DVTに出会った時の戦略をまとめました。
World Journal of Critical Care Medicneのレビューを参考にしました。
World J Crit Care Med 4(1): 29-39 2015
まずはDVTの診断について。
DVTの診断・除外にはRotterdam approachが用いられます。
少し解説。
D-dimerは複数の測定方法がある。
下肢静脈エコー陰性かつでD-dimer(ELISA VIDAS)<1000ug/mlだとNPV>99%で除外可能。
下肢静脈エコー陰性なのにD-dimer陽性なら、一週間後に再エコーすると患者の3%にDVTありとなる。
つまり、D-dimer陰性かつエコー陰性なら除外してよい。
D-dimer陽性でエコー陰性の場合、D-dimer比較的低値で臨床症状も強くなければ除外する。
D-dimer高値、臨床症状中等度以上なら、再度エコー検査、そこでも陰性なら除外する。
次は、DVTの再発リスクと血栓後症候群(PTS)について
PTSはDVT治療後に出ることのある下腿の静脈うっ血による症状
(写真はこちらから引用)
PTSの評価項目はたくさんあるが、Prandoniスコアを示します。
どんな人にDVT再発やPTSが起こりやすいのか。
遠位DVTの再開通は、治療効果は迅速で、治療期間も1-3カ月でよく、PTSの発症頻度も低い。
近位DVTの再開通は、治療効果が遅く、治療開始後3,6,9カ月時点でその都度評価する。DVT再発やPTS発症も多い。
膝窩静脈のDVTがPTS発症多い。
3カ月以内に完全開通し、逆流が見られなければ、PTSのリスクは低く、弾性ストッキングは不要。
6-12カ月で完全/部分開通する場合は、逆流が多く、DVT再発やPTSの頻度が多い。
3カ月の治療で、30%は血栓が静脈断面の40%以上を占めている(residual vein thrombosis: RVT)。その場合、DVT再発率は2年間で27%。
というわけで、DVTを層別化して、それぞれ治療戦略を構築することが必要です。
DVTと診断したら、抗凝固療法と弾性ストッキング開始
1カ月後、3カ月後にPrandoni scoreでPTS評価
Group 1: 3カ月以内に完全開通して、PTSの徴候がなければ、治療終了でよい
Group 2: 3-6カ月で部分開通の場合、治療を続け、1年後再評価
Group 3: PTSが発症した場合、2年間は治療継続
Group 4: 開通しない場合も2年間治療継続
抗凝固薬中止の判断はエコーとD-dimerで。
正常なら1か月間休薬する。D-dimer陰性であることを3カ月おき計1年間確かめる。
D-dimer陽性ならPTS評価を繰り返す。DVT再発したら再度抗凝固療法