2014年12月23日火曜日
急性心膜炎(NEJM Clinical Practice)
移動時間で、今週のNEJMのClinical Practiceを読んだので
忘れないうちに要点をまとめておきます。
本文を読みたい方はこちら。
Acute Pericarditis
Martin M. LeWinter, M.D.
N Engl J Med 2014; 371:2410-2416
先進国では80-90%が特発性(ウイルスが原因と思われる)
続発性の殆どは心障害後症候群、膠原病(特にSLE)、悪性腫瘍によるもの
心筋炎を繰り返す稀な遺伝疾患として、tumor necrosis factor receptor-associated periodic syndrome(TRAPS)と家族性地中海熱がある
心筋梗塞後に心膜炎を起こすことは少なくなったが、時に無症状の心筋梗塞に続発したと判明することがある
救急で非虚血性胸痛の5%を占める
大規模コホートによると、男性に多く(年齢調整尤度比1.85(1.65-2.06))、入院中の死亡率は1.1%(0.6-1.8%)
1/3が心筋炎を併発。その場合も長期予後は良い(excellent)
左室不全、心不全、不整脈はあまり起こさない
2/3で心嚢水貯留。ほとんどは少量で問題にならない
エコーで厚さ20mm以上の大量心嚢水は3%でみられる。
心嚢水のある心膜炎では、心タンポナーゼや収縮性心膜炎に注意
大量心嚢水、心タンポナーゼ、収縮性心膜炎は続発性で多い
70-90%でself-limited。初期治療に迅速に反応する
全体の10-30%は初期治療で良くなった後に再発する
再発の多くは1、2回だが、全体の5%以下で再発を繰り返す
心膜炎の診断は次のうち2つ以上を満たせばOK
・心膜炎と矛盾しない胸痛
・心膜摩擦音
・典型的な心電図変化
・ある程度以上の心嚢水貯留
前かがみで良くなり、僧帽筋縁に放散する胸痛は心膜炎っぽい
多くで感冒用症状が先行し、突然発症も少なくない
何回も聴診して心電図をとるのが大事
急激に貯留が進めば、X線で心シルエットが拡大していなくても心タンポナーゼが起こりうる
ST変化が一部の電極だけで心筋梗塞と紛らわしいことがある
PR低下だけが唯一の心電図所見のこともある
心膜炎の胸痛と紛らわしい他の疾患は以下の通り
・胸膜炎(1/3で心膜炎と併発)
・肋軟骨炎
・GERD
・肺塞栓症
・水疱出現前の帯状疱疹
診断基準を満たせば、次に続発性か否かを判断する
上記以外では血算(分画含む)、CRP、トロポニン、クレアチニンを測定して、胸部X線を撮るべき
若い女性または身体所見上疑わしいときは膠原病の血清検査をする
38℃以上、WBC13,000以上、他に細菌感染の徴候があるときは血培をする
(洞性頻脈と軽度発熱、WBC軽度上昇はよくみられる)
貧血があれば膠原病や悪性腫瘍などによる続発性を疑う
CRPは75%で上昇し、1、2週で元に戻る
心膜炎が疑わしいが基準を満たさないときは、心MRIやCTが使えるかも
胸痛の他の原因を除外したら、診断的治療をしてもよい
特に合併症のない心膜炎の初期治療は、NSAIDsとコルヒチン
コルヒチンを併用すると、再発予防と有症状期間短縮になる
NSAIDsは1-2週続け、CRPをみながら徐々に減らしていくのがいいかもしれない
NSAIDsの最適な種類と投与期間についてのRCTはまだ行われていない
低リスク患者(亜急性の経過で、発熱、免疫抑制、外傷、心筋炎、大量の心嚢水、心タンポナーゼがなく、抗凝固療法を受けていない)は全体の85%を占め、外来でも安全にマネージメントできる。入院になったのは13%で主要な合併症はなかった。
初期治療に反応しない場合、続発性の可能性が高い
副作用が許容できるならNSAIDsを続け、ステロイド投与を検討する
ステロイドを投与すると症状改善が多くなるが再発も多くなる
再発を繰り返す場合も、発作時はNSAIDs+コルヒチン
効果が乏しい場合、ステロイドや免疫調整薬を用いることもある。心膜切開の効果は一定しない
再発を繰り返す心膜炎の機序は不明である。ただ、基礎疾患がなければ重篤な合併症を起こすことは少ない