2020年4月13日月曜日

高齢者の転倒予防(NEJM Clinical Practice)


少し前のNEJM Clinical Practiceで高齢者の転倒予防が扱われていました.

Prevention of Falls in Community-Dwelling Older Adults
N Engl J Med 2020; 382:734-743

家庭医療専攻医レベルなら全て押さえておくべき内容ですので,ざっくりまとめます.

・高齢者の10%は年2回以上転倒している
・骨折などの重大イベントは転倒の10%で起こる
・転倒した21-39%が転倒を恐れる.転倒のおそれは活動量低下につながる.

・転倒は内因性リスクと外因性リスクがどちらも関与する.
・内因は平衡感覚障害,歩行問題,視力低下,起立性低血圧など.
・外因で最も大事なのは薬剤.多剤併用はリスク.抗精神病薬,抗うつ薬,ベンゾジアゼピン,ループ利尿薬などでOR↑
・環境の評価,認知機能低下,うつ症状の有無確認も必要
・リスク高い患者への骨粗鬆症治療も忘れずに.

・運動は可能な限り推奨.室内でも集団でもよい.
・ただし歩行だけだと転倒予防効果なし.
・無理なく続けられるように.下の図は指導の一例.


・介入はいろいろ多方面から行ったほうが良い.
・家の環境を聴取する(風呂場に椅子があるかなど).
・65歳以上では1-2年に1回は眼の検査をすべし.診療所でも視力検査ならできる.
・多焦点レンズは屋外では転倒の危険性が高まる.屋外活動が多い場合は単焦点に.

・Mini-CogやPHQ-9による認知面・精神面での評価を.
・認知機能障害は転倒のリスクとなるが,コリンエステラーゼ阻害薬もリスクになる.
・抑うつは転倒のリスクとなるが,抗うつ薬もリスクになる.
・なので投薬する前に非薬物的治療を十分検討する.

・その他,不整脈,頸動脈洞過敏症,足の問題,聴力,筋骨格性疼痛,尿失禁などの評価介入も転倒予防に資する可能性がある.
・ビタミンDを転倒予防目的に処方するのは現時点では推奨されない.
(転倒予防効果を示す研究もあったが,システムレビューで効果は否定的となった)