2021年1月4日月曜日

患者中心のメディカルホームをsubspecialistと協働して運営する

Philpot LM, Ramar P, Sanchez W, Ebbert JO, Loftus CG. Effect of Integrated Gastroenterology Specialists in a Primary Care Setting: a Retrospective Cohort Study. J Gen Intern Med. 2020 Nov 20.

背景

消化器系の愁訴は、プライマリケアで頻繁に遭遇するものである。患者中心のメディカルホーム(PCMH)は、医療現場間での連携や地域内の調整を促進し、医療従事者間のコミュニケーションを強化し、ケア提供の質に焦点を当てることで、調整と連携を向上させる可能性がある。

目的

大規模なプライマリケア診療所内での,integrated community gastroenterology specialist (ICS-GI)モデルの効果を調べる。

研究計画

傾向スコアでマッチングしたヒストリカル対照群を用いた後方視コホート研究

患者

当診療所のICS-GI専門医を受診した265人の患者を特定し、ICS-GIモデルの実施前に受診した530人の同様の患者と(1:2で)マッチングさせた。

主な測定項目

集団全体および各消化器疾患患者群それぞれで、消化器疾患に関する診断検査の頻度、当院の消化器専門外来・救急・および入院治療への紹介の頻度、および専門医療を受けるまでの時間を測定した。

主な結果

ICS-GIモデル下で受診した患者では、外来診療の利用率は同等で(OR = 1.0、95%CI 0.7-1.4、p = 0.90)、プライマリケアを受診する割合が高く(OR = 1.5、95%CI 1.1-2.2、p = 0.02)、我々の消化器専門外来への紹介受診が少なかった(OR = 0.3、95%CI 0.2-0.7、p < 0.0001)。疾患別分析では、消化器腫瘍を除くすべての消化器疾患で、消化器専門外来の紹介受診の減少が示された。救急受診、入院、および診断確定のための受診に関しては、差はなかった。

結論

プライマリケアモデルに専門医を組み込むことは、患者の安全性を損なうことなく、ケアコーディネートの改善に関連していることが観察された。PCMHは、サブスペシャリティのケアを含むように拡張することが可能かもしれない。

感想

ヒストリカルコホートを用いて傾向スコアマッチングをすることで,観察研究だけど疑似的な介入研究になっている,というデザイン.テーマはPCMHで,米国の家庭医療学研究でよく扱われるものですが,PCMHをsubspecialistと協働して運営する,という切り口が新しいです.

high-value careは,実習をするほどできなくなる?

Natt N, Dekhtyar M, Park YS, Shinkai K, Carney PA, Fancher TL, Lawson L, Leep Hunderfund AN. Promoting Value Through Patient-Centered Communication: A Multisite Validity Study of Third-Year Medical Students. Acad Med. 2020 Dec;95(12):1900-1907.

https://journals.lww.com/academicmedicine/Abstract/2020/12000/Promoting_Value_Through_Patient_Centered.40.aspx

目的

医学生が患者中心のコミュニケーションを用いて価値を促進することができるかを評価する標準患者(SP)シナリオ(不要な検査を要求する患者への対応)の妥当性の証拠を検討し,様々な実装およびカリキュラム上の要因が学生の点数に与える潜在的な影響を調べる.

方法

米国の5つの医学部の3年生(N = 516)が、larger OSCEの一環として、2014年から2017年の間にコミュニケーションシナリオを受けた。中央にいる評価者が,11項目のチェックリストを用いてパフォーマンスを評価した。著者らは複数の情報源から妥当性の証拠を収集した。

結果

チェックリストの平均スコアは0.85(標準偏差0.09)であった。チェックリストスコアの評価者間信頼性は良好であった(0.87、95%信頼区間=0.78~0.93)。G係数およびφ係数はそれぞれ0.65および0.57であった.OSCEステーションの数が増えるにつれてスコアは減少し(r = -0.15, P = 0.001)、総括的評価目的で使用されるとスコアは増加した(r = 0.26, P < 0.001)。スコアは、高価値医療(high-value care)にどれだけカリキュラムの時間を費やしたかには関連しておらず(r = 0.02、P = 0.67)、評価前に多くの臨床研修を修了している場合には低下した(r = -0.12、P = 0.006)。

結論

この多施設共同研究では、医学生が患者中心のコミュニケーションを用いて臨床場面で価値を促進できるかを評価するためにシナリオスコアを用いることを支持する妥当性の証拠が得られた。OSCEの構造と目的が学生のパフォーマンスに及ぼす潜在的な影響が明らかになり、クラークシップの学習経験が、学生が高価値医療に関する正規カリキュラムで教えられたことをさらに確認するような働きをしていない可能性があることが示唆された。このトピックに時間を割いても、この侵食に対抗するには不十分であるように思われる。

感想

患者が不要な検査を要求したときに,医学生が適切に対応できるかどうかを評価してみると,①high-value careの講義を受けているとうまくできるはずだけど,実際は関連がない,②臨床研修を経験しているほど適切に対応できていない(患者の言いなりになる指導医の姿をみているからか?).また,③ステーションの数が増えるとスコアは低下し,④総括的評価目的だとスコアは高くなることがわかった.①②がカリキュラム上の要因,③④が実装上の要因ということだろう.

また,あわせて評価の妥当性についても考察しているが,G係数,φ係数ともに十分な値であり,妥当性は高そうだということが分かる.

…というのが私なりの要約です.

確かに,講義で理想を教えられても(例:風邪に抗菌薬は処方しません!),実際現場で医者がそのようにしていない(患者が抗菌薬出せといったらほいほい出してしまう)のをみて,良くないやり方をまねしてしまう(hidden curriculumですね)ということは,一般的にみられることだろうと思います.「医学生が臨床実習で医師の悪いところをまねして身に着けてしまう」ということをOSCEを使って実証しているというのが個人的には最大の面白ポイントでした.

コミュニケーション技法を教えようと思ったら,講義の力は限定的で,実際に現場の医師がちゃんとやっている姿を学生に見せるほかないのでしょう.

2021年1月3日日曜日

運動障害者ががんになると…

Agaronnik ND, El-Jawahri A, Iezzoni LI. Perspectives of Patients with Pre-existing Mobility Disability on the Process of Diagnosing Their Cancer. J Gen Intern Med. 2020 Nov 17.

背景
運動障害(mobility disability)は、成人の米国人において最も一般的な障害であり、米国人口の13.7%と推定されている。がんの有病割合は一般集団に比べて運動障害のある人で高いが、障害者はがん検診と治療における格差を経験している。目的
運動障害者ががんと診断されるプロセスで経験したことを探求する。デザイン
オープンエンドの個人面接を,データが飽和状態に達するまで行った。インタビュー内容はは逐語的に書き起こ,伝統的な内容分析をおこなった.参加者
我々は、装具の使用または日常生活動作の支援を必要とする運動障害があり,その後にがん(黒色腫を除く)と診断された20人の参加者にインタビューを行った。主な結果
懸念は5つの大まかなカテゴリーに集約された:がん診断のプロセスに影響を及ぼす医学的診断機器へのアクセス困難、障害に対する臨床スタッフの態度、がんの徴候や症状を慢性的な健康状態に対する感情的な反応として却下すること、がんの徴候や症状を基礎となる障害と誤認すること、および標準以下のケアに対する法的措置を追求することに関する態度である。参加者は、臨床医の誤った思い込みや偏った態度ががん診断のプロセスを妨げ、時には不十分な検査や診断の遅れの一因となった例を提示した。結論
身体的および態度的障壁は、運動障害者におけるがん診断のプロセスに影響を及ぼす。運動障害者はたしかに臨床的に複雑かもしれないが、臨床家は診断のovershadowing(すなわち、がんの徴候/症状を基礎となる障害に誤って帰属させること)や、がん診断の適時性およびケアの質に影響を及ぼす可能性のあるその他の誤った仮定の危険性に注意すべきである。この集団のがん診断のプロセスを改善するために、障害者のケアにおける課題について臨床家を教育することを含め、さらなる努力が検討されるべきである。感想
障害があるというだけで,適切な診断や治療が得られなくなることがあることを示し,その要因は何かというところまで踏み込んだ研究.がんの症状を,もとからある障害のせいにしてしまうというのは,とても身につまされる話.明日からの診療が変わる,いい論文だと思います.

優秀者を表彰しなくなったことで何が変わったのか


Seligman L, Abdullahi A, Teherani A, Hauer KE. From Grading to Assessment for Learning: A Qualitative Study of Student Perceptions Surrounding Elimination of Core Clerkship Grades and Enhanced Formative Feedback. Teach Learn Med 2020 Nov 24 https://doi.org/10.1080/10401334.2020.1847654

問題点:医学生は、コア・クラークシップ中の優等生評定(honors grading)を不公平かつ不公正なものと認識しており、学習とウェルビーイングに悪影響を与えている。強力な外的動機付けである優等生評定を廃止し、形成的フィードバックを重視することで、このような問題に対処し、内部動機付けと学習を促進することができるかもしれない。しかし、コア・クラークシップの年に優等生評定から合否判定に移行し、形成的フィードバックを強化することが、学生の学習経験、ウェルビーイング、学習環境の認識にどのような影響を与えるかは不明である。

介入:米国のある医学部で、コア・クラークシップの成績評価を優秀/合格/不合格から合格/不合格に変更した。さらに、学生が指導教員から形成的フィードバックを週2回得られるようにした。

コンテキスト:この質的研究では、コア・クラークシップ中の学生の学習と評価についての認識を探るために、半構造化インタビューを用いた。インタビューの質問では、モチベーション、ウェルビーイング、学習行動、チームダイナミクス、フィードバック、評価の変更に関する学生と指導者の態度などが取り上げられた。著者らは、動機づけ理論(目標志向理論と自己決定理論)に関連した感受概念を参照してテーマ分析を用いることで帰納的にデータを分析した。

インパクト:18名の学生が参加し、そのうち5名は優等生評定と合否評定のクラークシップ双方の経験を持つ学生であった。著者らは、評価へのアプローチの変化について学生が述べる中で、3つの主要なテーマを特定した:学生のクラークシップへの関与、ウェルビーイング、学習コンテキストの認識。

学生の関与のサブテーマには、パフォーマンスではなく患者ケアに対する内的動機づけ、学習に対する主体性の感覚(学習の優先順位を設定する能力、フィードバックを求めたり受け取ったりする能力、学習のリスクを受ける能力、指導医と違う意見を具申する能力を含む)、同僚やチームメンバーとの協働関係が示された。

ポジティブウェルビーイングは、ストレスの少なさ、チームメンバーとの信頼感、身体的健康の優先、個人生活への配慮などが特徴であった。

学習コンテキストのサブテーマには、合否判定によるクラークシップはコンテキストが多様であることで公平性と公正性への懸念が緩和されることの認識、研修医や一部の医局員からの成績評価の変更への支持、将来のストレスと研修選択を取り巻く意味合いが含まれていた。

教訓:学生は、優等評価からフィードバックの増加を伴う合否評価への移行を、学習への関与、内的動機付け、ウェルビーイングをサポートするものであると認識している。ウェルビーイングを促進する要因として学生のコントロール感があるが、これは学生が他者に好印象を与えることに集中する必要がなく、学習の機会、指導、建設的なフィードバックを求めることができることによって達成された。このようなアセスメントの変化の重要性については、継続的な評価が必要である。

用語確認:感受概念sensitizing concept

シンボリック相互作用論の方法論の概念である。H・ブルーマーによると、『感受概念(sensitizing concept)』とは、経験的な事例にアプローチする際に、どこを参照するとか、どのように接近するかというような概括的な意味を与えるものである。ブルーマーは、このような感受概念を『定義的な概念(definitive concept)』の対極に置いた。定義的な概念とは、属性もしくは固定された基準尺度に関する定義によって、対象の類に共通する性質を精密に指示するものである。定義的な概念が、何を見るかについての指示を与えるのに対して、感受概念は、単にどの方向で見るかを示唆するにすぎない。感受概念とは、個々の経験的な特性を捨て去ってしまうのではなく、それに取り組まなくてはならない必要性から要求されるものである。それは主に、量的データの分析よりも、日記、手記、手紙、記録などの質的データを使用し参与観察法をもちいる。

https://kitiko.hatenadiary.org/entry/20051208

感想:クラークシップを,成績優秀者を表彰する評価から,評価は合否判定のみにして形成的フィードバックを主体にするように変更したことで,①学生が主体的に関与するようになった,②過度に評価の目を気にしなくて済むのでウェルビーイングが向上した,③学生が公正だと感じるような環境になったことを示した論文.実践を論文に落とし込むという意味で非常に参考になるいい論文だと思う。本文のMethodで,どのように質的研究を行ったかの描写も非常に具体的でわかりやすい.テーマもいちいち納得できるし、すぐに応用、実践可能である。こんな論文を書きたい。

2021年1月2日土曜日

学生の自律性が多職種協働教育の鍵となる


Ganotice FA Jr, Gill H, Fung JTC, Wong JKT, Tipoe GL. Autonomous motivation explains interprofessional education outcomes. Med Educ. 2020 Nov 28.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/medu.14423?af=R

目的

専門職間教育(IPE)は一見すると,理論がない、あるいは理論化されていないように見えるが、この量的研究は、自己決定理論(self-determination theory: SDT)を用いて、学生の行動や協働のアウトカムを説明できる動機付けのメカニズムを明らかにしようとする。SDTは様々な文脈で研究されてきたが、IPEへの適用可能性についてはまだ十分な研究がなされていない。本研究では、自律性、能力、関連性といった感覚に対する学生の求めを充足することがどのようにIPEの望ましい成果に結びついているのかを探ることで、IPEにおける学生の動機づけを理解するための新しい視点を統合することを目的としている。

方法

定量的手法を用いて、IPEでの抗凝固療法モジュールを履修している香港の医学生、看護学生、薬学生,計255名を対象とした。学生には、post-testの一環として、心理的必要性満足度調査票(Psychological Need Satisfaction Questionnaire)などの回答を求めた。

結果

自律性の感覚は、行動のアウトカム(集団的献身、行動的エンゲージメント)と協働のアウトカム(チームの有効性、目標達成)に対する最も強い正の予測因子であった。これらのアウトカムには、行動的エンゲージメントを除いて、プログラムレベルでの有意な差は見られなかったが、看護学生は医学生よりも高い認識を持っていた。

結論

IPEにおける行動と協働のアウトカムを理解する上で、SDTが意味のあるフレームワークであることを実証することができた。本研究の主な理論的貢献は、行動のアウトカムのばらつきを説明するのに学生の動機付けに拠ることができるという点にある。すなわち、自律性の感覚が、チームの有効性、集団的献身、行動的エンゲージメント、目標達成を一貫して予測していた。保健医療学生のサンプルにおける自律的動機付けは、行動のアウトカムを説明することができる。理論的、方法論的、実践的な意味合いが議論されるべきである。

感想

IPEの学習効果は学生の自律性の感覚から正の影響を受けるということを量的に示している研究.量的研究では測定するべき因子をどのように決定するかが肝だと痛感した.自己決定理論は学習者の動機付けについて学習する際に必ず出てくる理論であり, 自律性autonomy, 能力competence, 関連性relatednessが動機づけに影響するというものだが,この3要因を説明変数として研究に使うことができるというのが発見だった.

SDTの3要素については,既存の質問紙を使用している.アウトカムについては,以下の質問をLikertで測定している.

どうしてこの4要素が出てきたのかについてははっきりとした記載がなかった.お決まりの項目なのだろうか.

チームの有効性(Team effectiveness):the perception of team members about the performance of the team after the intervention which is the IPE (e.g., I am satisfied with the performance of my team.”).

集団的献身(Collective dedication): Engagement Questionnaireを使用している.4項目 (e.g., My group was involved in the task”)からなる.

行動的エンゲージメント(Behavioural engagement):Delaware Student Engagement Scaleを使用している.

目標達成(Goal achievement) the perception of the team members about how the program enabled them to attain interprofessional competencies. プログラム特異的な質問紙を使用している(e.g., “After attending the Online IPE, to what extent are the following competencies developed in you as future health professionals: respectful communication and collaborative decision making).

なお,行動的エンゲージメントについては以下の通り.:論文(DOI: 10.6018/analesps.31.3.176981)から下に引用.

Behavioral engagement has been defined as interactions with the  academic  setting  that  are  active,  goal  driven,  flexible, constructive,  and  persistent .  According  to  these authors,  some  indicators  of  behavioral  engagement  in  academic  contexts  are planning,  effort,  on-task attention,  concentration,  hard  work,  persistence,  time expended,  attendance,  voluntary  participation,  task  involvement,  and follow classroom  rules  and  norms.  Frequently,  this  behavior  was accompanied  by  emotions  such as  enthusiasm,  interest, enjoyment, satisfaction, pride, and vitality.



専門クリニックによる多職種連携はCOPDの患者アウトカムを改善させるのか


Peckens S, Adelman MM, Ashcraft AM, Xiang J, Sheppard B, King DE. Improving Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD) Symptoms Using a Team-Based Approach. J Am Board Fam Med. 2020 Nov-Dec;33(6):978-985. 


背景

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、米国における死亡原因の第3位であり、ウェストバージニア州が追っている疾患負担(disease burdon)は不均衡に過度なものである。複雑なCOPDの事例は、標準的なプライマリケア従事者の診察では管理が困難な場合があり、薬物治療のレジメンは各患者に合わせて個別に調整する必要がある。

方法

このようなニーズに対応するため、ウェストバージニア大学家庭医療学部門では、チームに基づくアプローチを用いてCOPD患者を治療する多職種協働のCOPD専門クリニックを開設した。この専門クリニックの有効性を評価するために、後方視的カルテレビューを実施し、クリニックでの治療を開始する1年前,半年前,半年後,1年後それぞれの時点で,患者の入院、救急受診、緊急受診の回数を測定し,クリニックの影響を評価した。また、患者の自己申告によるニコチン依存症、COPDの症状、および喫煙行動に対するクリニックの影響も検討した。2015年2月から2019年2月までにクリニックを紹介され、少なくとも1回の受診があった患者を本研究の対象とした(n=149)。

結果

COPD専門クリニックで治療を受けた患者は、クリニックで治療を開始してから6カ月後あるいは1年後の時点で、それぞれ6カ月前あるいは1年前に比べて、入院回数と救急受診回数が有意に少なかった。また、このクリニックで治療を受けた患者は、1日あたりの喫煙本数が有意に少なく、喫煙者と自認する人が有意に少なく、COPDの症状が有意に減少したと報告された。

結論

アパラチアの学術的プライマリケア診療所は、多職種チームに基づくアプローチが COPD 患者の健康改善に効果的であった。


感想

地域における健康問題を同定→介入すべきポピュレーションを割り出す→実装→評価という,家庭医療学研究の王道を攻めた論文.本文を読むと,かなり濃密な多職種でのケアが実施されています.自分たちがしていることをちゃんと研究にするという姿勢が大事.

2021年1月1日金曜日

touchがもつ意味

 

今年から,ほぼ毎日,家庭医療学と医学教育学の論文を紹介します.

いつまで続くやら.


Kelly M, Nixon L, Rosenal T, Crowshoe L, Harvey A, Tink W, Dornan T. Being Vulnerable: A Qualitative Inquiry of Physician Touch in Medical Education. Acad Med. 2020 Dec;95(12):1893-1899.

https://journals.lww.com/academicmedicine/Abstract/2020/12000/Being_Vulnerable__A_Qualitative_Inquiry_of.38.aspx

目的

効果的な非言語コミュニケーションは、共感的な行動や患者の転帰の改善と関連している。非言語コミュニケーションの一形態としてのtouchについては、医学教育において比較的未解明な領域である。本研究では、医師がtouchを用いてコミュニケーションを行った経験についての詳細な洞察を得て、これらの洞察がコミュニケーションスキルのカリキュラムをいかに生き生きしたものにできるかを検討することを目的とした。

方法

アクションリサーチの一形態であるcollaborative inquiryを用いた。カルガリー大学の経験豊富な指導医6名が2015年から2018年の間に8回会合を開き、臨床実習、教育、学習におけるtouchの経験を批判的に振り返った。データは、ミーティングの記録、個人の語りのアカウント、ロールプレイのデジタル録音から構成された。経験をそのまま研究する解釈学的現象学をガイドとして分析が行われた。

結果

「存在としてのtouch」と「リスクとしてのtouch」という2つのテーマが同定された。参加者は,患者とともに存在していることや患者とヒューマニティを共有していること,つまり患者と「一緒にいる」ことを示すためにtouchを使用していた.リスクは,touchにより起こる身体的な経験とは関係なく、むしろその社会的な意味と関連しており、ジェンダー、文化、関係性、文脈を介して解釈されていた。個々人の経験は様々に解釈できるものであった。参加者は、共感を表現するためにtouchによりコミュニケーションをとるという個人的な経験と、正式なカリキュラムの構造との間には,拮抗状態が存在すると表現した。状況をよく認識し,touchを繊細に使用することができるようになるための方法として、省察、ロールモデル、臨床でのデブリーフィングが提案された。

結果

touchは患者とコミュニケーションをとるための強力な手段であるが、非常に主観的なものである。誤解を恐れてtouchを避けるのではなく、その複雑さについての対話を促すことで、touchと,touchが共感を伝える可能性について,よりバランスのとれた理解が促進され、医師がtouchを使用する際のリスクをより効果的に管理できるようになるだろう。

感想

テーマが面白い.collaborative inquiryについて,さらに深めて学習する必要がある.