2021年2月2日火曜日

予約非受診のコスト

Margham T, Williams C, Steadman J, Hull S. Reducing missed appointments in general practice: evaluation of a quality improvement programme in East London. Br J Gen Pract. 2020 Dec 28;71(702):e31-e38. doi: 10.3399/bjgp20X713909. PMID: 33257461

https://bjgp.org/content/71/702/e31.short?rss=1

背景

予約に来ないことはプライマリケアではよく見られることであり、臨床受け入れ能力の低下を招く。NHS Englandは、年間720万件のGPの予約非受診があり、そのコストは2億1600万ポンドに上ると推定している。予約非受診の数を減らすことは、効率的なプライマリ・ケア部門にとって重要である。

目的

システム全体の質向上(QI)プログラムがGPの予約非受診率に与える影響を評価し、効果的な診療介入を特定する。

デザインとセッティング

イーストロンドンのクリニカルコミッショニンググループ(CCG)内の診療所を対象とした.この地域は民族的に多様で社会的に困窮している人々がいる。

方法

調査対象となった診療所は、一般的なQIプログラムに参加し、予約システムやDid Not Attend(DNA)率に関するデータの共有を行った。25の診療所のうち14の診療所がDNA削減プロジェクトを実施し、診療所ベースのコーチングによるサポートを受けた。予約データは、診療所の電子カルテから収集された。評価には、分割時系列分析を用いた、実施前後の DNA 率の比較が含まれている。

結果

合計で, 32 の診療所のうち 25 の診療所がプログラムに参加した。ベースラインの平均 DNA 率は 7%(範囲 2~12%)だったが、2 年後,基本的介入を受けた後の DNA 率は 5.2%だった。これは予約非受診が4030件減少したことに等しい。最も効果的な介入は、事前予約可能期間を1日に短縮することであった。この変更を行った診療所では、平均DNA率が7.8%から3.9%に減少した。

結論

事前予約可能期間は、診療所のDNA率を予測する最良の因子である。予約データを共有することで予約欠席が大幅に減少し、患者への行動変容の介入はそれなりの効果があったが、それとは対照的に予約システムに構造的な変化を導入したことでDNA率が効果的に減少した。非受診を減らすために必要なのは患者の変化ではなく予約システムの変化である。

感想

英国のシステム上,予約患者が受診しないとNHSが丸々損するので,その意味では重要な研究.日本みたいに受診したかったらいつでもというわけではなく,予約が必要なので,この研究が成り立つ.この研究結果を日本に外挿するのはちょっと難しいかもしれない.

少し話はそれるが,研究の舞台のイーストロンドンは,"a consistent finding is that DNA rates for nursing or community pharmacist appointments (proactive care) are twice that of GP appointments (reactive care). As GP appointments comprise the larger volume and cost to the service, they are the focus of this study." と本文に書いてある.既存文献でプライマリケア の予約非受診について説明できる特徴として社会的貧困(剥奪)が挙げられている.予約キャンセルや診療中断とSDHの関係は深く探るべき課題だと思う.