2019年9月9日月曜日
症例報告:Wallenberg syndromeのpost-stroke pain syndrome
症例報告がAmerican Journal of Medicineに掲載されました.
https://doi.org/10.1016/j.amjmed.2019.06.042
眼周囲の刺すような痛みで来院した患者でした.
神経所見を丁寧にとることで
Wallenberg症候群によるpost-stroke pain syndromeと診断できました.
脳梗塞後の疼痛は視床で有名ですが,次に多いのはWallenberg症候群です.
温痛覚の低下している領域に疼痛が起こります.
発症後しばらくしてから出現することもありますが,
本例では初期症状として疼痛が出ていました.
顔面に出るタイプのpost-stroke painは,発症早期におおいことがわかっています.
眼が充血していないのに眼の周囲が痛い(periorbital pain in a quiet eye)ときには
群発頭痛や三叉神経痛,副鼻腔炎,巨細胞性動脈炎などを疑いますが
神経診察を怠るとこのようなケースを見逃してしまいます.
その意味で教訓的なケースだと思います.
ぜひご一読ください.
2019年9月2日月曜日
症例報告:Disappearing into the Drug Crowd
American Journal of Medicineにケースレポートがアクセプトされました!
https://doi.org/10.1016/j.amjmed.2019.05.052
意識障害の患者で,病歴が聴取できず困ったため,
家にある内服薬を持ってくるようお願いしたところ,
大量の残薬(8施設より47種類:マグミット1580錠,センノシド992錠など)が発覚し
下剤が大量に処方されている→それを飲んでいない→肝性脳症だ!
と診断にいたったというケースです.
ポリファーマシーが健康に影響を与える経路として
prescribing potentially inappropriate medications:不適切な薬剤が入っている
Potential Prescribing Omittions:適切な薬剤が入っていない
という2つが従来より提唱されています.
しかし,このケースは上の2つには当てはまりません.
キードラッグ(この場合は下剤)は処方されている
→他の薬が多すぎる
→多すぎて飲めない
→有害事象発生
本論文で,この経路をDisappearing into the Drug Crowdと名づけました.
衝撃的な残薬の写真を論文に載せることができただけでもうれしいです.
マグミットの数はうちの病院の在庫を超えていました.
(以下,論文より引用)
小病院でも,ありふれたケース(下剤のまずに肝性脳症発症)でも
国際誌にアクセプトされる,ということがわかり,非常に勉強になりました.
よろしければご一読ください.
2019年8月26日月曜日
Hoagland sign
(以下の事例は,経験を元に大幅に脚色したものです)
若い大学生.微熱があり近医を受診したところ,炎症反応上昇に加え,CK高値とミオパチーがあった.
橋本病が発覚し,ホルモン補充療法を受けたが,そのころから全身倦怠感が増悪.
微熱も続いていたが,初診から2週間後に,高熱,全身リンパ節腫大,肝障害,白血球増多が出現したため,紹介受診.
橋本病に何らかの炎症性疾患が合併したのか?
そう思って診察室に入ってきた顔を見ると…一発診断!
(画像はPMID: 24071946より引用)
どうやら,微熱がでた2週間前から,両眼瞼の浮腫も出現していた様子.
白血球分画を調べると異型リンパ球が増加しており,
ウイルス抗体価はEBV初感染パターン.
おそらく,EBV感染→初期のまだ症状が弱いときに医療機関受診
→もともとあった橋本病に気づかれる
→橋本病の治療を始めたころにEBVの症状が強くなる
→診断困難例として紹介
というストーリーだったのでしょう.
眼瞼浮腫は伝染性単核症のまれな初期症状です.(PMID:13184396)
自身の経験では,Hoagland signが診断のきっかけとなったのはこれで3例目.
EBV感染の臨床像の幅広さを,今一度認識しておきたいものです.
2019年8月11日日曜日
大病院総合診療科での外来の役割
家庭医療後期研修内での内科研修のため,半年間大病院の総合診療科で勤務しています.
いままで,小病院,在宅,診療所が自分のフィールドだったので
日々新しい経験をしています.
いままで,比較的セレクションのかかっていない集団に対し
その人の生活,人生をできる限り視野に納めて
非選択的なプライマリケアを行っていましたが,
大病院の総合診療科では
「診断がつかないから診てほしい,後のことはこっちでするから」という
紹介が多く,その点ではライフコースや社会的背景を意識することは少なくなりました.
当然,心理社会的な側面を探求する必要に迫られることはありますが,
それは診断・治療のためという側面が大きく,
家庭医療を実践するため,というわけではないという感覚です.
患者のセレクションもいままでと比べるととてもかかっているため
たとえば心理社会的に複雑なケースを担当することもめっきり減りました.
もちろん,大病院総合診療科でしか学べないことがあり,
そちらに関しては思う存分学べているので,
とても満足はしているのですが.
その中で,自分の得意分野というか,
これなら他人とは違う自分の能力を発揮でき,
患者のために,病院のために力に慣れるぞ,という領域が
少し見えてきました.
それは「外来患者の良性疾患に診断をつける」というもの.
「悪いところはないですね」「検査で異常はないです」
とだけいって患者を帰宅させる
ということは絶対にしない,ということです.
勿論診断がつかないことはありますが,それでも
つぎの道筋をしめした,患者が途方にくれないようにする
というのを意識しています.
そして,大抵の診断困難例では,検査は十分おこなわれており,
もう検査することなんてないよ,という段階でこちらに紹介されることが多いので,
試されるのは問診と身体診察というシンプルなスキルに集約されます.
これが自分としてはとても面白く,
また,本当に問診と身体診察だけで診断がつくことが多いので,
患者も満足するし,自分もうれしくなります.
非当番日に外来からよばれた,原因不明の足首痛を
問診と身体所見,靴の裏の所見から診断し
POCUSで確認,というのが最近のbest practiceでした.
こういう浮かれた時に重大な誤診や失敗をしでかすものなので
今一度気を引き締めて,一人ひとり丁寧にみていきたいです.
2019年7月10日水曜日
Clinical Problem Solvingが出版されました。
Journal of General and Family Medicineから、Clinical Problem SolvingがPublishされました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jgf2.264
腹痛が主訴だけど、どうも経過がおかしく、あれ?というケースです。
繰り返し症状を評価すること、common diseaseの臨床像(illness script)を完全に理解しておくことの重要性がわかります。
ぜひご笑覧ください。
2019年7月1日月曜日
痛みを訴えない痛み
研修医の先生が経験した事例(個人情報保護のため改変しています)
70台男性。半年前から認知機能低下と幻視が出現している。
2週間ほど前から突然、家でいないはずの人影を追い出そうと暴れたり、夜間に玄関先に座って示威行為をしたりなどの行動が出現。同居の妻が手に負えないとのことで、精神科での医療保護入院となった。
研修医が診察すると、パーキンソニズムに加え、左大腿の腫脹に気づいた。ズボンを脱がせて診察すると、L2領域を中心に立派な帯状疱疹があった。
LBDを背景に、帯状疱疹による疼痛が精神症状に寄与していると考え、抗ウイルス薬を投与したところ、興奮は見られなくなった。治療前も治療後も、本人から疼痛の訴えはなかった。
というわけで,高齢者や精神疾患がある患者での,痛みを訴えない痛みに注意です.
私の自験例では,入院高齢患者が誘因なく夜間譫妄→心筋梗塞ということがありました.
2019年6月10日月曜日
医学教育の教科書と格闘する
現在、この本と格闘しています。
なにせ分厚いので、第一章を読んだ上で、興味のある章をつまみよむようにしています。
いまはChapter 18 Portfolios in Personal and Professional Developmentを読んでいます。今まで自分がいかにポートフォリオについて表面的にしか理解できていなかったかがよくわかります。むちゃくちゃ面白いです。
ざっくりまとめると、ポートフォリオの目標は「学習者の成長」「評価」「省察」の3つがあり、それぞれの目標に応じてポートフォリオの形や重要視すべきポイントが異なる、という内容です。現行の医学教育の欠点をポートフォリオがどう補えるのか、という視点が、もう本当に腑に落ちまくっていて、たとえば卒前教育で希望者にポートフォリオを使ったメンタリングをすれば私塾みたいで楽しく学生の成長をブーストできるんじゃないかとか、いろいろ発想が広がります。
おもえば、医学教育についてまじめに勉強したことがなかったのかもしれません。
基盤となる知識があると発想を広げることができるので楽しいですね。
まだ全体の3%くらいしか読めていないので、がんばって攻略していきます。
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