2014年11月17日月曜日
解答篇:NEJM Case 35-2014
問題篇がまだの方は、先にこちらを読んでくださいね。
Case 35-2014
A 31-Year-Old Woman with Fevers, Chest Pain, and a History of HCV Infection and Substance-Use Disorder
薬物使用中の31歳女性で、主訴は発熱・呼吸困難・胸痛。
非常に高い熱が約1週間続いています。
この情報だけだと、静脈注射で菌血症というのが考えやすいですね。
HIV感染のハイリスク群だと思います。
HCV感染ということで、もし肝硬変に至っているのなら、
SBP(特発性細菌性腹膜炎)が鑑別に上がりますが、
今回はそうではないみたい。
もちろん感染症以外も考える必要がありますが。
既往歴や社会歴は、非常に興味深いのですが、
鑑別診断を狭める情報には乏しいですね。
バイタルサインだけではSIRSの基準は満たさず。
結局、WBCも12000未満なのでSIRSではないですね。
ただし、脈拍111bpmは、体温37.1℃(解熱薬が効いたのかな)では説明できないです。
心雑音がありますね。
Rivero-Carvallo徴候はないようです。これがあれば右心系の雑音をより強く示唆します。
胸部X線、CTで、結節が散在しています。
なかには内部壊死に陥っている病変もありますね。
粟粒結核にしては結節が大きすぎます。
血行性になにかが飛んできたのでしょうか。
以上より、最も可能性があるのは感染性心内膜炎でしょうか。
関節炎も説明できますし。
静脈注射から菌が侵入したのでしょう。
鑑別診断としては…
あまり思い浮かびませんが、
ヒストプラズマやブラストミセスなどの真菌症がちらっとよぎりました。
ここら辺の疾患は、詳しくは知らないです。
と、ここまで考えたので、Caseの続きを読んでみましょう。
…ううむ、診断は感染性心内膜炎で間違いなかったですね。
三尖弁に疣贅が付着していたようです。
このCaseでは、しっかり背景疾患をみることが強調されていました。
じつはこの患者さん、最初の入院では、感染性心内膜炎の治療は受けたのですが、
薬物中毒についておざなりな介入しかされず、
そのため、退院後の抗菌薬治療もうまくいかなかったようです。
感染性心内膜炎の治療だけでなく、
薬物中毒の治療もしっかりおこなうことが大事である。
あたりまえのことですが、
鑑別診断の勉強ばかりしていると抜け落ちてしまう視点ですよね。
私も、感染性心内膜炎の診断がついた時点で
「これで一丁あがり!」
という感じになってしまいました。
Caseの最後に、患者さん自身のことばが収録されています。
常に、患者さん全体をみる視点を身につけたいものですね。