2021年7月26日月曜日

便潜血陽性患者が大腸内視鏡を受ける際の障壁

 Cooper GS, Grimes A, Werner J, Cao S, Fu P, Stange KC. Barriers to Follow-Up Colonoscopy After Positive FIT or Multitarget Stool DNA Testing. J Am Board Fam Med. 2021 Jan-Feb;34(1):61-69. doi: 10.3122/jabfm.2021.01.200345. PMID: 33452083.

https://www.jabfm.org/content/34/1/61.full


背景 

糞便免疫化学検査(FIT)およびマルチターゲット便DNA検査(mt-sDNA)は,推奨される大腸がんスクリーニングの選択肢であるが,陽性結果の原因を特定するためには,大腸内視鏡検査によるフォローアップが必要である。我々は,これらの患者の大腸内視鏡検査の受診率を調べるために,学術的な医療機関でレトロスペクティブな分析を行った。


方法

2016年1月から2018年6月の間にFITまたはmt-sDNAが陽性で、少なくとも1回のプライマリケア受診があった40歳以上の全患者を特定した。陽性検査後6か月以内の大腸内視鏡検査の受診を確認し、大腸内視鏡検査を受けなかった理由を調べるために医療記録を見直した。


結果 

FITが陽性の308名の適格患者とmt-sDNAが陽性の323名の患者を確認した。FIT陽性患者の一部(46.7%)とmt-sDNA陽性患者(71.5%)は6カ月以内に大腸内視鏡検査を受けており、大腸内視鏡検査までの期間はmt-sDNAの方が短かった(ハザード比、1.83、95%CI、1.48-2.25)。これらの差は、患者の特性を調整した多変量モデルでも変わらなかった。FIT 陽性で大腸内視鏡検査を受けなかった患者のうち、1 つ以上のシステム上の障壁、医療機関上の障壁、患者上の障壁が確認されたのは、それぞれ 32.1%、57.6%、36.3%であった。mt-sDNA陽性で大腸内視鏡検査を受けなかった患者では、それぞれ30.4%、43.5%、57.6%であった。


結論

mt-sDNA検査ではFIT検査よりもフォローアップ検査の実施率が高かったが、これは臨床医や患者による事前選択が原因の一つであると考えられる。フォローアップを行わなかった患者では、医療機関やシステムの要因が、患者の要因と同様に頻繁に見られた。これらの結果は、フォローアップを向上させるためのマルチレベルの介入の必要性を示唆している。


感想

便潜血陽性が分かればちゃんと大腸内視鏡につなげようね,医療機関やシステムによる要因が結構あるから見直そうね,という研究結果ですね.本文読みましたが,適切に紹介していなかったり,偽陽性の可能性が高かったり(じゃあなんで検査したんだ,といわれてしまいます)と,医療側が改善すべき点が多々ありますね.