2021年5月26日水曜日

患者の目を見て話せばいいというわけではない

 Jongerius, C., Twisk, J.W.R., Romijn, J.A. et al. The Influence of Face Gaze by Physicians on Patient Trust: an Observational Study. J GEN INTERN MED (2021). https://doi.org/10.1007/s11606-021-06906-2


背景

医師の患者への視線は、患者の医師に対する信頼感に影響を与える可能性がある。このことは、電子カルテの普及などにより、医師の視線行動が影響を受けるようになってきたことを考えると、特に重要である。また、社会的に不安を感じている患者は、特に医師の視線が信頼感に影響を与える可能性がある。


目的

本研究では、医師の患者の顔への視線が患者の信頼感に影響を与えるかどうかを評価し、この関係が社会的不安を持つ患者でより強いかどうかを評価することを目的とした。さらに、医師の視線と患者の医師の共感度や患者の苦痛の認識との関係を検討した。


デザイン

本研究は、アイトラッキンググラスと質問票を用いた観察研究である。


対象者

内科外来において、初対面の患者100名と研修医16名が参加した。


測定方法

医師は診察時にアイトラッキンググラスを装着し、患者の顔への視線を評価した。患者の転帰を評価するために、アンケート調査を行った。医師の相対的な顔注視時間と信頼感との関係を評価するために、患者の背景特性を補正し、社会不安をモデレーターとして含むマルチレベル分析を行った。さらに、共感と苦痛を評価対象として分析を行った。


結果

性別、年齢、教育水準、介護者の有無、社会的不安を補正すると、患者への視線が多いほど信頼度が低かった(β=-0.17、P=0.048)。社会不安による調整効果はなく、顔の注視と共感や苦痛の認識との間にも関連はなかった。


結論

これらの結果は、医師の視線が多いことが医師と患者の関係に有益であると定義される考え方に疑問を投げかけるものであった。例えば、感情的な問題についての会話の程度によって、今回の結果が説明できるかもしれない。感情的な会話が多いほど、視線が強くなり、患者は不快感を感じる可能性がある。医師の視線と患者の転帰との関係をよりよく理解するために、今後の研究では、診察中の双方向の顔の視線を評価する必要がある。


感想

患者の目を見て話せばよいというわけではないのかもしれない,ということですね.当たり前を疑う研究は面白いです.