2014年12月25日木曜日
麻痺性イレウスの原因
友人の研修医の方が
未治療の糖尿病があり麻痺性イレウスで入院となった
患者さんを受け持っているとのことで
麻痺性イレウスについて調べてみました。
なかなか良い記事や論文が見つからず
どうしてだろうと思っていたのですが
どうやら日本語と英語では用語の使い方が違うようですね。
単にileusといえば、機能性イレウス、特に麻痺性イレウスのことを指すらしいです。
機械性イレウスはmechanical obstructionと表現するみたいです。
麻痺性イレウスのことについて調べるときは
ileus, pseudo-obstruction, Ogilvie's syndrome
などの用語で検索するといろいろ出てくることが分かりました。
Ogilvie's syndromeは見慣れない用語ですが
UpToDateのAcute colonic pseudo-obstruction (Ogilvie's syndrome)には
急性の結腸拡張の原因として
・Toxic megacolon(炎症性腸疾患、CD関連)
・Mechanical obstruction
・Acute colonic pseudo-obstrustion
とあります。
Ogilvie's syndromeはacute colonic pseudo-obstructionと同義とのことです。
麻痺性イレウスの原因は多岐にわたります。
DynamedのColonic ileusによると以下の通りです。
【薬剤】
オピオイド、Caブロッカー、抗うつ薬、フェノチアジン(抗精神病薬クロルプロマジンなど)、抗パーキンソン病薬、クロニジン、テオフィリン、バクロフェン、化学(放射線)療法、ステロイド、αグルコシダーゼ阻害薬
【外傷】
骨盤外傷、頬部外傷、脊髄外傷、長管骨骨折
【腫瘍】
血液学的悪性腫瘍(白血病など)、後腹膜腫瘍、骨盤放射線療法、傍腫瘍症候群(胸腺腫、小細胞癌など)、多発性骨髄腫
【膠原病】
強皮症、SLE、血管炎
【手術後】
【感染症】
急性胆嚢炎、髄膜炎、骨盤膿瘍、帯状疱疹、肺炎、CMV感染、敗血症、川崎病、デング熱
【神経疾患】
パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、下部脊髄障害、ギランバレー症候群、髄膜炎、糖尿病性末梢神経障害、神経線維腫症、家族性血管ニューロパチー、脳梗塞
【代謝疾患】
電解質異常(低K、低Ca、低Mg)、腎障害、肝障害、糖尿病、アルコール乱用
【心血管】
AMI、CHF、脳卒中
【それ以外】
人工呼吸、呼吸器疾患、急性膵炎、後腹膜血腫、妊娠、腎移植、中毒、甲状腺機能低下症、周期性四肢麻痺、下垂体機能低下症、鎌状赤血球症、大腸内視鏡後、家族性内臓ミオパチー
あまりに煩雑なので、UpToDateの表も参考にまとめてみました。
outside the box(腹部症状を考えるときは腹部以外の原因から)を意識してみました。
○医原性
・薬剤性
・手術や内視鏡の後、特に脊椎麻酔施行時
○全身疾患
・強いストレス(肺炎、AMI、脳卒中など)
・電解質異常、甲状腺低下
・膠原病
○消化管に向かう神経、血管の障害
・神経障害(脊髄障害、末梢神経障害、自律神経障害、DM含む)
・血行障害
○腹腔内、後腹腔
・腹部の炎症
・腹部内占拠病変
糖尿病と麻痺性イレウスの関連について
麻痺性イレウスを呈する糖尿病患者の割合や
麻痺性イレウスを起こすリスク因子を知りたかったのですが
PubmedとGoogle scholarを調べても論文が見つからず
いまのところ未解決です。
UpToDateのDiabetic autonomic neuropathy of the gastrointestinal tractには
Esophageal involvement(糖尿病患者ではGERDが多い)
Gastroparesis(胃の蠕動運動が低下する)
Diabetic enteropathy(糖尿病患者では下痢が多い)
の項目がありましたが、麻痺性イレウスについての言及はありませんでした。