2016年5月22日日曜日

家庭医療について学生がよく抱く疑問とその回答 part2


今月のAmerican Family Physicianに

Responses to Medical Students' Frequently Asked Questions About Family Medicine

という題のレビューが掲載されていました。

前回の投稿からだいぶ時間が空いてしまいました。part2です。
Tableは訳出していません。原文がフリーで読めるのでそちらをどうぞ。



診療の射程はどうか、どんなキャリアを得る機会があるか

家庭医を目指すと、家庭医として特徴的な研修を受けることになる。急性疾患も慢性疾患も扱い包括的なケアを提供する、健康増進と疾患予防を行う、他の専門家と協同して治療を取りまとめるといった内容が含まれる。幅広い射程をもった研修を行い、家族や地域社会という文脈で患者中心の医療を実践し、ヘルスケアシステムの機能について理解を深めることで、どんな場所でも、どのようなセッティングでも対応できるようになる。家庭医が「多分化幹細胞」と評される所以である。
 大半の家庭医は臨床の最前線におり、救急対応や病棟でも医療を行っている。このようなセッティングでは、教育家リサーチの様々なキャリアを得る機会に恵まれている。教育は家庭医にとって重要なことであり、多くの家庭医が日常的に臨床の中で学生や研修医を教育している。また、レジデンシープログラムや大規模な学術機関といったアカデミックな場でのキャリアを選ぶ家庭医もいる。研究科学者になる人もいれば、臨床基盤型研究に参加して重要な®サーチクエスチョンにこたえるためのデータを提供する人もいる。家庭医療のキャリアの選択肢は幅広く、老年医学、思春期医学、緩和ケア、疼痛ケア、睡眠医学、救急医療、病院総合医、スポーツ医学、公衆衛生、国際医療、野外・災害救急など多岐にわたる。家庭医として得られる様々な機会についてまとめた短いビデオは、このサイトでみられる。http://vimeo.com/25152825


家庭医療の研修はグローバルヘルスを実践する足掛かりとなるか

 最高の健康を享受する権利は国境を超えた基本的人権である。その実現には、プライマリケアへのアクセスを確保するのが最善策である。エボラのような疾病のアウトブレイクは非常に目につくニュースであるが、いま大きな問題となっている疾患群は、発展途上国においても先進国においても、感染症から慢性疾患に移り変わってきている。しっかり研修を受けた家庭医は、小児、思春期、成人、産婦とあらゆる層に対応し、幅広い手技をみにつけているため、地球上のあらゆる場所で診療を行うのに最適である。これとまったく同じ能力が合衆国の中でも求められており、移民や難民を診療する際に必要となる。


家庭医療の研修について何を知っておく必要があるか

 家庭医療レジデンシー研修の目標は、卒業するころには包括的かつ継続的なケアをあらゆる年齢層の患者に提供できるようになることである。このような教育での肝腎なポイントは、診療のその場その場で最良のエビデンスに当たり、情報を上手に患者に適応し、資源を効率的に活用する方法を教えることである。
 多くの場合、家庭医療レジデンシープログラムの研修期間は3年間であり、内科や小児科の研修と同じである。家庭医療プログラムの卒業生は、臨床現場に非常によく適応できる。少数ではあるが、研修の最適な期間を調べる長期間の国家的パイロットプログラムに参加しているレジデンシープログラムもある。このばあい、期間は4年間であり、特別なコースや上位の資格を得ることができる。


専門的関心を追求したい家庭医療レジデントは、どのような複合型レジデンシーやさらなるフェローシップ研修を受けることができるか

 家庭医療教育の目標は、プライマリケアを患者、家族、地域社会に提供できるように最適な研修をすることである。家庭医はそれぞれ特有の興味を持っていて、ジェネラリストの研修の一環として、あるいは追加する形で、その分野をさらに学ぶこともできる。複合型レジデンシーにおいて深く体験できたり、レジデンシー終了後にフェローシップを選択したりすることを望む場合もあるだろう。(Table 1)
 複合型レジデンシーのトレーニングプログラムは、異なった二つの専門医プログラムの要素をつなぎ合わせたハイブリッドである。しかし、全く別の専門が二つあるわけではなく、どちらの専門もより広く認定できるように制度設計されている。現在、家庭医とのダブルボードが可能な専門分野は4つある:家庭医療/精神科、家庭医療/救急科、家庭医療/内科、家庭医療/予防医療。これらの複合型レジデンシーの期間はたいてい4-5年である。
 内科/小児科プログラムは、家庭医療とは異なる。このプログラムは、内科と小児科を4年間のレジデンシーにまとめたものである。最近のレビューによれば、内科/小児科プログラムの大半は、分娩、婦人科、外科、皮膚科、整形領域の訓練を必要としていない。内科/小児科プログラム卒業生のおよそ1/3はサブスペシャリティ志向であり、これはプライマリケアとは異なるところである。
 アメリカ家庭医療学会(AAFP)が家庭医療のレジデントが卒業する際におこなった2013年の調査によると、約14%のレジデントがフェローシップやさらに上の学位を含めた追加研修を計画している。
 (以下、アメリカでの家庭医療研修の詳細な議論が続く。読みたい方は本文を。)


家庭医が行う手技にはどのようなものがあるか。

 家庭医は様々な手技を行うことがある(Table 2)。心負荷試験の7.5%、分娩の9.9%、筋骨格系手技の64%、皮膚系手技の79%は家庭医が行っている。家庭医は、診療の幅が多岐にわたっているほど、ヘルスケアの4つの目標をより達成できるようになる。