2026年5月20日水曜日

「路上で死にたくない」:路上生活を送る高齢者に対する路上ケアに関する患者と医療従事者の視点

Mittal A, Lowe E, Feldman C, Coulourides Kogan A. "I Don't Want to Die on the Street": Patient and Practitioner Perspectives on Street-Based Care for Older Adults Experiencing Unsheltered Homelessness. J Gen Intern Med. 2025 Sep;40(13):3003-3012. doi: 10.1007/s11606-025-09591-7. Epub 2025 May 28. PMID: 40434514; PMCID: PMC12508372.

背景

路上生活を送る高齢者は、米国における路上生活者人口の中で最も急速に増加している層である。研究によると、路上生活を送る高齢者は慢性疾患を抱える割合が高く、老化の進行も速いことが示されている。しかし、この層へのケアや支援を提供する上で考慮すべき特有の事項については、ほとんど知られていない。


目的

路上生活を送る人々、そして彼らをケアする路上医療チームのメンバーから、高齢化や重篤な病気への対処に関する経験を探る。


デザイン

質的研究 半構造化された詳細個別インタビュー


研究参加者

ロサンゼルスで路上医療チームを行うメンバーと路上医療を受けている患者


アプローチ

インタビューは、チームが作成した半構造化インタビューガイドに基づいて実施され、音声録音後、逐語的に書き起こされた。フィールドノートは書き起こし記録を補足した。書き起こし記録とフィールドノートは、グラウンデッド・セオリーに基づくテーマ分析手法を用いて、2名の独立した研究者によって分析された。


結果

路上生活を送る患者のケア経験が1~16年と様々で、多職種にわたるバックグラウンドを持つ路上医療チームのメンバー8名にインタビューを行った。チームメンバーの平均年齢は39歳(標準偏差7.4歳)、63%が女性、50%が白人であった。インタビューを受けた患者8名は男性がおおく(63%)、3つ以上の慢性疾患を抱え(100%)、平均年齢は56歳(範囲50~71歳、標準偏差4.7歳)であった。インタビューのテーマ分析により、以下の課題と考慮事項に関する2つの主要なテーマが明らかになった。(1)シェルターのない路上生活状態にある高齢者のケア(サブテーマ:医療、対人関係、環境、システム)、(2)シェルターのない路上生活状態にある高齢者のシェルター、長期ケア、終末期ケア計画(サブテーマ:恒久的シェルター、リハビリテーションおよび施設ケア、終末期ケア計画)。


結論

チームメンバーと患者の視点から得られた知見は、従来の医療の慣行を路上という特殊な状況に適用しようとする際に直面する重大な課題を浮き彫りにした。調査結果は、路上生活を営む高齢者のニーズをより良く満たすための、政策と実践の両面において示唆に富む、実行可能な戦略を示唆している。

感想

結果の記載を診ると、路上の環境の特徴がよくわかります。

2025年9月22日月曜日

Medical Teacherから論文が公開されました。

 
‘It hurts even when it’s not about us.’ Reframing microaggressions in medical education in Japan: Qualitative research

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2025.2561209


幸い、1年5本ペースで原著論文を出すことができています。

Medical Teacherから、日本の医学生が受けるmicroaggressionに関する論文が出版されました。

「microaggressionの内容が示す対象がその場にいない場合であっても、その言動の対象となったり見聞することになったりした医学生は傷つく」というのが一番言いたいことです。

あわせて、microaggressionの背景にある日本の医学界の権力構造についても、十分とは言えませんが言及しています。


Open Accessにしていますので、ぜひご一読ください。


2025年8月12日火曜日

若い女性の尿閉

 


特に基礎疾患のない若い女性の尿閉。診療で悩んだので勉強。

現実的な鑑別診断は以下の通り。

1. 急性尿路感染症

これは導尿して尿検査すればわかる。


2. ヘルペスウイルス感染

主に性感染症としてのHSV2感染。いわゆるElsberg syndrome。

両側腰仙髄領域の神経根炎が主病態。


Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2017 May 11;4(4):e355. によると

サドル型感覚障害 50%で、下肢腱反射亢進は30.%/消失は33.3%。

下肢感覚障害が80%で、下肢筋力低下が50%。


というわけで、sexually activeで神経症状あればMRI撮像。

必要に応じて経験的にアシクロビルで治療。

外陰部病変の有無は気にしない方がよさそう。


3. 妊娠や骨盤内腫瘍(卵巣嚢腫など)

解剖学的にそうですよね。

妊娠では子宮後屈で起こりやすいみたい。

N Am J Med Sci. 2009 Jul;1(2):54-7.

Cureus. 2022 Mar 11;14(3):e23057.


4. 薬剤性尿閉 いわずもがな


5. Fowler症候群

20代から30代の初潮後の若い女性に発症する特発性の尿閉

病態生理は複雑。尿道括約筋の異常弛緩。仙骨神経への治療的介入が試みられている。

Int J Environ Res Public Health. 2021 Mar 23;18(6):3310. 


他に原因が見当たらずに継続する尿閉をみたら、早めに想起して治療できる機関に紹介するのがよさそうですね。


6. 髄膜炎

いわゆるmeningitis-retention syndrome



2025年6月18日水曜日

BJGP論文斜め読み(2025年5-6月のonline first論文)

 

最近ついついさぼりがちな論文レビュー

重要な論文がたくさん出ていました。


https://bjgp.org/content/early/2025/06/04/BJGP.2025.0004

がん患者の公正な緩和ケア登録に関するシステマティックレビュー。Table 2が重要。自分のセッティングでは、在宅患者や通院患者であれば自分で緩和ケアを行うことが多く、時にホスピスに紹介することになるのですが、困難を自覚した時に多職種での介入にスイッチを切るようにしなくてはと思いました。


https://bjgp.org/content/early/2025/05/28/BJGP.2024.0798

時間外の医療サービス(救急)を受ける要因は、患者側のものが多い(年齢、マルモ、ポリファーマシー、在宅ケアサービスのレベル)。時間内にたくさん診療を提供していれば時間外の受診が減るというわけではない。


https://bjgp.org/content/early/2025/05/28/BJGP.2024.0818

複雑なメンタルヘルス上の問題(CMHD)がある患者のGP受診に関する混合研究。患者のニーズが認識されておらず、不可視化されていることを、説得力を持って示しています。精読する必要があります。


https://bjgp.org/content/early/2025/06/02/BJGP.2024.0579

継続性に関する論文は最近多いですね。GPの継続性の向上が二次医療(病院におけるケア)の断片化を軽減するわけではない、という結果。ケアの統合を図るには別のアプローチが必要そうです。


https://bjgp.org/content/early/2025/05/16/BJGP.2024.0429

プライマリケアセッティングで、抗うつ薬(特にSSRI)が開始後一か月での起立性低血圧と関連するという結果。新規に処方する際に気を付けるべき副作用です。


https://bjgp.org/content/early/2025/05/12/BJGP.2024.0568

プライマリケアにおいて、個人間の継続性が高い場合に、死亡率、入院率、救急外来受診率がわずかだが低下するというシステマティックレビュー


https://bjgp.org/content/early/2025/05/05/BJGP.2024.0538

呼吸困難感を訴える患者を電話で評価する際に、年齢と性別、通話特性(夜間の通話または患者の代わりに誰かが通話)、症状(咳、発熱、完全な文章を話せない、喘鳴)の3つを評価することで有効なトリアージができるという結果。「患者の代わりに誰かが通話する」というのはなるほどなと思いました。



2025年6月11日水曜日

AIMCCケースレポート流し読み

 

AIMCCの5月、6月分を流し読みします。



https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.1256

免疫チェックポイント阻害薬によるsicca syndrome。こういうことがあるというのを知っておくのが大事かと。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.0695

A型解離が造影CTで見えなかったという衝撃の報告。大動脈基部が「チューリップの球根」様になっているのは注意ということでしょうか。心電図同期CTで解離腔が明確にわかったようです。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.1189

肺がんの皮膚転移。過去に一度だけ見たことがあります。路上に往診に行っていた患者さんでした。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.1210

甲状腺機能低下症+鉄欠乏性貧血による心嚢液貯留。ド派手です。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.0960

ニューモシスティス肺炎で高Ca血症が起こることがあるのですね。初めて知りました。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.0939

プレドニン15mg/dで起きたニューモシスティス肺炎。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.0940

今回最も勉強になったケース。肝硬変患者でミエロパチーが起こる。まれな神経合併症で、進行性痙性麻痺を呈する。所見を収めた映像がとても勉強になります。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.1243

つい先日、まさにそっくりのケースに出会いました!レジオネラ症では心臓のブロックが起こりうる、ということを知っておきましょう。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.1294

CMV感染による脾梗塞。CMVは多様なプレゼンテーションを示しますね。


https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/aimcc.2024.1335

持続的な動悸と一時的な左手の筋力低下で入院して、TIAかと思って血管病変の検索目的にCTを撮ったら偶然大動脈解離が見つかったというケース。診断遅延がおこっています。自分ならどの時点で解離を想起できただろうか…。




2025年5月15日木曜日

Q熱とオウム病

 

まだであったことがないが、診療圏でそこそこ発生報告があるので、目の前に来たら疑えるようにしておきたいです。


Q熱

・哺乳類、とくに胎盤・羊水との接触。潜伏期間は3週間。

・多くはインフルエンザ様でself-limiting

・発熱、頭痛、筋痛、咳嗽、関節痛

・まれに市販、髄膜炎、溶血性貧血、心内膜炎、膵炎、精巣副睾丸炎

・CTでは多発するconsolidationを呈することがある

・画像検索で数例CT見ましたが、敗血症性塞栓におもえますね。これも引っ掛けるポイントかと。


「哺乳類の出産に立ち会った3週間後のインフルエンザ様症状、多様な臓器を巻き込むことがあり、CTは多発consolidationを呈することがある」と覚えておきます。



オウム病

・乾燥した糞や羽埃に付着。ゆえに鳥小屋掃除が曝露危険高い 潜伏期間は5-15日

・乾性咳嗽、発熱、頭痛が比較的緩徐に出現

・頭痛は強く、ときに羞明を伴う

・咽頭発赤あり

・脾腫が発症1週間後にでることもある

・Horder's spotという丘疹がまれにみられる。

https://x.com/IUIDfellowship/status/1428154844230135814


「頭痛が強い気管支炎で、鳥小屋掃除(その他鳥との接触、餌やりやペットショップなど)の病歴を聞きに行く」という姿勢が大事なのかもしれません。丘疹は稀なのであまり気にしない方がいいかも。

髄膜炎っぽい呼吸器感染症はレジオネラを想起していましたが、これからはオウム病も想起するようにしたいです。


参考:シュロスバーグの臨床感染症学邦訳第2版




2025年5月3日土曜日

(雑記)一つの研究が一区切りつくとまた次の研究が始まる



とある質的研究(すでにデータは集めていた)の分析と論文執筆が一区切りつきました。

振り返ってみると、データ分析+論文執筆でおよそ一か月半かかっていました。

その前のデータ収集+文字起こしや、先行研究調べなどあるので、1つの論文に3か月くらいかかっているのでしょう。現状年間4本出版のペースですので、計算が合います。


臨床、家庭、その他のことがあり、研究は夜の時間にすすめているので、まあこれくらい時間かかるのは仕方ないことなのかなとは思っています。質的研究はデータの読み込みやコーディングをじっくりする必要があるので、隙間時間に少しずつ進められるものでもないですし。

AI全盛期ですが、自分のやり方は地道な方法です。特別なソフトは使わず、wordとexcelでひたすら読み込み&コーディングです。メモをかきながら進めていきます。こればっかりは、自分の言葉で考えないと意味がないので。


そして、論文執筆がある程度完成したので、そのまま別の質的研究のデータ分析に移っています。これもすでにデータを収集しているものです、完成するまでおよそ一か月半かなとおもいつつ、今回はデータが多いのでもっとかかるかもです。


現状、データはあるが分析できていない質的研究が3本、混合研究が1本、量的研究が1本あります。まずはこれを論文化するのが次の仕事。すべて形にするにはやはり1年以上はかかりそうです。この中で、新たな分析手法を用いるものが2本ありますので、さらに時間はかかりますね。

これからデータを集める研究が1本、これはすでに倫理審査が通っています。

やりたい研究は頭の中にたくさんあるので、以上の研究を進めつつ、頭の中にある研究を実現する機会があれば割り込んであらたな研究を開始する、というのがほぼ確立されたスタイルになっています。


そういえば査読中の原著論文が2本、レビュー論文が1本ありました。

査読の旅からなかなか帰ってこずにもやもやします。

アクセプトされたのになかなか公開されない論文も2本あります。


こうやって書きだすと、自分が今どこにいるのかわかっていいですね。

頑張るぞー。