地域密着の病院で働くものの宿命として
患者さんやご家族と、お看取りについて話す機会が日常茶飯事にあります。
しっかり勉強しなくてはと思い、
AAFPが発表している
Discussing End-of-Life Care With Your Patients
を自分なりに訳しています。
何回かに分けて、全文訳を載せていきます。
かなり崩して訳していますので、正確な記載はぜひ原文を確認ください。
話し合いは容易ではない、しかし患者さんは必ず感謝してくれる
終末期ケアにおける患者との対話
人口構造の変化に従い、家庭医療のかたちも変化している。85歳以上の人々の割合がこれほどまで急速に増加しているのは人類史上初めてのことである。今や、終末期との診断を受けてから実際に亡くなるまでに、平均して30カ月も生きなくてはならない(図は原文参照のこと)。これらがもたらす経済学的影響は、立ちくらみがしそうなほど重大である。ある研究によると、65歳を超えると、1年寿命を延ばすたびに患者(あるいは組織)は145,000ドルものお金を払わなくてはならない。しかし、医学の進歩により寿命は延びているにもかかわらず、人間の死亡率は(少なくとも私の経験では)いまだ100%のままである。
余命を予測する
余命を予測することは、終末期ケアにおいての最難問にあげられる。ある研究によると、医師は余命を63%も長く過大評価してしまう。プライマリケア医は、患者との関係が近いため、余命を予測するのに特に苦悩する。不幸中の幸いか、私たちを助けてくれる客観的なツールやガイドラインが開発されている。
緩和医療行動スケールPPS(http://www.victoriahospice.org/ed=publications.html)は、機能低下がみられ始めた患者の予後を非常に正確に推定する。PPSスコアが50%以下であると、6か月以内に亡くなることが多い。余命予測の一般的なガイドラインは、米国ホスピス・緩和ケア協会のウェブサイト(http://www.nhpco.org)や、米国ホスピス・緩和医療学会のウェブサイト(http://www.aahpm.org)にもある。
鍵となる臨床指標もまた、患者の余命を測る手助けとなる。慢性疾患のある患者で、以下に述べる基準のうちどれか1つでも当てはまれば、余命は6か月以内である可能性が非常に高い:意図せずに体重が10%以上減少する、感染症(誤嚥性肺炎、褥瘡感染、腎盂腎炎など)が繰り返し起こる、入院回数が増える、血清アルブミン値が2.5以下である、機能低下がある。
経験のある医師にとっては、自分自身に問い直すことも有用である。「この患者が6か月以内に亡くなったら自分は驚くだろうか。」その答えがNOなら、ホスピスや緩和ケアに向けての評価をおこなう時期にきているのかもしれない。
患者に予後を伝える方法もまた重要である。予測される残りの人生の期間を(「あなたは残り3カ月です」というように)かっちりと伝えることは、望ましくないばかりか危険ですらある。ただし、年単位より月単位、月単位より週単位で、できる限り具体的に提示することは理にかなっている。たいていの場合、患者は全ての情報を伝えてほしいと願うし、過度に楽観的な予後予測は求めていない。
多くの医師は、死は避けるべきものであり、人生の一部として自然なものであると受容できるものではないと固く信じている。このような心持ちでいると、はじめは余命の予測を難しいと感じてしまう。しかし、疾病に対して関心を抱くのと同じように、人生の終末期に対して関心を持ち、しっかり観察するようになると、臨床的に予後を予測するスキルはあっという間に伸びていく。他の分野での臨床判断のほうが大変なくらいだ。余命について患者と話すことはつねに困難が付きまとうが、そのスキルは注意と経験によって向上させることができる。