2014年11月26日水曜日

無料定額診療とその課題



朝日新聞の11/23付の記事で、無料定額診療が取り上げられていました。


更に詳しいデータについては

「リハ医の独白」というブログのこの記事にあります。



無料定額診療を行うためには

事前に都道府県に届け出が必要です。

定めた基準を満たした場合に受理されます。


患者が経済的に困窮しており、医療費を支払う余裕がないと施設が認めたら

医療費の窓口負担分が全額または一部無料になります。


全額免除の基準は

収入が生活保護基準以下である

としている施設が多いのではと思います。


国民皆保険を謳っている日本ですが、

厚生労働省の発表によると

国民健康保険料未納世帯は372.2万世帯

該当世帯の18.1%が未納となっています。


無保険となり医療にかかることができず

亡くなってしまう方もいるようです。

こちらは2013年の調査。

調査報告は2005年分から読むことができるので、良ければ。


無料定額診療は

このように経済的困窮状態に陥った時の

セーフティネットとして働いていると考えられます。


社会資源を有効に活用し

患者の生活を支えていくのも

家庭医・総合診療医の力の見せ所ですよね。



無料定額診療の問題点としては

・免除となる窓口負担分については病院の機会損失となる

・該当施設でしか適応されないので、制度のない他病院への転院ができない

薬代は自己負担免除にならない

などが挙がります。


私の数少ない実習経験でも、上記の問題にぶつかったことがありました。

路上生活で肺がん末期、皮膚にまで多発転移している方を実習で受け持ちました。

実習先の病院は無料定額診療を行っていたのですが

痛みどめの代金をどうするか非常に困りました。

また、診断をする際に

肺結核との鑑別のため専門の病院に受診が必要でしたが

ここでの医療費は全額自己負担となっていました。


高知市には独自の制度があり

無料低額診療の決定後14日以内に発行される処方箋に限っては

薬代も患者負担分は市の補助になります。


やはり、薬代の負担も軽減されないと

医療が必要な人への制度には真にはならないのでは、と思います。


そもそも、無料定額診療は、半ば死文化していた法律の文言を実体化させたもの。

たとえば、生活保護がまともに機能していれば

生活保護世帯の医療費は無料なはず。

無料定額診療に頼る必要のない制度設計が求められるのではないか。

これが、ここまで書いてきて私が得た結論でした。