2014年11月29日土曜日

脳震盪(ハリソン問題集)



ハリソンの問題集を解き進めております。
知的好奇心をくすぐられます。





17歳男性。高校のフットボールの試合中に脳震盪を起こした。その時は、意識消失は起こさなかったが、約10分間の混乱が見られた。頭部画像検査は正常だった。その数週間後に診療所受診。事故の時からずっと続く頭痛と、時に起こるめまいを訴えている。母親は、患者が学校で集中力が続かず、最近落ち込んでいるように見えるのを心配している。事故の前まではもっと元気だったとのこと。身体所見は正常だが、感情の平坦化がいくらかある。(選択肢割愛)



例によってUpToDateで調べてみました。

Concussion and mild traumatic brain injury - SUMMARY AND RECOMMENDATIONS
を見てみます。


・ほとんどは予後良好である。

・受傷時には、短時間の意識消失や、明らかな混乱・健忘が生じる。神経学的な症状がわずからながらみられることが多いが、たいていは気づかれない。

・頭部外傷がある、または疑われるアスリートには、脳震盪の評価をすべきである。単純に見当識を尋ねるだけでは不十分で、SACによる評価をすべきである。


・意識消失があったり、症状が継続したりする患者は、救急受診して頭部CTを含む医学的評価をうけるべきである。


受傷を短い間隔で繰り返すと、急性で致死的な脳浮腫が起こりうる。また慢性的な神経精神症状も起こりうる。

・他の後遺症として、脳震盪後症候群、頭痛、てんかん、めまいがある。

アスリートは脳震盪を起こしたその日は試合に戻るべきではない。薬物治療が終わり症状がなくなるまで試合はするべきでない。小児、青少年の場合は更に厳格にすべきである。



この症例は脳震盪後症候群だと考えられます。
UpToDate - Postconcussion syndromeによると、自然史は以下の通り。


症状は最初の7-10日が最も強く、1か月で改善していく。

多くは3か月のうちに治まるが、10-15%で1年以上続くかもしれない。



最近、フィギュアスケートの事故で話題になりましたね。

意識戻ったら大丈夫という迷信は、根性論とともにはびこっている気もします。



(追記) JHospital NetworkのClinical questionにて

スポーツにおける脳震盪の評価、復帰時期

についてわかりやすくまとめてありました。ぜひご一読を。