2015年8月12日水曜日

終末期ケアにおける患者との対話 Vol.3



AAFPが発表している
Discussing End-of-Life Care With Your Patients
を自分なりに訳しています。

何回かに分けて、全文訳を載せていきます。
かなり崩して訳していますので、正確な記載はぜひ原文を確認ください。

今回で最後です。




事前指示(advance directive)について説明する

 事前指示では、患者は人生を終える際の希望を書き記すことができる。複雑だと思われている事前指示の種類についても、整理してみれば簡単である(下表参考)。内容指示(instructive advance directive)では、リビングウィルのように、自分が何をしてほしいかを書いたり伝えたりする。代理人指示(proxy advance directive)では、持続的権限移譲(durable power of attorney)に代表されるように、自分が意思決定をできなくなったときに代わりに決定してくれる人を指名する。患者の財産が複雑である場合を除いて、事前指示に法律家が関わらなくてもよい。

 事前指示について患者と話す時期は、終末期に至る前が最も良い。いつもの身体診査の間に行うのでも構わない。このように口火を切るのはどうだろう。「患者さん全員に、事前指示書について、それが必要となる前にお話しすることにしています。今まで作成してみようと思ったことはありますか?」このように言うと、事前プランニングが社会的かつ医療的に受け入れられていることであり、事前指示について考えたり作成したりしてみようとなる。


 宝物

 終末期ケアとは、最も内省的かつ脆弱なときをすごしている患者に手を差し伸べることである。死が近いと悟ると、その人の人格は著しく成熟する。この旅路にいる患者さんと共に歩むことこそ、医師が行う医業の中で最も価値のある宝物である。自分自身の死を身近にとらえ、患者との垣根を取り除くことが必要である。終末期ケアを行う医師は、患者の心に接してもいいのだ、人間として当然感じる感情を抱いてもいいのだということを知っている。

 積極的な治療を中止し、症状のマネージメントに向かうタイミングを知っているという点で、終末期のケアや教育は高貴なものである。仮にすべての病気を治癒しようと躍起になっても、私たちはいつか必ず死ぬ。患者の生命の質を少しでも良くするように奮闘すれば、たとえ死が近づこうとも、私たちはみな栄光を手にするのだ。


必読文献
・“End-of-Life Care: Guidelines for Patient-Centered Communication.” Ngo-Metzger Q, August KJ, Srinivasan M, Liao S, Meyskens FL . 2008;77:167-174.
・“Facing the Truth.” Havas NE. 2008;77:140.
・March 15 2008 のAAFPに載っている緩和ケアの記事も見るように