AFPのこの記事は,必読だと思います.
医療者が患者の意向を勝手に推測し,やさしさと見せかけて尊厳をうばうことになってはならないと思います.
Table 1の内容が非常に価値の高いものですので,以下に訳します.
Patients with Disabilities: Avoiding Unconscious Bias When Discussing Goals of Care
Am Fam Physician. 2017 Aug 1;96(3):192-195.
Table 1 障害のある患者の治療目標を議論する際によく陥りやすいコミュニケーションのピットフォール
【凡例】
〇無意識のバイアス→支持的コミュニケーション
「無意識のバイアスの例」
→支持的コミュニケーションの例
〇同情→尊敬
「このかわいそうで不運な患者はこんな病気になってしまって…」
→スミス氏は56歳の男性で,車いすに乗り,患者の声を届ける活動を行っています.
「家族のお荷物になって頼りっきりになるなんていやなんでしょ」
→機能制限が新しく起きた場合,それに慣れるには時間がかかります.障害がありながら生活している人の話を直接聞いてみるのはいかがでしょうか.
〇放棄→つながりを保ち,深めていく
「私たちにできることは何もありません」
→あなたの場合,この治療はリスクの方が高いです.しかし,私は定期的にあなたを診察し,ケアを提供していきたいと思っています.あなたの望みは何でしょうか.必要なことは?恐れていることは?
「痛みが我慢できなくなったら呼んでください」
→痛みをチェックするためにお呼びしますね.その前に,緩和ケアチームにあなたを紹介します.支援団体とマインドフルネスを基盤としたストレス軽減教室があり,あなたも興味を持つと思います.
〇予後の誤り→専門知識と不確実性を共有する
「あと6か月以内の命です」
→あとどれくらいかはっきり分かる人はいません.障害がある場合,予後を正確に予測することはとりわけ難しいのです.ただ,あなたの状態だと,おそらくあと数年ではなくてあと数か月でしょう.
〇制度にがんじがらめ→家や地域を基盤としたサービス
「状態が悪化すれば,施設入所が必要になるでしょう」
→ソーシャルワーカーに相談しますね.あなたの時間を友達や家族と楽しむために必要な援助や在宅サービスを使えるように手助けしてくれます.
〇文脈なき介入→その人ごとの目標,リスク,利点の情報を提供する
「人工呼吸がないと死んでしまうとなったら,つけることを望みますか.」
「経管栄養で生命を長らえたいと思いますか.」
→筋力が衰えており,飲み込んだり息をしたりすることが難しくなります.誤嚥性肺炎の危険性を下げ,栄養状態を改善し,より元気になるために,経管栄養や在宅人工呼吸器を使うことができます.神経筋障害があり,在宅人工呼吸器を使って生活している人の話を聞いてみるのはどうでしょうか.
〇脱人格化→包摂
「アルツハイマー病はあなたの母親の記憶と尊厳を徐々に奪っていくでしょう」
→アルツハイマー病があってもよい友人または家族の一員でいるためのヒントをお伝えしますね.
〇弱っている患者の生命を低く評価する→能力を最大化するよう支援する
「障害が治らなくてもこの手術,治療を受けたいのですか」
→体力や移動能力がこれ以上損なわれないよう手術を行い,その直後から,あなたの回復に合わせて理学療法のスタッフが関わるようにします.入院あるいは在宅での日常生活動作を上手に行うためにできることをしていきましょう.
〇希望を奪う→希望と現実的なプランを共有する
「それは非現実的だ」
→そうなればよいですね!なんて素敵でしょう!その目標を心にとめたうえで,なんとかなりそうなことから計画を立てていきましょう.
〇自律性を尊重しない→意思決定を支援する
「誰が医療上の決定を行うの?」
→医療上の決定を行うのを手助けしてくれる信頼のおける支援者を指名したいですか.
「痛みを感じているのだろうか?」
→どのようなコミュニケーションが最善ですか.あなたのためにどんなことが私にできますか.