2015年2月27日金曜日

精神疾患と貧困の関係



今週のBMJ Openにこのような論文が出ていました。

Trani J-F, Bakhshi P, Kuhlberg J, et al.
Mental illness, poverty and stigma in India: a case–control study. 
BMJ Open 2015;5: e006355. doi:10.1136/ bmjopen-2014-006355


インドで、統合失調症または感情障害の患者さんに対するスティグマが、貧困状態に関係しているかをmatching case-control studyで調べています。

貧困を測る指標が非常に示唆的です。
「貧困」と聞くと、単に金銭的欠乏のみを想起しがちですが、
この研究では様々な次元にわけて貧困の指標を抽出しています。



意訳してみると以下の通り
(赤字は患者群全体とコントロール群全体との間にp<0.05/16の有意差が出た項目)

【個人レベルの基本的能力】
・医療にかかれるか
・教育を受けたか
・仕事をしているか
・飲み水をどこから手に入れているか
・室内の大気は綺麗か
・トイレ設備はどうか
・照明設備はどうか
・収入はどうか

【住環境】
・家に何人住んでいるか
・持ち家か
・建材はkutchaかpuccaか。
(kutchaは泥や藁でできた建材、puccaはブロックやレンガなど)
・日用品をどれだけもっているか
・世帯収入はどうか
・世帯支出はどうか

【個人レベルの精神社会的状況】
・住環境は安全か
・選挙で投票したか


これらの指標のうち6つ以上でカットオフ以下であると測定された方の割合は
精神疾患患者で38.5%、コントロールで22.2%でした。

このような多次元にわたる貧困と関連の強かった因子として
スティグマ、カースト、精神疾患、女性
が挙がりました。


精神疾患の患者は貧困状態に陥りやすい、
特にカーストが低い女性患者で顕著である、という結論です。



金銭的な困窮ももちろん重要な問題ですが
人はパンのみにて生くるに非ず、ということで
貧困に内包する事象を広くとらえ
しっかり介入していく必要があると思います。