2015年1月3日土曜日

19歳女性:多臓器不全と紫斑(Mayo Residents' Clinic)



久しぶりに、Mayo Clinic ProceedingsのResidents' Clinicを読みました。


Googleのお気に入りバーに入れていたのですが、放置しておりました。
RSS readerの利用を決心したので、今後は月1回の更新をキャッチアップできるはず。

Residents' Clinicは、英文も平易で、内容も教科書レベルです。
扱う疾患も重要なものばかりなので、非常に学生向けです。
なにより無料で読めます。とっても気軽。

正直、NEJMのCaseは内容も表現も難しすぎますよね。
あの回りくどい英語表現はどうにかならないものでしょうか。



今回扱うのはこの記事です。

19-Year-Old Woman With Multiorgan Failure and Purpura
(December 2014 Volume 89, Issue 12, Pages 1718–1721)

患者は19歳女性。

昨夜からの疲労、気分不良、発熱、嘔気、嘔吐で救急来院。
点滴と制吐剤で帰宅したが、症状良くならず翌日も来院。
熱は38.5℃、検査でNa 132mmol/l、K 2.8mmol/l。様子見で入院。
ところが急激に状態悪化。血圧低下と無尿出現。酸素も必要に。
1時間のうちに、両下腿に発疹が出現。
ICUで挿管+昇圧剤投与。
体幹と四肢にわたるびまん性の斑状丘疹性紫斑あり、数時間のうちに壊死が進んだ。
意識は傾眠状態、巣症状なし。


インフルエンザかな~と思っていたらあっという間に最悪の展開に。
自分が担当医だったらと思うと冷や汗ものです。

診断は髄膜炎菌感染による電撃性紫斑病でいいですね。
臨床症状はTTPと似ていますが、TTPの皮疹が壊死することは絶対にないそうです(
it (= TTP) never leads to skin necrosis.)。

敗血症性ショックにDICも起こしているとのこと。
すぐに血培とって輸液と抗菌薬です。
腰椎穿刺もしなくては。一刻を争うので抗菌薬投与後すぐでも良いと思います。
Early goal-directed therapy(EGDT)に則って、と本文中に書いてあります。
Surviving Sepsis Campaignで有名になったやつですね。敗血症には大量輸液です。




EARLの医学ノートより引用)



ステロイドは、肺炎球菌髄膜炎には有用ですが髄膜炎菌髄膜炎には意味がないそうです。
初めて知りました。
壊死した皮膚組織はデブリが必要です。


電撃性紫斑病は髄膜炎菌血症の15-25%で起こり、死亡率50%です。
この場合、抗菌薬投与が1時間遅れるごとに死亡率が7.6%ずつ上昇していきます。恐ろしい。
濃厚接触者の予防投与(リファンピシンなど)もしっかりと。

電撃性紫斑病はプロテインC/S欠損症や他の感染症でも起こります。
原因の如何によらず、皮膚所見は急速に進行していきます。


~Clinical Pearl~

急激に進行する発熱と意識障害をみたら、皮疹にも注意する。継時的に!