベルなら全て押さえておくべき内容ですので,ざっくりまとめます.

・高齢者の10%は年2回以上転倒している
・骨折などの重大イベントは転倒の10%で起こる
・転倒した21-39%が転倒を恐れる.転倒のおそれは活動量低下につながる.

・転倒は内因性リスクと外因性リスクがどちらも関与する.
・内因は平衡感覚障害,歩行問題,視力低下,起立性低血圧など.
・外因で最も大事なのは薬剤.多剤併用はリスク.抗精神病薬,抗うつ薬,ベンゾジアゼピン,ループ利尿薬などでOR↑
・環境の評価,認知機能低下,うつ症状の有無確認も必要
・リスク高い患者への骨粗鬆症治療も忘れずに.

・運動は可能な限り推奨.室内でも集団でもよい.
・ただし歩行だけだと転倒予防効果なし.
・無理なく続けられるように.下の図は指導の一例.


・介入はいろいろ多方面から行ったほうが良い.
・家の環境を聴取する(風呂場に椅子があるかなど).
・65歳以上では1-2年に1回は眼の検査をすべし.診療所でも視力検査ならできる.
・多焦点レンズは屋外では転倒の危険性が高まる.屋外活動が多い場合は単焦点に.

・Mini-CogやPHQ-9による認知面・精神面での評価を.
・認知機能障害は転倒のリスクとなるが,コリンエステラーゼ阻害薬もリスクになる.
・抑うつは転倒のリスクとなるが,抗うつ薬もリスクになる.
・なので投薬する前に非薬物的治療を十分検討する.

・その他,不整脈,頸動脈洞過敏症,足の問題,聴力,筋骨格性疼痛,尿失禁などの評価介入も転倒予防に資する可能性がある.
・ビタミンDを転倒予防目的に処方するのは現時点では推奨されない.
(転倒予防効果を示す研究もあったが,システムレビューで効果は否定的となった)


2020年4月9日木曜日

クモ膜下出血のnico-nico sign


知っていましたか?
私は知りませんでした。

クモ膜下出血(SAH)は発症後しばらく経つとCTの感度が少し低くなります。
CTであきらかな出血がない場合、臨床的に疑わしければ髄液検査に進むのが基本です。

SAHでは水頭症を伴うことがあるので、画像上あきらかな出血がなくても水頭症の早期所見があればSAHの可能性を疑うことができる、という発想です。
そして側脳室下角の対称性拡大が最も早期に起こるため、これを拾うわけです。

両側側脳室下角が拡大している像が、笑顔の口に見えるので、nico-nico signというわけです。

原論文だと、SAHの66%にこのサインが見られた一方、コントロール群では2%にしか見られなかった、とあります。

というわけで、nico-nico sign。覚えました。
感度は高くないこと注意です。
あくまでの画像で出血がないSAH診断の「助けとなる」くらいの位置づけが望ましいと思います。臨床的に疑いが強いなら、やはり腰椎穿刺を躊躇しないほうがよさそうです。

nico-nico sign 画像引用: https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/13637 より




2020年4月6日月曜日

女性の尿失禁(AIM IN THE CLINIC)


新生活になりました.
このブログでは今まで通り,週1回更新継続を目標に,のんびりやっていきます.

Annals of Internal MedicineのIn the clinicに,女性の尿失禁がまとめられていました.
こういうコモンプロブレムは何回でも学習すべきです.


要点をザクっとまとめます.

・有病率は20歳以上で17.1%,高齢者は30-40%
・若年者で多いのは腹圧性尿失禁(stress UI),年齢が上がると切迫性尿失禁(urge UI)がふえ,高齢者で最も多いのは腹圧性と切迫性の混合(mixed UI).

・切迫性尿失禁:突然排尿したくなる
原因:排尿筋収縮が抑制できない,内因性の排尿筋活動活性化,膀胱・脊髄・大脳皮質レベルでの感覚路障害
・腹圧性尿失禁:努責,運動,くしゃみ,咳嗽などで尿が漏れる
膀胱や尿路の問題 尿路を閉鎖することができない
・混合性尿失禁:切迫性+腹圧性
・尿閉による尿失禁:症状は上記3つと同じだが,自分では気づかない
原因:膀胱収縮の障害.神経疾患,薬剤,直腸内便多量貯留など

・肥満や座っている時間が多いことなどは,修正可能な生活因子
・カフェイン摂取減量は患者によっては効果があるかもしれない。2-4週控えて効果を確認するのが良い。
・トイレにすぐ行ける環境か,失禁による心理的なストレスや抑うつはないかなど社会心理的側面も考慮すべし.
・経膣分娩は尿失禁のリスク因子。
・子宮摘出術は高齢者では尿失禁のリスク因子

・併存疾患や薬剤の影響をみる.疾患の適切なコントロールが尿問題の改善につながることもある.主要なものは以下の通り.

・心不全:体液量過剰による夜間尿増加,利尿薬による多尿,ACE阻害薬による咳嗽
・高血圧:CCBによる浮腫→夜間尿増加,失禁となることも
・喘息・COPD:抗コリン薬による排尿筋収縮障害
・糖尿病:チアゾリジンによる浮腫,SGLT-2阻害薬による尿量増加,浸透圧利尿,膀胱の神経障害による尿閉,骨盤底筋の神経障害
・ビタミンB12:膀胱の知覚低下,運動障害→トイレに間に合わない
・神経痛:ガバペンチンやプレガバリンは末梢浮腫による夜間尿・尿失禁のリスク
・てんかん:高用量の抗てんかん薬は膀胱知覚障害を起こす
・パーキンソン病:プラミペキソールやロピニロールは末梢浮腫を起こす
・認知症:コリンエステラーゼ阻害薬による排尿筋収縮力低下→頻尿,尿失禁
・OSAS:ANP分泌増加による夜間尿と夜間尿切迫

・急性発症の尿失禁は、可逆的要因を検討すべし。薬物、尿路感染、尿閉、神経学的異常、膀胱刺激物質の曝露、せん妄、宿便など。

・尿失禁の病型診断は、3IQ(Incontinence Question)が有用
1.過去3か月で(少量でも)尿もれがあったか。→Yesなら次に進む。
2.過去3か月で、尿が漏れたときはどんな時だったか(複数回答可)
 a. 体を動かしている(せき、くしゃみ、荷物を持ち上げる、運動する)時
 b. 尿意が迫っている/感じているが、トイレまでたどり着けなかった時
 c. 体動時でも尿意時でもない
3. 過去3か月で、尿が漏れたときはどんな時が最も多かったか(1つだけ回答)
 a. 体を動かしている(せき、くしゃみ、荷物を持ち上げる、運動する)時
 b. 尿意が迫っている/感じているが、トイレまでたどり着けなかった時
 c. 体動時でも尿意時でもない
 d. どちらも同じだけある

3-a. 腹圧性尿失禁(優位)
3-b. 切迫性尿失禁(優位)
3-c. 他の原因
3-d. 混合性尿失禁

・治療は生活習慣の改善や理学療法が第一選択
・水分制限は過度に行うべきではない。一度にたくさん飲むのではなく、少量ずつちょくちょく飲むように指導する。
・定期的な排尿を指導する。2-3時間に一回または排尿日誌をつけて管理。
・認知症患者に排尿するかどうか聴くのは推奨されない。排尿したいという膀胱からの感覚が鈍っている可能性がある。定期的にトイレ誘導するのが良い。
・肥満患者では減量が非常に効果的
・利尿薬使用患者では、就寝前の服用は避ける。生活習慣を聞いて内服タイミングを考える。

・腹圧性尿失禁には骨盤底筋訓練±バイオフィードバック
・腹圧性尿失禁に推奨される薬剤はない
・腹圧性尿失禁ないしそれに併存するうつや慢性疼痛については、デュロキセチンの使用を考慮してもよい。
・難治性の場合、ペッサリーなどによる治療や手術も検討

・切迫性尿失禁には膀胱訓練。または決まった時間に排尿する。
・薬剤を使うなら抗ムスカリン薬(オキシブチニン(ポラキス)、ダリフェナシン(ウリトス)、ソリフェナシン(ベシケア)、トルテロジン(デトルシトール)、フェソテロジン(トビエース)など)、またはβ3刺激薬(ミラベグロン(ベタニス))
・抗ムスカリン薬では、口渇、眼圧亢進、便秘、認知機能低下などの副作用に注意
・β3刺激薬では、高血圧、頻尿に注意(ベタニス50mgは1錠181.8円。)
・萎縮性膣炎があれば、局所エストロゲン療法。
・難治性なら神経刺激療法やボツリヌス毒素などの方法もある


2020年4月2日木曜日

慢性疾患患者の継続診療で見落としを避ける「診断戦略」



https://www.jmedj.co.jp/premium/pcriron/data/5005/?fbclid=IwAR3MIt-p9-ddrUPnrOr8BNH6rslAproo0DLDd-d4D8FfPyk0ULTLk08UkWo

日本医事新報で,「プライマリ・ケアの理論と実践」という特集がされています.
私も寄稿し,このたび発行されましたので,恥ずかしながら宣伝です.

「診断戦略」について10回程度の連載があるのですが,
私はそのうち,いままであまり注目されてこなかった,診療所・在宅・嘱託施設での慢性疾患患者継続診療における診断戦略について議論致しました.

先行文献が少なく,私の思い込みと先走りをかいただけという批判もあるかと思いますが,いままで総合診療の分野で「診断について考える」といえば,ERまたは大病院総合診療科外来/入院ケースをセッティングにしたものがほとんどだったので,何かしらの新しい風をおこせたらよいなと思います.

ご笑覧ください.