2014年11月5日水曜日

OECD医療の質レビュー2014



2014年11月5日に、OECDが日本の医療の質を評価したレビューを公開しました。

http://www.oecd.org/els/health-systems/ReviewofHealthCareQualityJAPAN_ExecutiveSummary.pdf

ものぐさな僕は、p33から始まる日本語で書かれた箇所を流し読みしただけなのですが、「プライマリーケア」に関する記述の占める割合がとても多いですね。

末尾に「日本の医療の質を改善するための提言」として、「特に、日本は以下のことを行うべきである。」とあるのですが、それは以下の4つ。

1.医療の質の管理と提供の全般的に強化する(原文ママ)
2.プライマリーケアの明確な専門分野を確立する
3.病院部門における質の監視と改善を向上させる
4.質の高い精神医療を確保するよう努力する



レビューでは、
   
   日本のプライマリーケアの構成は、多くの意味でこれまで有効であった。

としたうえで、

  ・社会人口的な変化は、人口がますます高齢化することを意味しており、多くの人が複数の複雑な医療ニーズを抱え、一部は健康面の弱さや社会的孤立に悩む。
  ・財政的圧力が、入院治療から地域社会でのケアへ、医療の方向転換を促している。
  ・特に高齢者の受診率が高く、一部の病院のデータでは、計画外の再入院率が増加していることが示されている。いずれも、地域社会のサービスが、適切なケアの提供に四苦八苦している可能性があることを示唆している。

ことを問題点として挙げ、その対処策を

   長期的に一貫したケア拠点を提供でき、複数の医療ニーズを有する患者に対するケアを個々に合わせて調整でき、患者の自己教育及び自己管理を支援できるような、地域社会のケア制度を備える必要性が示唆される。

と述べています。



また、プライマリーケアのありかたについては、

   プライマリーケアの専門分野の主な機能が、メンタルヘルスケアのニーズを含む複数の複雑な医療ニーズを有する患者に対する包括的なケアの提供であることが重要である。

としています。



患者を要素に分解するのではなく、きちんと全体を診て、いろんな専門家(もちろん医師以外も含む)と連携をとってmanagementするような仕組みをきちんと整えなさい、ということですね。

これからのプライマリーケアは、単一の診療所なり医療機関で完結するケアではなく、言ってみれば指揮者のような役割を果たしていくことになりそうです。

そして、プライマリーケアを担う人材を育成するために、医学部に部門を設立して、きちんと専門分野として確立させなさいとも指摘していますね。いままでみたいに「臓器別専門を極めたらプライマリーケアくらいできちゃうさ」では通用しません、と。



プライマリーケアの機能の中に、「メンタルヘルスケアのニーズを含む」とあえて記載しているのもポイントかな。このレビューの提言の4つ目は、「質の高い精神医療を確保するよう努力する」でした。

   日本における精神疾患に関する偏見が、メンタルヘルス専門施設に援助を求めることを思いとどまらせている可能性が考えられる。

確かにその通りですよね。



以前、とある精神科の先生から頂いた言葉を思い出しました。

   たとえば、癌になったひとは、心配してもらえて、大事にしてもらえる。

   だけど、精神疾患にかかった人は、厄介者にされて、差別を受ける。

   僕は、資本主義の世の中であっても、教育と医療だけは平等であるべきだと思っている。

   だから僕は、精神科医になろうと思ったんだ。



日本では、精神疾患の患者さんは社会から排除されてしまうようです。
有名なのは、森川すいめい氏の研究。池袋の路上生活者の4-6割が精神疾患を有していました。

https://www.jspn.or.jp/journal/symposium/pdf/jspn107/ss372-378.pdf



最近では、2014年11月2日に名古屋駅周辺で行われた調査で、路上生活者の3割に知的障害の疑いがあることがわかりました。(写真は11/3付毎日新聞)






OECDのレビューでは、プライマリーケア専門医も精神科医と協力してメンタルヘルスを向上させていくよう提言されています。