2015年9月13日日曜日

多発性骨髄腫をいつ疑うか


貧血の精査を行い、多発性骨髄腫と診断する機会がありました。
骨髄障害であることはすぐわかったのですが、高齢でありかつ、骨痛やCa高値がなかったため、骨髄穿刺をするまで全く鑑別に上がりませんでした。

多発性骨髄腫の症状の頻度は以下の通り

貧血:73%
骨痛:58%
Cre上昇:48%
倦怠感:32%
高カルシウム血症:28%
体重減少:24%、うち半数は9kg以上減少

一つひとつの症状はそこまで頻度が高くないですね。
「貧血の精査で多発性骨髄腫」という今回のケースは十分にあり得るわけです。

貧血はもちろん正球性となることが多いですが、大球性貧血が全体の9%で見られています。
そのうち53%がVitB12<200ng/lであり、機序は明らかではないですがVitB12欠乏を一定割合で合併するみたいです。
VitB12欠乏性貧血かなと思ったら、しっかりその原因(悪性貧血など)まで追求しなくてはいけませんね。

腎障害が最初の症状となることもあるみたいです。
私の経験したケースでも、貧血進行の前に腎障害が出現していました。

上記にないものとしては、繰り返す感染症に注意です。
インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンが推奨されています。


多発性骨髄腫の定義は以下の通りです。

【必須】骨髄で形質細胞が10%以上または髄外形質細胞腫
これに加え以下のうち1つ以上当てはまれば確定。

①血清Ca>11mg/dl
②腎障害:Creクリアランス<40ml/minまたは血清Cre>2mg/dl
③Hb<10g/dl
④骨融解像
⑤骨髄内形質細胞60%以上
⑥血清free軽鎖比>100
⑦MRIで病変あり


なお、M蛋白が3g/dl以上または骨髄で形質細胞が10-60%にも関わらず、臓器障害がない状態を、くすぶり型多発性骨髄腫といいます。
年率10%で多発性骨髄腫またはALアミロイド―シスに移行するので、緊密なフォローアップが必要です。この時点では化学療法の適応にはなりません。


多発性骨髄腫はヘテロな病態の集合体であると考えられているそうで、その理由としては、化学治療をしても進行していく場合もあれば、長年経過観察しても良い場合もあるということです。

なので、ステージングが大事になるのですが、これには染色体検査などが必要になります。
非専門医では、International Staging System(ISS)を押さえておけばいいと思います。

Stage 1:β2ミクログロブリン<3.5mg/lかつ血清Alb>3.5g/dl 余命中央値62ヶ月
Stage 2:1でも3でもない 余命中央値44ヶ月
Stage 3:β2ミクログロブリン<5.5mg/l 余命中央値29ヶ月


参考:UpToDate
Clinical features, laboratory manifestations, and diagnosis of multiple myeloma
Staging and prognostic studies in multiple myeloma