2020年4月30日木曜日
7日間ブックカバーチャレンジを1日でやってみる
SNSで「7日間ブックカバーチャレンジ」というトレンドがあるようです.
読書文化の普及に貢献することを目的として,好きな本を1日1冊,7日間投稿します.
本についての説明は必要なく,表紙画像だけを投稿し,投稿ごとに友達を1人指名し参加を依頼するようです.
趣旨に賛同いたしますので,友達指名なし,一気に7冊紹介という形で,このブログ上で行います.ブログなので,説明文を簡単に添えます.
1.オリガ・モリソヴナの反語法
推理小説の要素があり,ページをめくる手が止まらなくなる本です.
ソ連支配下の冬の時代に,過酷な状況でしたたかに生きる市民の逞しさ,生命の強さがあふれ出ています.
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2.アムリタ
よしもとばななが好きになったきっかけの本です.
よしもとばななの小説は死と霊で満たされています.だからこそ美しい世界を描くことができるのだと思います.
3.水俣が映す世界
医師として人々の暮らしと社会をどう見るのか,最も影響を受けた本です.
私にとって,生き方,考え方のバイブルです.
「苦海浄土」も私にとって大事な本です.
4.切りとれ,あの祈る手を
本を読むということの本当の意味がわかります.しびれます.
命がけで本を読むとは何か.本とともに革命を起こすとは何か.
5.沈黙
有名どころから1冊.もはや古典的傑作です.
神はいるのか,ここまで考え抜く著者の覚悟が伝わってきます.
6.プライマリ
巻頭言を初めて読んだときに,揺れていた心がはっきりと定まり,地元で家庭医になることを決めました.
読み返すたびに新たな発見があります.
7.The Health Gap
COIはバリバリあります.でもやっぱり最後はこの本です.
2020年4月27日月曜日
経験に基づく学習(ExBL)について part 2
引き続き,Medical Teacher誌に掲載された,経験に基づく学習(ExBL)の解説論文を訳します.
Tim Dornan, Richard Conn, Helen Monaghan, Grainne Kearney, Hannah Gillespie & Deirdre Bennett (2019) Experience Based Learning (ExBL): Clinical teaching for the twenty-first century, Medical Teacher, 41:10, 1098-1105
国際的な医学教育のトピックの重要性
このガイドは、指導者の下で臨床現場の経験から医学生が得る学びについて述べている。このような経験を得る機会は急速に変化しており、より多くの学生、より多くの専門にその機会がある。臨床現場では技術の細分化が急速に進行しており、業務量は多くなっているのに労働時間は短くなっている。学生が臨床チームと接する時間はますます短くなっており、そのチームも分節化されている。これでは臨床で得たものを統合するのは困難である。一方、患者安全のアジェンダにより、ヘルスケアシステムの中で学生がケアを提供するのはますます受け入れがたくなってきている。学生が患者のケアに責任を取るようになる前に能力の質を担保しようとする動きにより,能力に基づく(またはアウトカムに基づく)医学教育(CBME: competence-based/outcome-based medical education)と評価へとカリキュラムが変革されてきた(Harden et al. 1999).同時に,シミュレーションが医学教育の重要な光景となってきている.このようなトレンドにより,臨床現場での経験の重要性を疑問視する者もでてきた.
学生を訓練し評価するだけでは,学生を有能な医師にするには不十分である.学習の文脈(コンテクスト)も学習内容(コンテンツ)と同じぐらい重要であるからだ.職場学習の専門家の推定によると,臨床家は知識の80%以上を「現場で」獲得する.そうやって獲得される一連のスキルはcapabilityと呼ばれており,competenceとくらべ使い勝手が良いが標準化が困難である(Neve and Hanks 2016).現場での学習は,医学教育において必然的に重要な位置を占める.
実践におけるポイント
・本稿「21世紀の臨床教育」は,教育についての文献ではない.学生が臨床現場で実際の患者から学ぶにあたっての支援について述べている.
・ExBLを推し進めるスキルとは,学生や患者などが危険にさらされないように調整しながら,学生が自分のコンフォートゾーンの外に踏み出す背中を押すものである.
・学生の参加は自然と発生するものではない.学生は,自分たちを歓迎してくれ,しっかりと組織されている場であり,医師が自分の経験を共有してくれるような学習環境には,身震いして参加するものである.
・まとめると,実際の患者からの学びになる臨床現場に支援を受けて参加することで,医学生は,安全で,有能で,思いやりのある医師になるアイデンティティとcapabilityを身に付け,生涯学習を続けることができる.
能力を獲得するために必要なのは,学習者が心理的安全を感じることである.しかし,過度に安全を感じるようではいけない.学習者は,自分のコンフォートゾーンの外に一歩踏み出すことで学びを得るからである.シミュレーションでの研修環境においては,学習者がバランスの取れた課題と支援を経験できるように心理的安全のレベルを調整するのは比較的簡単である.しかし臨床現場での学習では難しい.患者に対する治療が予測不可能な課題を引き起こし,安全な環境が突然安全でない環境に様変わりしうる(逆もしかり)からである.ExBLは,臨床医が課題と安全のバランスをその場に応じてどのように取れば,学生と患者の相互利益のためになるのかを詳細に明らかにすることで,学生が臨床現場で学習する助けとなる.これは学生にとって,どのようなタイプのカリキュラムであっても,患者や臨床に接するあらゆる時間を最大限活用するために有用である.
2020年4月23日木曜日
胸膜炎で片麻痺?
以下、個人情報を大幅に変更して事例を描述しています。
この数か月で、不全片麻痺を主訴に救急受診→胸膜炎による疼痛が原因だった、というケースに複数であいました。
いずれも、なんらかの機能異常があり、疼痛の存在をはっきり自覚、伝達できないという状況がありました。
主訴は、箸を落とした(腕を動かすことで胸膜痛が発生し痛みのため動かせていなかった)、歩けない(足を動かすことで胸膜痛が発生していた)などでした。
いまいちどう調べていいかよくわかりませんが、同様の報告はあまりなされていないようです。
先行文献をもう少し調べてみます。
2020年4月20日月曜日
経験に基づく学習(ExBL)について part 1
昨年になりますが,Medical Teacher誌にAMEE guideとして,経験に基づく学習(ExBL)の解説論文が掲載されていました.
学生が臨床現場で卒前研修を行うにあたり,非常に重要な論点が解説されています.
昨今は市中病院や診療所でも学生が卒前研修を行うようになっているため,多くの方にとって必要な文献になると思います.
というわけで,いつものごとく何回かにわけて全訳します.
リンク先から全文フリーで読めますので,気になった方はどうぞ.
Tim Dornan, Richard Conn, Helen Monaghan, Grainne Kearney, Hannah Gillespie & Deirdre Bennett (2019) Experience Based Learning (ExBL): Clinical teaching for the twenty-first century, Medical Teacher, 41:10, 1098-1105
経験に基づく学習(ExBL):21世紀の臨床教育
要約
問題について:臨床の現場では,新人の医者が自分では安全にマネジメントできない状況に遭遇してしまうことはよくあることだ.この事態は,患者の危険と,新人の医者や他の臨床家へのストレスを招く.現場にたつ準備ができていないということがこれまでずっと問題となっており,カリキュラムが徒弟制からアウトカム基盤型デザインに移行してもなお残存している.支持的な学習環境で臨床経験を積み学びを得ることで能力が培われるのであるから,驚くべきことではない.患者の治療内容を担保し,研修医の健康を保証するために,医学生への臨床現場に基づく教育の方略を,直ちに徹底的に点検する必要がある.
このガイドについて:経験に基づく学習(ExBL)は,臨床現場に基づく学びを育む21世紀の教育方略であり,現時点で最良の理論とエビデンスから導出されたものである.ExBLは,医学生が現場での経験から学びを得るために必要な能力を明確に示すものである.どのように医師が振舞えば学生が経験を得る助けとなるのかを例示するものである.省察により本物の患者からの学びが能力やアイデンティティの獲得にどのように変換されるのかを説明するものである.望ましい学習環境の特徴を同定するものである.このガイドは、医師,学生,placement lead,教育責任者やその他ステークホルダーに,新人医師の能力をできるだけ高める方法を指南するものである。ExBLは医学生の臨床現場に基づく学びの包括的なモデルであり、コンピテンシーに基づく教育に足りない点を補い、安全かつ効率的で思いやりのあるケアを行う準備を新人医師に提供する.
2020年4月16日木曜日
滴状乾癬 知ってました?
ゆるく投稿する木曜日です。
MKSAPで知った、私にとって初見の知識。
滴状乾癬gutatte psoriasisについて、名前しか知らなくてillness scriptを把握していませんでした。
小児~青年期で好発。
小さくて痂皮を伴う(乾癬っぽいですね)皮疹が体幹優位に出現するが、短期間で消退することが多い。
そして、多くは先行感染、とくに溶連菌感染により惹起される。
溶連菌はいろいろ起こすのですね。
腹痛や下痢などの消化器症状を呈することが多い、という特徴もあわせて覚えておくのもよいかもしれません。
2020年4月13日月曜日
高齢者の転倒予防(NEJM Clinical Practice)
少し前のNEJM Clinical Practiceで高齢者の転倒予防が扱われていました.
Prevention of Falls in Community-Dwelling Older Adults
N Engl J Med 2020; 382:734-743
家庭医療専攻医レベルなら全て押さえておくべき内容ですので,ざっくりまとめます.
・高齢者の10%は年2回以上転倒している
・骨折などの重大イベントは転倒の10%で起こる
・転倒した21-39%が転倒を恐れる.転倒のおそれは活動量低下につながる.
・転倒は内因性リスクと外因性リスクがどちらも関与する.
・内因は平衡感覚障害,歩行問題,視力低下,起立性低血圧など.
・外因で最も大事なのは薬剤.多剤併用はリスク.抗精神病薬,抗うつ薬,ベンゾジアゼピン,ループ利尿薬などでOR↑
・環境の評価,認知機能低下,うつ症状の有無確認も必要
・リスク高い患者への骨粗鬆症治療も忘れずに.
・運動は可能な限り推奨.室内でも集団でもよい.
・ただし歩行だけだと転倒予防効果なし.
・無理なく続けられるように.下の図は指導の一例.
・介入はいろいろ多方面から行ったほうが良い.
・家の環境を聴取する(風呂場に椅子があるかなど).
・65歳以上では1-2年に1回は眼の検査をすべし.診療所でも視力検査ならできる.
・多焦点レンズは屋外では転倒の危険性が高まる.屋外活動が多い場合は単焦点に.
・Mini-CogやPHQ-9による認知面・精神面での評価を.
・認知機能障害は転倒のリスクとなるが,コリンエステラーゼ阻害薬もリスクになる.
・抑うつは転倒のリスクとなるが,抗うつ薬もリスクになる.
・なので投薬する前に非薬物的治療を十分検討する.
・その他,不整脈,頸動脈洞過敏症,足の問題,聴力,筋骨格性疼痛,尿失禁などの評価介入も転倒予防に資する可能性がある.
・ビタミンDを転倒予防目的に処方するのは現時点では推奨されない.
(転倒予防効果を示す研究もあったが,システムレビューで効果は否定的となった)
2020年4月9日木曜日
クモ膜下出血のnico-nico sign
知っていましたか?
私は知りませんでした。
クモ膜下出血(SAH)は発症後しばらく経つとCTの感度が少し低くなります。
CTであきらかな出血がない場合、臨床的に疑わしければ髄液検査に進むのが基本です。
SAHでは水頭症を伴うことがあるので、画像上あきらかな出血がなくても水頭症の早期所見があればSAHの可能性を疑うことができる、という発想です。
そして側脳室下角の対称性拡大が最も早期に起こるため、これを拾うわけです。
両側側脳室下角が拡大している像が、笑顔の口に見えるので、nico-nico signというわけです。
原論文だと、SAHの66%にこのサインが見られた一方、コントロール群では2%にしか見られなかった、とあります。
というわけで、nico-nico sign。覚えました。
感度は高くないこと注意です。
あくまでの画像で出血がないSAH診断の「助けとなる」くらいの位置づけが望ましいと思います。臨床的に疑いが強いなら、やはり腰椎穿刺を躊躇しないほうがよさそうです。
nico-nico sign 画像引用: https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/13637 より
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