2015年3月14日土曜日

女性の健康問題のリスクを病歴から探る



最近は、第2版が出た総合診療医学の赤本・青本を読んだり




東野圭吾を読み漁ったり



新書の海におぼれたり



ハートのかけらを集めたりしております。



BMJ Openより、女性の健康問題についての記事です。

Nagai K, Hayashi K, Yasui T, et al. 
Disease history and risk of comorbidity in women’s life course: a comprehensive analysis of
the Japan Nurses’ Health Study baseline survey. 
BMJ Open 2015;5:e006360. doi:10.1136/bmjopen-2014-006360


日本の女性看護師49927人を対象にした前向きコホート研究です。

まずは女性によくある疾患の罹患年齢のピークについて。

子宮内膜症
36.0
貧血
36.0
偏頭痛
44.8
子宮筋腫
44.8
子宮頸がん
44.8
甲状腺疾患
49.2
乳癌
50.0
胆石
52.2
くも膜下出血
55.1
TIA
55.1
子宮体がん
55.9
糖尿病
57.3
胃癌
57.3
脳梗塞
58.8
卵巣癌
63.9
大腸癌
≥65
狭心症
≥65
骨粗鬆症
≥65
高血圧
≥65
脂質異常症
≥65


45歳以下でピークが来る疾患(下図A)をearly-onset diseasesと呼ぶことにします。
45-54歳、いわゆる更年期でピークになる疾患(下図B)は甲状腺疾患、乳癌、胆石です。
残りは、閉経後に発症のピークが来ます。



























そして、early-onset diseasesである子宮内膜症、貧血、偏頭痛、子宮筋腫について、他疾患との関連をみるとこんな感じ。





















early-onset diseases同士では有意に相関がみられます。
そして、early-onset diseases以外との相関は、以下で確認されました。

子宮内膜症:卵巣癌 (2.16-6.19)、子宮体癌 (1.14-5.04)、脳梗塞 (1.15-3.85)
貧血:胃癌 (1.68-5.08)
偏頭痛:TIA (2.29-4.09)、骨粗鬆症 (1.71-2.62)、脳梗塞 (1.26-3.30)、狭心症 (1.49-2.67)
子宮筋腫:大腸癌 (1.48-3.61)


まとめると以下のようになります。

・子宮内膜症、貧血、偏頭痛、子宮筋腫は女性で45歳以下に発症ピークがあるearly-onset diseasesである。

・early-onset diseasesのどれか一つがあると、他のearly-onset diseasesのリスクが上がる。

・early-onset diseasesに罹患した女性は、その後特定の疾患に罹患するリスクが上がる。


この論文では、early-onset diseasesの病歴をしっかり取ることで、その後に罹患する可能性が高い疾患に備えることができるのでは、と結論されていました。