2021年5月22日土曜日

推論中に「あれ?」と思って手が止まる.

Groenier M, Christoph N, Smeenk C, Endedijk MD. The process of slowing down in clinical reasoning during ultrasound consultations. Med Educ. 2021 Feb;55(2):242-251. doi: 10.1111/medu.14365. Epub 2020 Sep 14. PMID: 32888219; PMCID: PMC7891410.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/medu.14365


目的

臨床推論では,日常的な問題と非日常的な問題の両方を解決するために,自動的推論と努力型推論を切り替える必要がある。そのためには、問題が非日常的なものであることを認識し、それに応じて自分の推論モードを適応させる、つまり推論プロセスを「スローダウン」させる能力が必要となる。本研究では、総合病院での診察中に超音波検査を行った放射線科医が、自動的推論と努力型推論の間をどのように移行するかを調べた。


研究方法

5人の放射線科医が行った41件の外来診察において、臨床推論のスローダウンの兆候を調べた。診察前後のインタビューと診察中の観察を組み合わせ、積極的に計画された誘因、スローダウンの発現、状況に応じた開始因子を得た。インタビューの記録と観察のフィールドノートをコード化した。スローダウン現象の分類には、たえざる比較法を用いた。


結果

41件の相談のうち13件でスローダウンの瞬間が観察された。スローダウンの表現としては、「シフト」「チェック」「サーチ」「フォーカス」の4つが挙げられた。これらの症状は、主に放射線技師が努力して推論を維持する時間に違いがあり、非常に短い時間(シフトとチェック)から持続的な時間(サーチとフォーカス)まで様々であった。予期せぬ患者の発言や曖昧な超音波画像が、スローダウンのきっかけとなった。


考察

本研究の結果は、臨床家が自動的推論から努力型推論へと移行する過程を理解するのに役立った。また、本研究では、放射線科医の診察において、この移行を開始する2つの原因が明らかになった。それは、患者の発言と、超音波画像から得られる矛盾した、あるいは曖昧な視覚情報である。患者の発言や視覚情報の自然な変化は、放射線科教育の分野では、専門知識の開発を支援するための意味のある変化のインプットとして使用することができる。


感想

とても面白い研究.超音波検査中に,「あれ?」と思って,もう一度詳しく調べたりする様子が描写されています.検査以外でもこのようなスローダウンが起こっていると推測されるので,さらなる研究に期待します.