2015年最後から2番目のNEJM Case Recordが
私の病院・活動のフィールドと非常に親和性が高いケースであったので
これはしっかり読み込まなくてはおもいます。
part2です。Table 2は本文をご覧ください。
A 40-Year-Old Homeless Woman with Headache, Hypertension, and Psychosis
鑑別診断
Dr. Oliver Freudenreich: 議論の参加者は全員このケースの診断を知っている。路上生活中のこの40歳女性は、未治療の精神病があり、重度の高血圧で救急部を受診した。この患者は精神疾患と内科疾患の双方を有しており、ワークアップと治療に優先順位をつけて最も可能性のある診断のリストを作成することが重要である。系統的かつ時系列での病歴が分からないので、ある程度診断が確定できなくても許容しなくてはいけない。
精神病
この患者の精神病の原因となる鑑別診断を構築する際に、精神病が一次性か二次性かで区別すると良い(Table 2)。一次性精神病は精神疾患によるものである一方、二次性精神病は内科・外科疾患や物質使用によるものである。
二次性精神病
二次性精神病で考慮すべき4つのメインカテゴリーは、譫妄、認知症、内科疾患(神経疾患を含む)、物質使用(アルコール、違法薬物、薬物によるトキシドローム)である。初期目標は、診断を早期閉鎖せずに患者の精神状態の原因となるものを同定することである。このタスクを管理可能なものにするために、臨床状況に応じて検査を提出し、致死的な精神病の原因(譫妄など)を除外し、治療可能な原因(甲状腺機能亢進症、ビタミンB12欠乏症など)と同定することに焦点を絞るべきである。検査は賢明に選択することが重要である。あまりに多い検査や誤った検査を提出すると、偽陽性、偽陰性が多くなるからである。救急の状況では検査をたくさん出す必要はないが、特に外来でのフォローアップが難しい場合では、急性期治療を行う際はあらゆる検査を考慮すべきである。
全ての患者で以下の診察・検査を行う:バイタルサインの測定、身体診察、血糖値・血算・血球分画・電解質(カルシウム含む)、肝機能、腎機能を含む血液検査。腰椎穿刺、頭部画像検査、脳波検査はそれぞれ、脳炎、脳の構造的異常、てんかんを臨床的に疑う際に施行すべきである。治療的な状況はスクリーニングを考慮すべきであり、それには甲状腺疾患(TSH検査)、免疫・炎症疾患(赤沈、抗核抗体)、ビタミンB12欠乏症(ビタミンB12と葉酸)、感染症(HIV、神経梅毒など)などが含まれる。
譫妄は精神病の約50%に伴っているが、このケースでは精神状況が急性でもなく変動も見られないため、譫妄の可能性は低い。患者の発症状況と病歴は神経変性疾患に合致しないが、患者にアパシーがあると考えると、以前の外傷性脳損傷は神経変性疾患と関連がある。重度の高血圧は精神病に伴う精神状況の変化の原因となりうるが、私は錯乱を伴う脳炎と他の末梢臓器障害があるのではと考える。高血圧に関連する別の懸念は脳梗塞であり、これも精神病の原因となりうるが、このケースでは頭部CTが正常で神経診察で巣症状がないため、この診断は可能性が低い。尿薬物スクリーニングは陰性だが、この検査が精神作用のある薬物乱用をすべては検出できない。ビタミンB12欠乏症は除外されたが、TSHの測定は依然として必要であり、神経梅毒とHIVの検査は強く考慮されるべきである。これらの状況は全て治療可能であり、精神病と関連しているからである。しかし、これらの検査結果が異常でなかったら、二次性精神病の可能性は低くなる。
一次性精神病
精神疾患による精神病の診断を考える際は、統合失調症スペクトラム障害と精神病性気分障害に大別する。臨床的に重要な気分障害がないため、精神病性気分障害は否定的である。一方、患者は統合失調症に特徴的な症状を有している。患者の陽性症状としては妄想、幻聴、滅裂思考がある。患者は感覚鈍麻があり、これはコアとなる陰性症状である。他の陰性症状には、社会性の欠如と意欲低下が挙げられる。病勢が慢性であることも統合失調症に典型的であり、患者は社会的機能が乏しいように思われる。
患者は自分の病状についての認識に欠けているが、それは統合失調症で良くみられることである、より高次の認知機能の問題を示唆することが多い。実際、統合失調症患者の85%で機能に関連する認知機能障害がみられており、特に運動記憶、言語記憶、実行機能に影響が見られる。このような状態は、統合失調症に関連する認知機能障害として知られているが、永続し、かつ抗精神病薬による治療に反応しない。
統合失調症は除外診断だが、それにもかかわらず診断は観察可能な臨床的特徴と病歴に基づいている。この患者の受診時に手に入った情報に基づいて考えれば、可能性のある診断は統合失調症であり、おそらくそれが認知機能障害に関連した可能性が最も高く、もしかしたら以前の外傷性脳損傷により増悪したのかもしれない。もし患者の病勢がもっとエピソード的であり、気分障害の期間だけに精神病が見られたりした場合や、内科的疾患が症状をよりしっかり説明すると判明した場合は、付帯する情報とさらなる検査により、統合失調症の診断を見直すことになるかも知れない。
患者は抗精神病薬と降圧薬の治療を受けるべきである。患者の木認知機能障害をより理解するためには、神経認知試験にくわえ、脳梗塞の既往や外傷性脳損傷による脳軟化症の所見を見つけるために頭部MRIを検査することを推奨する。統合失調症による認知機能低下が疑われるため、複雑な口頭指示は避けるべきである。この患者は理想的には、患者が信頼する人1人が継続的に外来でフォローして、これらの試験を受け治療反応をモニターするのを手助けすべきである。
Dr. Oliver Freudenreichの診断
統合失調症、統合失調症による認知機能低下の疑い、高血圧、路上生活状態