2015年1月26日月曜日
聴覚障害者の健康管理
Emond A, Ridd M, Sutherland H, et al. The current health of the signing Deaf community in the UK compared with the general population: a cross-sectional study. BMJ Open 2015;5:e006668.
doi:10.1136/bmjopen-2014-006668
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イギリスで聴覚障害者の健康状態について研究した論文です。
概して、慢性疾患の有病率が高く、自分の健康状態を知らない人が多く、適切に治療されている人が少ない、ということがわかります。
たとえば、高血圧の有病率は、聴覚障害者で37%、一般人口では21%です(p<0.01)。
そして、自分は高血圧でないと申告した人のうち、本当は高血圧である人の割合は、一般人口では6%ですが、聴覚障害者では29%にのぼります。
自分が高血圧であると申告した人のうち、服薬しているのは51%(一般では62%)、服薬している人のうち血圧は140/90以下にコントロールできているのは42%(一般では80%)です。
つまり、高血圧の人が多いのに、自分が高血圧だと知らない人が多く、治療されている人は少なく、適切にコントロールされている人はもっと少ない、ということになります。
論文では他にも、心血管疾患、コレステロール、糖尿病、呼吸器疾患、うつ、喫煙、アルコールについて触れられています。程度の差はあれ、上に述べた傾向がそれぞれに見られます。
聴覚障害があることが、慢性疾患のリスクとなり、ひいては余命を短くさせていることが分かります。
個人の経験を述べますと、訪問診療の同行実習をした際に、聴覚障害がある一人暮らしの方のお宅に伺ったことがあります。
アパートの一室で、テレビの音を最大まで上げているため、玄関の前でもにぎやかな音が漏れ出ていたのを覚えています。
その方は、外出もほとんどされず、訪問の医療、介護が人と接する唯一の機会となっていました。
「健康の社会的決定要因」でいうところの、社会的排除、社会的支援をもろに感じた瞬間でした。
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