問題篇をまだ読んでいない方は、さきにこちらを読んでください。
Case 36-2014
An 18-Year-Old Woman with Fever, Pharyngitis, and Double Vision
扁桃から細菌が侵入、耳下腺や眼窩など頭部組織に至ったのでしょう。
開口障害が出た時点で対応しておけばここまで重症にはならなかったのかも。
やはりおそるべし開口障害。
伝染性単核球症の合併症であるVincent's anginaがまず想起されました。
私がはじめてこの疾患を知ったのは
生坂政臣先生の「見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール」でした。
以下、この本からの引用です。
紡錘状桿菌、スピロヘータなどの嫌気性菌を起因菌とし、健康状態不良、齲歯、口腔内不潔などが誘因となって、主に若年者に発症する咽頭炎である。
合併症として、咽後膿瘍から縦隔膿瘍への移行のほか、Fusobacterium necrophorumが起炎菌の場合に生じることのある、敗血症性血栓性頸静脈炎からの転移性肺化膿症や咽頭閉塞が知られている(Lemierre's disease)。
いずれの合併症も致命率が非常に高いので、Vincent's anginaを疑った場合は抗菌薬による入院治療の適応となる。
硬膜の肥厚からは、髄膜炎、もしくは脳肥厚性硬膜炎が考えられます。
脳肥厚性硬膜炎は、頭痛を初発として、脳神経症状、脊髄根症状などがみられる疾患であったと記憶しています。
特発性もありますが、感染症や血管炎、膠原病などによる続発性もあります。
たしかIgG4関連疾患との関係も聞いたことがあります。
明らかな血栓はないようですが、
海綿動脈洞血栓症は頭部領域の感染症で考える必要があると思います。
血糖が高い+頭部感染症=ムコール症
という単純な方程式もありますが、本例では違うでしょう。
とここまで考えて、続きを読んでいきます。
…なるほど、だいたい当たっていました。
FINAL DIAGNOSISは以下の通り
Fusobacterium necrophorumによるLemierre症候群、海綿静脈洞血栓症、頸動脈血栓性動脈炎、耳下腺膿瘍、骨膜下眼窩膿瘍
生坂先生のすごさを改めて実感しました。
本文中に、初めて聞いた病名が出てきました。
Gradenigo's syndrome
中耳炎が深部に広がり、錐体尖端炎が起きた状態を指すみたいです。
三徴は、中耳炎(耳漏)、外転神経麻痺、三叉神経痛とのことです。
本日のClinical Pearl
「なめてかかるな、開口障害!」