2021年8月2日月曜日

健康保険と糖尿病治療アドヒアランスとの関係

Rastas, C., Bunker, D., Gampa, V. et al. Association Between High Deductible Health Plans and Cost-Related Non-adherence to Medications Among Americans with Diabetes: an Observational Study. J GEN INTERN MED (2021). https://doi.org/10.1007/s11606-021-06937-9


背景

糖尿病患者にとって、処方された薬を服用することは不可欠である。しかし、HDHP(注:免責額が高く月額保険料の低い保険プラン.慢性疾患の患者では必要な検査や治療を先送りするなどの問題が指摘されている)普及やインスリンなどの糖尿病治療薬の価格上昇は、アドヒアランスを阻害する可能性がある。


目的

米国の非高齢糖尿病患者の費用関連服薬アドヒアランス低下(CRN)に及ぼすHDHPの影響を評価すること。


調査方法

繰り返す横断調査


設定

全米健康面接調査,2011~2018年。


参加者

薬を処方され,HDHPまたは以前からの商業医療プラン(TCP)に登録している18~64歳の民間保険加入者のうち,糖尿病患者7469人。


主な測定項目

CRNの自己申告による測定値を、HDHPとTCPの加入者全体およびインスリンを使用しているサブセットの間で比較した。解析は、多変量線形回帰モデルを用いて、人口統計学的および臨床的特性を調整した。


主な結果

HDHP加入者はTCP加入者よりも、処方箋の引き換えをしない(13.4%対9.9%、調整後ポイント差(AD)3.4[95%CI 1.5~5.4])、服薬を省略する(11.4%対8.5%、AD 2.8[CI 1.0~4.7])、服薬をスキップする(11.4%対8.5%、AD 2.8[CI 1.0~4.7])、服薬量を減らす(11.1%対8.8%、AD 2.3 [CI 0.5~4.0])、節約のために処方箋の引き換えを遅らせる(14.4%対10.8%、AD 3.0 [CI 1.1~4.9])、何らかの形でCRNとなる(20.4%対15.5%、AD 4.4 [CI 2.2~6.7])可能性が高かった。インスリンを服用している人では、HDHP加入者の方が何らかのCRNを持っている可能性が高かった(25.1%対18.9%、AD5.9[CI1.1~10.8])。


結論

HDHPは、糖尿病患者、特にインスリンを処方されている人のCRNの増加と関連している。糖尿病患者の場合,HDHP以外に加入すると,処方された薬に対するCRNが減少する可能性がある。


感想

米国特有の問題にみえますが,日本でも経済的事由による糖尿病患者の受診抑制,治療抑制,検査抑制はよく出会う問題だと認識しています.日本でも同様の研究が必要です(すでに行われている研究もありますね).