2021年6月20日日曜日

躁症状を評価する質問紙:PMQ-9

 Cerimele, J.M., Russo, J., Bauer, A.M. et al. The Patient Mania Questionnaire (PMQ-9): a Brief Scale for Assessing and Monitoring Manic Symptoms. J GEN INTERN MED (2021). https://doi.org/10.1007/s11606-021-06947-7


背景

測定結果に基づくケアは、双極性障害に対して有効な臨床戦略であるが、広く採用されている患者報告式の躁症状測定法がないこともあって、十分に活用されていない。


目的

患者報告による躁症状の簡易測定法の開発とその心理測定的特性を報告すること。


デザイン

双極性障害および/またはPTSDのスクリーニング陽性のプライマリケア患者1004名を対象に、2つの治療法を比較した無作為化効果試験で収集されたデータの二次解析。


参加者

双極性障害と診断され、テスト・リテスト・データが得られた114名と、精神科で双極性障害と診断され、9項目からなるPatient Mania Questionnaire-9 [PMQ-9]の評価を2回以上受けた179名の2つの分析サンプルを対象とした。


主な測定項目

内部信頼性,テスト・リテスト信頼性,同時性,変化に対する感度を評価した。最小重要差(MID)は,測定の標準誤差(SEM)と標準偏差(SD)の効果量で推定した。


主な結果

PMQ-9は,高い内部信頼性(Cronbach's alpha = 0.88)とテスト・リテスト信頼性(0.85)を有していた。躁症状測定法との同時有効性の相関は、Internal State Scale-Activation Subscaleで高く(0.70; p<0.0001)、Altman Mania Rating Scaleでは低かった(0.26; p=0.007)。長期的には、179名の双極性障害患者の1511回の受診時にPMQ-9を記入した。初回と最終回のPMQ-9の平均スコアは14.5(SD 6.5)と10.1(SD 7.0)で、治療中に平均スコアが27%低下したことから、変化に敏感であることが示唆された。MIDの点推定値は約3ポイント(2~4の範囲)であった。


結論

PMQ-9は,試験後の信頼性,同時性,内的整合性,変化に対する感受性に優れており,実用的な臨床試験において患者と臨床医に広く使用され,受け入れられた。抑うつ症状の測定法であるPatient Health Questionnaire-9(PHQ-9)と組み合わせることで、この簡便な測定法は、プライマリ・ケアやメンタル・ヘルス・ケアの現場で双極性障害の患者の測定に基づいたケアを行うことができるだろう。


感想

抑うつのPHQ-9は有名ですが,躁症状でもPMQ-9が臨床的に使えることを示した研究.スコアは以下の通りで10点がカットオフです.

(英語の質問項目の直訳です.)


この一週間で,以下の症状がどの程度ありましたか

(全くない:0点,数日:1点,週の半分以上:2点,ほぼ毎日:3点)

1. ほぼ,あるいはまったく眠らずにいるのに,元気である

2. すぐに腹が立つ

3. 活動的すぎると感じる

4. 後先考えずに衝動的に振舞ったり何かをしたりする

5. せかせかしている,あるいはせわしないと感じる

6. 気がすぐにそれる

7. しゃべり続けなければならないと感じたり,普段よりよくしゃべると誰かに言われたりする.

8. 議論を吹っ掛けたいと感じる

9. 思考があちこちに飛ぶ