昨年になりますが,Medical Teacher誌にAMEE guideとして,経験に基づく学習(ExBL)の解説論文が掲載されていました.
学生が臨床現場で卒前研修を行うにあたり,非常に重要な論点が解説されています.
昨今は市中病院や診療所でも学生が卒前研修を行うようになっているため,多くの方にとって必要な文献になると思います.
というわけで,いつものごとく何回かにわけて全訳します.
リンク先から全文フリーで読めますので,気になった方はどうぞ.
(2019) Experience Based Learning (ExBL): Clinical teaching for the twenty-first century, Medical Teacher, 41:10, 1098-1105
経験に基づく学習(ExBL):21世紀の臨床教育
要約
問題について:臨床の現場では,新人の医者が自分では安全にマネジメントできない状況に遭遇してしまうことはよくあることだ.この事態は,患者の危険と,新人の医者や他の臨床家へのストレスを招く.現場にたつ準備ができていないということがこれまでずっと問題となっており,カリキュラムが徒弟制からアウトカム基盤型デザインに移行してもなお残存している.支持的な学習環境で臨床経験を積み学びを得ることで能力が培われるのであるから,驚くべきことではない.患者の治療内容を担保し,研修医の健康を保証するために,医学生への臨床現場に基づく教育の方略を,直ちに徹底的に点検する必要がある.
このガイドについて:経験に基づく学習(ExBL)は,臨床現場に基づく学びを育む21世紀の教育方略であり,現時点で最良の理論とエビデンスから導出されたものである.ExBLは,医学生が現場での経験から学びを得るために必要な能力を明確に示すものである.どのように医師が振舞えば学生が経験を得る助けとなるのかを例示するものである.省察により本物の患者からの学びが能力やアイデンティティの獲得にどのように変換されるのかを説明するものである.望ましい学習環境の特徴を同定するものである.このガイドは、医師,学生,placement lead,教育責任者やその他ステークホルダーに,新人医師の能力をできるだけ高める方法を指南するものである。ExBLは医学生の臨床現場に基づく学びの包括的なモデルであり、コンピテンシーに基づく教育に足りない点を補い、安全かつ効率的で思いやりのあるケアを行う準備を新人医師に提供する.