2021年8月3日火曜日

パートナーからの暴力をスクリーニングすることについて

 Perone HR, Dietz NA, Belkowitz J, Bland S. Intimate partner violence: analysis of current screening practices in the primary care setting. Fam Pract. 2021 Jun 29:cmab069. doi: 10.1093/fampra/cmab069. Epub ahead of print. PMID: 34184740.

https://academic.oup.com/fampra/advance-article-abstract/doi/10.1093/fampra/cmab069/6311092?redirectedFrom=fulltext


背景

親密なパートナーからの暴力(Intimate Partner Violence: IPV)は、米国ではほとんど発見されていないが、36~50%の女性が生涯のうちに経験すると言われており、身体的・心理的に大きな影響を及ぼす。現在、米国予防サービス専門委員会(USPSTF)はユニバーサルスクリーニングの実施を推奨している一方で,世界保健機関(WHO)は反対しており,推奨が相反している。また、女性が診療所でIPVについて質問されることはほとんどないという調査結果もあり、現在のスクリーニング方法についてさらなる情報が必要とされている。


目的

プライマリケアにおけるIPVスクリーニングの現状と、スクリーニングの完了に影響を及ぼす可能性のある要因を明らかにする。


方法

フロリダ州南東部にある4つの大学付属プライマリ・ケア・クリニックで、年次検診を受けた患者をレトロスペクティブに調査した(n = 400)。患者の人口統計、スクリーナーの人口統計、スクリーニングの完了、およびスクリーニングの結果を医療記録から収集した。結果は、有病率やスクリーニングの推奨度が同程度であることから、うつ病と不安神経症のスクリーニングと比較した。人口統計学的特徴によるスクリーニング率の比較には、ピアソン・カイ二乗およびフィッシャー正確確率検定を用いた。


結果

IPVスクリーニングは、不安神経症(37.3%)およびうつ病(71.3%)のスクリーニングと比較して、はるかに低い頻度(8.5%)で実施されていた。記録されたIPVスクリーニングのうち、患者がスクリーニングを拒否したケースは64.7%であった。スクリーニング率は、患者の民族性によってわずかに影響を受けることがわかった(P = 0.052)。


結論

スクリーニング率の低さとスクリーニングの成功率の低さという結果は、普遍的なIPVスクリーニングを提唱することの難しさを懸念させるものであった。したがって、普遍的な調査を推奨する前に、スクリーニングの完了を妨げる隠れた障壁を特定するための追加研究が必要である。


感想

スクリーニングを推奨する前に一歩立ち止まって,そのスクリーニングがどのような影響を及ぼすのかを多面的に検討しましょう,ということかなと思いました.