2026年7月6日月曜日

長期介護施設における安全vs自律

 Perone AK, Zhou L, Glusker A, et al. A Scoping Review on Strategies for Navigating Conflicting Rights Between Safety and Autonomy in Residential Long-Term Care in the United States. J Am Geriatr Soc. (2026): 1–15, https://doi.org/10.1111/jgs.70532.


背景

米国では高齢者の長期介護施設への入居ニーズが高まっており、職員は入居者の安全と自律性という相反する権利の間で、しばしば複雑な葛藤に対処しなければならない。こうした倫理的ジレンマは頻繁に発生し、法的または職業上の損害につながる可能性もあるにもかかわらず、職員向けの指針は依然として不足している。本スコーピングレビューは、米国の長期介護施設におけるこうした葛藤を解決するために用いられている既存の実証的戦略を特定し、統合するものである。


方法

ArkseyとO'Malleyの枠組みに基づき、1987年から2024年の間に英語で発表された査読済みの実証研究を対象に、3つの学術データベース(ProQuest Social Sciences、PubMed、Scopus)で検索を行った。2名の独立した査読者が、安全と自律性の葛藤に焦点を当て、解決戦略が含まれているかどうかを基準に論文を選別した。最終的に選ばれた14本の論文からデータを抽出し、トピックと解決策を分類した。


結果

このレビューでは、転倒予防、認知症ケア、性的表現、日常生活といったトピックを扱った14件の実証研究が特定された。戦略は、革新(新しいツール/ポリシー)、妥協(価値観のバランス)、擁護(好みの擁護)、内省(チームでの話し合い)、教育(研修、情報提供)の5つのカテゴリーに分類された。革新は最も頻繁に用いられた戦略であり(14件中8件)、教育は最も利用頻度は低かったものの、今後の導入に向けて最も頻繁に提案されていた。


結論

安全と自律性の葛藤に対処するためのエビデンスに基づいた戦略については、研究上の大きなギャップが存在する。以下の5つのカテゴリーは、臨床ケア担当者や政策立案者が、職員が相反する権利に対処する多様な方法を理解するための指針となる。居住型長期介護施設の職員が現場で相反する権利をどのように理解し対処しているか、また、これらの戦略をより広く普及させるにはどうすればよいかについて、さらなる研究が必要である。


感想

安全か自律か、という対立は、現在査読中の自分の論文の議論にも通底するテーマです。非常に重要なトピックを扱っており、日本でも同様の研究がなされるべきだと強く思いました。施設入所に関する意思決定において、この二項対立をどう乗り越えるかという視点は臨床的に重要だと思います。