2015年8月11日火曜日

終末期ケアにおける患者との対話 Vol.2



AAFPが発表している
Discussing End-of-Life Care With Your Patients
を自分なりに訳しています。

何回かに分けて、全文訳を載せていきます。
かなり崩して訳していますので、正確な記載はぜひ原文を確認ください。

前回の続きです。



ホスピスでの会話を始める

 私たちが医師として行う中で最も難しいことのひとつに、患者やその家族に悪い知らせを伝えることがある。私たちにとっては、自然に死を迎えるためにややこしい議論を行うより、疾患治癒のはかない望みにかけ続けるほうがよっぽど簡単である場合が多い。しかし、賢明な医師なら、治療から緩和にいつ移行すべきか、その場合患者や家族がどれほど満足するかをよく知っている。

 終末期との診断を受けた患者は、たいていの場合その意味を理解し、医師が正直に伝えてくれたことに感謝する。医師はしばしば、患者の希望を奪ってしまったといらぬ心配はしてしまうが、誤った希望を与えるくらいなら患者のパートナーになる資格はない。「治癒」に合っていた患者の焦点を、より理にかなった目標、たとえば関係修復やイベントを見届けるなど特定のタスクを成し遂げるまでは長生きするなどの目標に向けなおすのも一考である。疼痛が伴わない死というのも目標になりうるかもしれない。生命の質と生命の量、このどちらも大事にすることは十分可能であるし、これは文献的にも明らかである。最近の研究によると、ホスピスケアを受けている患者は、積極的な治療を追求している患者より実際に長生きである。

 ホスピスや緩和ケアについて患者と話す前に、細かい実践上の注意点を慎重に考えなくてはならない。

 時間を確保する:会話を急かしてはいけない。
 空間を確保する:プライベートかつ静かな場所で、全員が着席できるところを選ぶ。
 電話の電源を切る:気をそらしたり邪魔をしたりする可能性のあるものは全て部屋に持ち入らない。

 会話それ自体についても事前に十分考えておくだけの価値がある。会話がどのように広がるかを数分でいいから考えておきなさい。自分が話すのと同じだけの時間、耳を傾けるようにしておきなさい。あなたはこれから述べるようなやりかたをしたいと思うかもしれない。

 患者の知っていることを明らかにする:まず、患者と家族が診断についてどれだけ理解しているかを明らかにしなさい。「あなたは自分の状況をどのように理解していますか」「他の医者から病気についてどのように言われましたか」といった質問をしても良い。

 患者の反応に注意深く耳を傾ける:予後について患者の感覚と自分の考えに大きな食い違いがあれば、時間をとって話し合うことになる。ゆっくりはきはき話しなさい。高齢の患者では耳が遠い可能性を敏感に察知しなさい。

 患者の目標を見つける:これが良質な緩和ケアにとっての鍵である。このためにはしっかりした傾聴スキルが必要となる。患者の目標が分かりさえすれば、あとは患者に気づいてもらう方法はたくさんある。患者の目標が緩和なら、ホスピス機関の助けを借りることは非常に価値のあることである。ホスピスで可能なことをリストアップし、患者の目標をホスピスのモデルに当てはめるのではなく、まずは患者の目標を確定して、それからホスピスが実際にできることと照らし合わせるのが良い。