2021年6月16日水曜日

処方カスケードの疫学

Read, SH, Giannakeas, V, Pop, P, et al. Evidence of a gabapentinoid and diuretic prescribing cascade among older adults with lower back pain. J Am Geriatr Soc. 2021; 1– 9. https://doi.org/10.1111/jgs.17312


背景・目的

ガバペンチノイドは、痛みを和らげるためによく処方される。ガバペンチノイドの副作用として確立されている浮腫の発生は、後に利尿剤が処方され、利尿剤に起因する有害事象にさらされるという、潜在的に有害な処方連鎖を引き起こす可能性がある。このような処方カスケードの頻度は不明である。我々の目的は、新たに腰痛を発症した高齢者において、ガバペンチノイドの新規処方と、その後の利尿薬の処方との関連を測定することである。


デザイン

母集団ベースのコホート研究


設定

カナダ,オンタリオ州


対象者

2011年4月1日から2019年3月31日の間に新たに腰痛と診断された66歳以上の地域在住の成人260,344人。


測定方法

腰痛診断後1週間に調剤された薬を用いて曝露状態を割り出した。新たにガバペンチノイドを調剤された高齢者(N=7867)と、新たにガバペンチノイドを調剤されなかった高齢者(N=252,477)を比較した。ガバペンチンを処方された高齢者とされなかった高齢者の間で、追跡期間90日以内に利尿剤が調剤された場合のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を比較した。


結果

新たにガバペンチノイドを処方された高齢者は、ガバペンチノイドを処方されなかった高齢者と比較して、90日以内に利尿薬を処方されるリスクが高かった(2.0% vs. 1.3%)。共変量調整後では、ガバペンチノイドの新規使用者は、ガバペンチノイドを処方されていない人に比べて、利尿薬を処方される率が高かった(HR:1.44、95%CI:1.23、1.70)。ガバペンチノイド新規使用者の利尿薬処方率は、ガバペンチノイドの用量が増えるにつれて増加した。


結論

我々は、潜在的に不適切で有害な処方カスケードの存在を証明した。ガバペンチノイドが広く使用されていることを考えると、この問題の集団ベースの規模はかなり大きいと思われる。利尿薬の不必要な使用を減らし、患者が新たな薬物有害事象にさらされるのを減らすためには、この処方カスケードに対する認識を高める必要がある。


感想

処方カスケードの疫学を調べるのはたいていこの方法がとられるように思います.腰痛→とりあえずリリカ→むくんだ→とりあえず利尿薬,というイマイチ診療は避けましょう.